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パク・チソンに“韓国の松木安太郎”も火花を散らしている「ワールドカップ解説戦争」とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ホテルにて視聴したMatch TVより(写真:著者撮影)

コロンビアを相手に大金星を挙げた西野ジャパンの姿は、現地のテレビでもよく目にする。

ロシアのテレビには複数のチャンネルがあり、ワールドカップを扱うことが多い『Match TV』というチャンネルで大会の情報をチェックしているが、日本代表の試合やインタビューの映像もたびたび放映されているのだ。

残念ながら、ロシア語がわからないため、具体的にどのような内容や論評がなされているかわからないが、いずれにしても開催国でも西野ジャパンの快挙がニュースになっていることがわかるだろう。

そんな現地のテレビを見ながらふと思ったのは、韓国のワールドカップ中継のことだ。

というのも、韓国ではワールドカップ期間中、各試合をKBS、SBS、MBCの地上波3局が同時に中継するのが恒例となっているのだ。

KBSは日本でいうところのNHKに近い局で、SBSとMBCは日テレやテレ朝などの民放局に近いイメージだと考えていただければと思う。韓国ではこの3社が同じ試合を同じタイミングで中継するのだ。

当然ながら、3社が同じ試合を同時に中継するだけに視聴率争いも激しく、各局は番組の構成にも力を入れている。

特に、中継の解説者は視聴率争いの決め手となる“目玉”となる。

決して多くはない普段のサッカー番組では、華やかさ重視なのか“サッカー女神”とされるチョン・スンジュをはじめとした女子アナなどが“目玉”となることが多いが、ワールドカップ中継だけは元韓国代表選手などの解説者に注目が集まるのだ。

(参考記事:【画像あり】人気女子アナがビキニで魅せた!! チョン・スンジュの「幻想的ボディ」

今回のロシア大会でも、中継を行う3局は、2002年の日韓ワールドカップメンバーを解説者に抜擢している。

KBSはイ・ヨンピョ、SBSはパク・チソン、MBCはアン・ジョンファンを起用し、ワールドカップ開幕前から関心を集めていた。

大会真っ只中の現在も、メディアでは毎日のように各局の視聴率が比較されているらしい。スポーツ新聞『スポーツ・ソウル』などは、「ワールドカップ解説戦争」と伝えていたと聞く。

パク・チソンが解説者デビューした理由

実際、ロシア大会の解説陣は豪華だ。

日本でもっとも知名度が高いのは、SBSで解説を務めるパク・チソンだろう。

現役時代には韓国代表として3度のワールドカップ出場を誇り、Jリーグの京都サンガやイングランドのマンチェスター・ユナイテッドで活躍。現在はKFA(韓国サッカー協会)ユース戦略本部長を務めている。

ただ、パク・チソンは今回のロシア大会が解説者デビュー戦でもある。

現職に就く前の昨年夏、拠点とするロンドンでパク・チソンに独占インタビューを行ったときは、「解説者はタレント活動みたいなものでサッカーの面白みや楽しさは提供できても、韓国やアジアサッカーの発展には直接的に寄与できない」と話し、専門の解説者になる意思はないとも明かしていた。

(参考記事:韓国の英雄パク・チソン氏インタビュー「監督でも解説者でもない、新たなサッカー人生」)

それでも今回、SBSの解説者を務めることを決めた理由について、「サッカーマネージメントの道に進む将来と韓国サッカーに貢献する方法について考えてきた」としながら、「サッカーをより多様な側面から経験することも、自分の視野を広げるきっかけになるではないか」と話している。

ちなみに、韓国記者の間では、SBSのペ・ソンジェアナウンサーの勧誘が決定的なきっかけだったという噂もある。

パク・チソンと、その妻で元SBS女子アナウンサーのキム・ミンジとを結び付けたとされるのがペ・ソンジェアナウンサーだけに、話題性はある話だが、いずれにしても、“韓国の英雄”と呼ばれるパク・チソンが解説者として再び注目を集めていることは間違いない。

(参考記事:【画像】ソン・フンミンの「恋人」は? 韓国代表の「美女パートナー」たちがかわいすぎる!!

“韓国の松木安太郎”も参戦

もっとも、他2局の解説者も負けていない。

現役時代はオランダのPSVアイントホーフェンやドイツのドルトムントでもプレーしたイ・ヨンピョは、引退直後からKBSで解説者を務めており、韓国での知名度は絶大。鋭い分析と安定感のある解説がサッカーファンから支持されている。

日本のJリーグでも活躍したアン・ジョンファンも、同じく解説者の道を選んでいるが、彼の活躍の場はサッカー中継だけではない。“韓国の松木安太郎”とも言わんばかりの軽快トーク術が注目され、バラエティ番組にも引っ張りだこに。人気料理バラエティ『冷蔵庫をお願い』のメインMCにも抜擢されているのだ。

(参考記事:“韓国の松木安太郎”!? タレント転身遂げたアン・ジョンファン

そんな3人が解説を務めているのだから、韓国で“解説戦争”が勃発し、大きな話題になっているというのも無理はないだろう。

もちろん、日本が大金星を挙げたコロンビア戦も、韓国で中継されたという。

前日に行われた韓国対スウェーデン戦の際には、現地でイ・ヨンピョとアン・ジョンファンと会う機会があったが、飛行機搭乗前のタラップで偶然再会したアン・ジョンファンは、「ロシアに臨む日本のサッカーはどうですか?」と解説準備をかなりしているようだった。

少しでも多くの情報を入手するために必死であることが伝わってきたが、結果的には日本対コロンビア戦の視聴率は、イ・ヨンピョが解説を務めるKBSが5.8%(視聴率調査会社ニールセンコリア調べ)でトップに輝いたという。MBC(5.3%)、SBS(5.2%)がそれに続いたらしい。

アン・ジョンファンは、日本がフリーキックから同点ゴールを奪われた場面で、GKの川島がゴールラインを割っていないというジェスチャーをしたとき、「ゴールラインとボールの間に高速道路を建設できるのではないか」と、独特な言い回しでゴールであることを主張して話題を呼んでいるようだが、視聴率ではKBSに一歩及ばなかったわけだ。

いずれにしても、韓国でワールドカップの“解説戦争”が話題になっていることは間違いないだろう。日本でも解説者に注目して試合中継を観るのも、ワールドカップの一つの楽しみ方になるかもしれない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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