Yahoo!ニュース

ロシアW杯を彩った「イレズミ」イレブン…韓国選手の“タトゥー自慢”は日韓戦から始まった?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
チャン・ヒョンスやエジルの腕にもタトゥーが刻まれていた(写真:ロイター/アフロ)

いよいよ決勝戦の対戦カードが決まったロシア・ワールドカップ。フランスの20年ぶりの優勝か、それともクロアチアが初の世界一に輝くのかなど興味が尽きないが、今回のワールドカップ期間中、個人的に気になったことがある。

各国代表選手たちのタトゥーだ。

韓国でもタトゥーを刻んでいる選手は多い

ブラジル代表のネイマールやアルゼンチン代表のメッシなど世界的なスター選手がタトゥーを入れていることは有名な話だが、ベルギー代表のエデン・アザールが左わき腹に日本語のタトゥーを入れていることが報じられるなど、選手たちのタトゥーも話題になった。アルゼンチン代表を指揮したホルヘ・サンパオリ監督の両腕タトゥーも話題になった。

ロシアに臨んだ韓国代表の中にも、体にタトゥーを刻んでいる選手は多い。

日本では何かとタブー視されがちなタトゥーだが、韓国サッカー界では以前から堂々とタトゥーをアピールする選手が多かった。韓国代表コーチを務めるチャ・ドゥリは、サンパオリ監督顔負けの両腕タトゥーを刻んでいるし、女子選手がタトゥーを入れることも珍しくない。

(参考記事:一挙公開!! 韓国サッカー界の“文身=タトゥー”ベストイレブンはこの11人!!

そんな免疫があることもあって、ロシア・ワールドカップを戦った韓国代表選手たちのタトゥーも話題になった。

例えば、奇抜な髪形も話題を呼んだGKのチョ・ヒョヌは、「美女パートナー」といわれる妻の肖像を右腕に彫っていることが韓国メディアで取り上げられていた。

(参考記事:【画像】ソン・フンミンの「恋人」は? 韓国代表の「美女パートナー」たちがかわいすぎる!!

また、ドイツ戦で先制ゴールを決めたキム・ヨングォンは、右腕のタトゥーにキスをするゴールパフォーマンスを披露したことが話題を呼んだ。

キム・ヨングォンの右腕には、フランス語で「心にいつも刻む」と書かれ、その下に妻と娘の名前が書かれているという。

ただ、そのタトゥーが非難の的になった選手もいた。FC東京でプレーするチャン・ヒョンスだ。

チャン・ヒョンスが両腕にタトゥーを刻んでいることは、サッカーファンの間でもよく知られている事実だが、大会期間中に一部のファンからは「刺青を消せ。サッカーに集中しろ」という批判の声も上がった。

まったくもってナンセンスな批判としか言いようがないが、こうした指摘が出るのは韓国におけるタトゥーの位置づけとも無関係ではないだろう。

そもそも、儒教の名残が今もある韓国では、長らく刺青やタトゥーはタブー視されてきた。「親からもらった体に傷をつけてはならない」という意識があるためで、今もテレビでは芸能人に対する“タトゥー規制”が行われている。

ただ、最近は自己表現のひとつで、ひとつの個性として認めるべきという意見もあり、特にスポーツの世界ではタトゥーをアピールする選手は多い。

チアリーダーも刺青をアピール

元メジャーリーガーで現在は韓国プロ野球(KBO)のネクセンでプレーするパク・ビョンホや、先月KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)ツアーの54ホール最小ストローク記録を塗り替えた女子プロゴルファーのチョ・ジョンミンをはじめ、タトゥーを入れているアスリートは枚挙にいとまがないほどだ。

それどころかプロ野球やプロバスケの会場を彩るチアリーダーなども、タトゥーをアピールして話題を呼んでいたほどだから、韓国スポーツ界でタトゥーが広く受け入れられていることが伝わるだろう。

(参考記事:スクープ撮!! ネットを騒然とさせた人気チアリーダーの腰に咲く“情熱の赤い薔薇”

以前、本欄で紹介した“美しすぎるヨガ・インストラクター”のイ・ユジュさんも、背中にタトゥーを刻んでおり、ネットでは「セクシーすぎるタトゥー」「タトゥーすら格好いい」といった声が上がるほどなのだ。

イメージを変えたきっかけは日韓戦?

興味深いのは、現在のように韓国でスポーツ選手のタトゥーが受け入れられるようになったきっかけが、サッカーの日韓戦だったといわれていることだ。

韓国メディア『京郷新聞』は、2003年5月31日に国立競技場で行われた日本対韓国の親善試合で、一人の韓国選手が行ったゴールパフォーマンスが「強烈な一撃になった」と伝えている。

その選手とは、現在は解説者・タレントとして活動しているアン・ジョンファンだ。

先制ゴールを決めたアン・ジョンファンがユニホームを脱ぎ、妻に向けた「hyewon love forever」というタトゥーを見せたパフォーマンスが大きな反響を呼び、多くの選手たちにタトゥーが受け入れられるようになっていったというのだ。

筆者もこの試合を現地で取材していたが、確かにタトゥーをアピールするアン・ジョンファンのゴールパフォーマンスは当時としては型破りで、韓国サポーターも驚きとともに大きな歓声を送っていたことを覚えている。

少なからず、アン・ジョンファンのこのゴールパフォーマンスが、韓国のスポーツファンたちに大きなインパクトを与えたことは間違いないだろう。

いずれにしても現在、韓国スポーツ界でアスリートのタトゥーが何かと話題になっていることは事実。

ロシア・ワールドカップでも韓国選手のタトゥーが関心を集めたことを見る限り、今後もタトゥーによって自己アピールをする選手は増えていきそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事