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美女アスリートにサッカー“取引”招集…“準A代表”でアジア大会挑む韓国の皮算用

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ジャカルタ・アジア大会にオーバーエイジ枠で出場するソン・フンミン(写真:ロイター/アフロ)

8月18日のジャカルタ・アジア大会開幕に先立ち、10日から始まった男子サッカー競技。本日15日には、韓国が初戦のバーレーン戦に臨む。

今回のアジア大会で韓国は39の種目に807人の選手が出場予定だ。メディアでは連日、メダル候補の選手たちが取り上げられ、スポーツクライミング女子代表で“岩壁の上のバレリーナ”とされるキム・ジャインや“女子バレーの双子姉妹イ・ジェヨンとイ・ダヨンなど、美女アスリートも話題になっている。

(参考記事:【画像】アイドル並みの人気と美貌!? アジア大会を盛り上げる“韓国7大美女アスリート”

そうした顔ぶれで挑む今回のアジア大会で、大韓体育会は65個以上の金メダルを獲得して総合2位になることを目標としているが、特に男子サッカー競技に対する注目度は高く、今日の初戦・バーレーン戦にも大きな関心が寄せられている。

ファン・ウィジョの招集にガンバは難色

それだけ期待も大きいわけだが、それはチームの準備状況とも関係していると言えるだろう。

そもそも韓国代表は、アジア大会史上初となる2連覇を目標に掲げ、早くから準備を進めてきた。

今年2月に韓国U-23代表の指揮官に就任したキム・ハクボム監督は、3月と5月に2度の国内合宿を実施。6月には本番へのリハーサルとしてインドネシアに飛び、インドネシアU-23代表と強化試合も行っている。

また、4月にはキム・ハクボム監督自らが欧州視察を行うなど、新戦力のチェックにも力を注いできた。

そうして7月に発表された代表メンバーも、ロシア・ワールドカップにも出場したファン・ヒチャン(ザルツブルク)、イ・スンウ(ヴェローナ)ら欧州組を招集するなど、可能な限りU-23世代のベストメンバーを揃えようと努めてきた。

オーバーエイジ枠もフル活用し、ソン・フンミン(トッテナム)、チョ・ヒョヌ(大邱FC)、ファン・ウィジョ(ガンバ大阪)を招集している。(大会規定は23歳以下+オーバーエイジ枠3人)。

昨日のネパール戦で初陣を飾った森保一監督率いる日本をはじめ、2年後の東京五輪を見据えてU-21世代で臨むチームが少なくないなか、韓国はアジア大会に持てる力のすべてを投じてきたわけだ。

(参考記事:「世代交代は進んでいないが…」アジア大会に臨む日本を韓国メディアが警戒!!)

ただ、“準A代表”ともいわれるメンバーを揃える過程には紆余曲折もあった。

というのも、アジア大会はFIFAの主管大会ではなく、国際Aマッチにもカウントされないため、クラブには招集に応じる義務はない。

さらに、8月10日に開幕したプレミアリーグをはじめ、欧州リーグの開幕のタイミングとも重なっており、ファン・ウィジョがプレーするJリーグもアジア大会期間中にリーグ戦が開催されているため、海外組の招集にあたってはクラブとの交渉が難航したという。

例えば、ファン・ウィジョだ。

ファン・ウィジョは、アジア大会への選出発表当時、Kリーグの城南FC時代に師弟関係にあったキム・ハクボム監督による“コネ選出”疑惑も浮上して波紋を呼んだが、ガンバ大阪にとっては複雑だったに違いない。

今季Jリーグで14得点(リーグ戦9得点)を挙げ、チーム最多得点者となっているファン・ウィジョが1カ月近くもチームを離れることに難色を示すのは当然だろう。

結局はキム・ハクボム監督が直接ガンバの関係者を数回にわたって説得し、招集が実現したという。

(参考記事:G大阪は「絶対ダメ」。それでもファン・ウィジョのアジア大会出場が許可された理由とは?

またソン・フンミンの場合は、韓国サッカー協会(KFA)がトッテナムと交渉を行っている。

結果的には、ソン・フンミンが今年11月のAマッチと来年1月のアジアカップの序盤1~2戦に出場しないことを条件に、トッテナム側も承認。ソン・フンミンは8月11日のプレミアリーグ開幕戦のニューカッスル戦に途中出場したあと、13日にインドネアに入国してようくチームに合流した。

期待度は高くない?日本を警戒するメディアも

韓国がこれほどアジア大会に本気になっていることには、以前にも紹介した通り、アジア大会に兵役問題の解決がかかっていることも関係している。

韓国の成人男子には約2年の兵役が義務付けられているが、国際大会で一定の成果を挙げたスポーツ選手は兵役が免除される。アジア大会での金メダル獲得が、その兵役免除の条件の一つなのだ。

(参考記事:【深層ルポ】知られざる韓国スポーツと兵役 韓国アスリートたちが五輪やアジア大会に執念を燃やすワケ

特に、韓国の現行の兵役法では「満28歳までに兵役に就かねばならない」となっており、それに従えば1991年9月生まれのチョ・ヒョヌ、1992年7月生まれのソン・フンミン、1992年8月生まれのファン・ウィジョらオーバーエイジ枠の選手たちにはあとがない。

ソン・フンミンやファン・ウィジョの出場を、キム・ハクボム監督や協会が所属クラブに強く要請した理由もここにあるのだ。

兵役免除がかかったアジア大会に向け、万全の準備を整えてきた韓国。

それだけに韓国ファンも大きな関心を寄せているが、メディアの論調も楽観的ではない。

E組に属した韓国がグループリーグで対戦するのは、バーレーン、マレーシア、キルギスタン。いずれも格下であり、グループリーグは難なく突破するとの見方が強いが、決勝トーナメントで対戦する可能性のある日本やイラン、ベトナムなどを警戒し分析するメディアも少なくないのだ。

いずれにしても、兵役免除もかかったアジア大会に韓国が全力で準備を整えてきたことは間違いない。本日行われるバーレーンとの初戦で幸先の良いスタートを切り、目標とする金メダル獲得に向け一歩前進することができるか注目だ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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