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“韓国の星野源”も登場。韓国に到来した「シンガーソングライター全盛時代」とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
10cm(写真=マジックストロベリーサウンド公式HPより)

近頃、シンガーソングライターの話題をよく目にする。

例えば、「15歳の天才シンガーソングライター」だ。5月9日にAbemaTVで放送された『日村がゆく 〜第3回高校生フォークソングGP〜』で優勝した高校1年生の崎山蒼志がその人で、「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音や「くるり」の岸田繁が絶賛したことで関心を集めている。

そのほかにも、宇多田ヒカルとのコラボで注目された小袋成彬や、大ヒットアニメ『けものフレンズ』の主題歌『ようこそジャパリパークへ』の作詞・作曲を手掛けた大石昌良など、多くのシンガーソングライターがメディアで取り上げられている。

一昨年から昨年にかけて、「恋ダンス」で日本中を席巻した星野源などもシンガーソングライターだ。

日本ではシンガーソングライターが人気を集めるのは今に始まったことではないが、現在も自ら作詞・作曲を行う歌手が多くの人々に受け入れられていることがわかる。

その一方で、お隣・韓国はどうか。日本で「韓国の歌手」というと、真っ先に思い浮かぶのは、K-POPアイドルではないだろうか。

2010年代はじめには少女時代やKARA、東方神起やBIGBANGらが日本を席巻。最近も女子中高生を中心にTWICEやBLACKPINK、BTS(防弾少年団)やEXOなどが人気を集め、“第3次K-POPブーム”が到来したともいわれているため、それも当然かもしれない。

(参考記事:日本の女子中高生がハマる韓国コンテンツとは? 2018年に“クールコリア現象”は起こるのか

本国・韓国でもアイドルの人気は絶大で、音楽チャートにランクインするのもアイドルの曲がほとんどだ。

ただ、そんな中で最近は、シンガーソングライターにも注目が集まりつつあることをご存じだろうか。

例えば、男性デュオ「MELOMANCE」は、昨年7月にリリースしたミニアルバム『Moonlight』のタイトル曲『Gift』が、主要音楽チャートで1位を獲得している。

また、女性デュオ「屋上月光(オクサンタルピ)」や女性シンガーソングライター「ソヌジョンア」のように、楽曲がドラマで使用されるケースも少なくない。

先月には、ケーブルテレビ局Mnetが、シンガーソングライターたちが楽曲で競う番組『BREAKERS』の制作を発表して話題を呼んだ。

こうした状況の中で、ボーイズグループBIGBANGのG-DRAGONをはじめ、自ら楽曲を制作するアイドルの評価も高まりつつあり、韓国メディア『国民日報』は、「シンガーソングライター全盛時代」を迎えたと伝えている。

(参考記事:一生食べていけるかも!? 作曲で莫大な印税を稼ぐ韓国アイドルBEST5

“韓国の星野源”も人気!?

そんな中、最近は、“韓国の星野源”とも言うべきシンガーソングライターも人気を集めている。「10cm(シプセンチ)」だ。

「10cm」は、2010年にクォン・ジョンヨルとユン・チョルジョンのアコースティックデュオとしてデビュー。

グループ名は二人の身長差が10cmである(クォン・ジョンヨル170cm、ユン・チョルジョン180cm)ことに由来するというが、昨年7月にユン・チョルジョンが脱退し、現在はクォン・ジョンヨルのソロ体制で活動している。

ブレイクのきっかけとなったのは、2010年にリリースしたシングル曲『アメリカーノ』だ。

当時は他のアーティストに比べてメディア露出も少なく、タイアップなども付いていなかったが、中毒性のある楽曲が話題を呼び、「国民的ソング」と呼ばれるほどの大ヒットに。同年には、音楽授賞式『BUGS MUSIC AWARDS』のインディーズ部門で2位入賞を果すなど、一気に知名度を高めた。

その後も「10cm」は、『愛は天の川の喫茶店で』『春が好きか?』などヒット曲を連発。最近も音楽ファンから絶大な支持を集めており、「音楽フェスでもっともオファーしたいアーティスト」としても知られている。

また、「10cm」はアーティストからの支持も高いといわれており、様々なコラボも注目されている。昨年は、日本でも人気の高いボーイズグループEXOのメンバー、チェンとコラボした楽曲『Bye Babe』をリリースし、大きな話題を呼んだ。

「シンガーソングライター全盛時代」の韓国で支持を集める「10cm」。では、その人気の秘訣は何か。

ファンやメディアの間では、アコースティック・サウンドに乗せた個性的なメロディや、透明感のある歌声などが挙げられている。

また、色気を感じるセクシーな歌詞も評価が高い。「セクシーアイドルNO.1」といわれるガールズグループ4minuteのヒョナも、とあるラジオ番組で「10cm」の代表曲『スダムスダム』がオンエアされた際、「(10cmは)私の“セクシー”のライバル」と語ったことがあるほどだ。

個性的なメロディにセクシーな歌詞。そんな特徴を持つシンガーソングライターといえば、日本では星野源などが思い浮かぶが、「10cm」は“韓国の星野源”ともいえるかもしれない。

実際、「10cm」自身も、ORICON NEWSとのインタビューで「日本の星野源さんは“10cm”と似た雰囲気を持っている」と語ったことがある。

いずれにしても、シンガーソングライター全盛時代の韓国で「10cm」が人気を集めていることは間違いなく、6月には日本でライブを行うという。

各国を回るアジアツアーとして来日し、Highlightのヨン・ジュンヒョンとのコラボ曲なども披露されるとの噂もあるが、はたして、“韓国の星野源”は日本でどのような反響を呼ぶだろうか。

(参考記事:人気グループBEASTが「Highlight」に改名!なぜK-POPグループは改名が多いのか

K-POPアイドルとは一味違う韓国のシンガーソングライターが、日本でも受け入れられるか注目だ。

(10cm『アメリカーノ』)

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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