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「チアリーダーたちの実態を知ってほしい」本田景子さん、NFLチア初合格の道のり

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
本田景子さん(写真:本人提供)

日本で長らくチアリーダーとして活動し、今春に米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のジャクソンビル・ジャガーズ専属チアリーダー「ジャクソンビル・ロアー」に初合格した本田景子さん。

その合格までの道のりはどうだったのだろうか。

競争を勝ち抜いて手にした初合格

「オーディションの内容はチームによって異なりますが、大まかにはファースト、セミファイナル、ファイナルと進んでいきます。私が受けたファルコンズは180人くらい、ジャガーズは100人くらいがオーディションに参加しました。

合格したジャガーズを例にいうと、ファーストで規定のダンス審査と基礎力チェックがあり、セミファイナルではダンス審査がより長く厳しくなります。セミファイナルとファイナルの間にインタビューがあって、面接のように志望動機や自己紹介などをします。

セミファイナルを受けたのが60人くらい、ファイナルは48人くらい、最終的な合格者は34人で、そのうちルーキーは11人でした。合格した外国人は私だけで、ジャガーズでは2人目の日本人合格者ですね」

100人がオーディションに参加して最終的に残ったのは34人。韓国プロ野球でも各球団のチアドルが毎年入れ替わり、その度にメディアやファンの間でランキング付けなども行なわれるが、さすがチアリーディングの本場アメリカは競争システムが整備されている印象だ。

(参考記事:まさにドリームチーム!! 韓国プロ野球全10球団のチアリーダーBEST10)

「意志あるところに道は通じる」

それだけに生半可な気持ちでオーディションを受けることもできない。13年間勤めている商社で貿易事務をしてきた本田さんは、書類やメール上で英語に触れる機会はあったが、英会話は苦手とのこと。そのため“秘策”を使ったという。

「オーディションのとき、パフォーマンスを披露する前に英語で自己紹介をしたんです。自分の気持ちをストレートに伝えたくて、英語での自己紹介を何度も何度も練習しました。

そして、ディレクターに手紙も書きました。英語が未熟なせいで自分の想いがしっかり伝えられないまま終わるのは嫌だったので、手紙にチアに賭ける思いの丈を全部詰めました。

オーディションを受けた人で英語がネイティブでなかったのは私だけなので、わざわざ手紙まで書いている人は他にいなかったですね(笑)」

ジャガーズ合格後の記念撮影(本人提供)
ジャガーズ合格後の記念撮影(本人提供)

そんなハングリー精神が本田さんを支えてきたといっても、過言ではないかもしれない。彼女のモットーは「意志あるところに道は通じる」。チアリーダーになってからも“東京ドームで踊る”、“日本代表になる”といった目標を着実に達成してきた。

「絶対に叶えるという気持ちで努力してきました。やっぱり努力は裏切らないし、夢を叶えたいのなら、それだけのことをしなきゃ駄目といつも思っています。今回合格できたのも、努力を積み重ねた結果。頑張れば夢は必ず叶うということを自分のなかで証明できたのが良かったです」

アスリートに近いチアリーダー

そう語る本田さんは現在、35歳。いつまでも美しいスタイルを維持できているのは、日々のトレーニングの賜物だ。

そのキャリアは10年以上で、その変わらぬ美しさから“麗しき人妻チアドル”とも呼ばれるペ・スヒョンよりも長いというのだから、驚いてしまう。

「かなりの頻度でジムに通ってトレーニングしています。チアに一番必要だと思うのは筋力のバランス。ボンボンを持つのにも上半身の筋肉が必要ですし、ダンスは脚の筋肉が一番重要。でもムキムキにするのは良くないので、ダンスに必要なインナーマッスルを鍛えています。脚でいえば、内転筋とかですね。地味ですけど、そういったトレーニングの積み重ねは必要不可欠だと思います」

アスリートフードマイスターやヨガインストラクターの資格も持っているだけに、食事のメニューやトレーニングをきちんと考えて、日々を過ごしているという。

話を聞けば聞くほど、チアリーダーはアスリートに近いと感じる。お隣・韓国ではタレント活動をするチアリーダーもおり、チアリーダーとアイドルを足した造語で「チアドル」という言葉があるほどだ。

例えば、韓国プロ野球のチアリーダーのチョ・ヨンジュは今年からプロ野球ハンファ・イーグルスを応援する新人チアだが、K-POPガールズグループ“Red Velvet”のメンバーである「アイリーンにそっくり」として人気を博している。

が、本田さんは「スポーツ選手に近い」と話す。

「アイドルとスポーツ選手のどちらに近いかと聞かれると、絶対にスポーツ選手に近いと思います。チアリーダーをアイドル的な見方をされることを、好まないですね。入り口はそのような見方かもしれませんが、チアの実態を知ると、アスリートであることに気付いてくれると思います。

やっている本人たちのメンタルもアスリートそのもので、とてもストイック。もしかしたら野球のチアは学生も多いのでアイドルっぽい感じがあるかもしれませんが、社会人になってバスケやアメフトのチアをやっている人は、本当にアスリートですね」

最近、チアリーダー・ガールズグループまで登場した韓国とは、かなり事情が違うようだ。

(参考記事:ダンス・歌・美貌の三位一体!! 韓国初のチアリーダー・ガールズグループ「#is」の魅力ポイント

年齢制限についても「ないと思っています(笑)」と笑い飛ばす本田さん。ジャガーズに合格したときは「涙が止まらなかった」という彼女は、すでにNFL開幕戦に照準を合わせている。

“1年目の壁”を突破したい

「想像すると鳥肌が立つのは、開幕戦の舞台。多くの観客のなかでコートに立つ。それを想像するとワクワクします。観客が多いほど燃えます」

その様子はインスタグラムやフェイスブックなどのSNSを通じて、どんどん発信していきたいという。

韓国でもプロ野球SKワイバーンズのチアリーダーのイ・ミレが、SNSを積極活用してその活動をくまなく報告し人気がブレイクしたが、本田さんもSNSでアメリカでの活動を逐一知らせていきたいという。

(参考記事:【画像あり】かわいすぎて抜け出せない…“最強の美貌”を誇るチアドル、イ・ミレのSNSがスゴい!!)

「今回のオーディションについても発信していましたが、ファンの方から“おめでとう”と言われて本当にうれしかった。これからもジャガーズの現地の様子をじゃんじゃん流していきたいです。SNSを通じて、ファンとも交流したいですね」

NFLのチアの契約は誰もが1年となっており、1年後にはオーディションを再び受け直すという。特に最初の“1年目の壁”が一番厳しいといわれているだけに、本田さんはすでに気を引き締めている。

「アメリカに行ったらもっとトレーニングをしなければと思います。ただでさえ私は体型も、アメリカ人とは違う。一人だけアジア人なので、すごく目立つでしょう。そこはいい意味で目立てるように、ダンスのスキルと体作りを頑張りたいですね」

まさに夢の舞台に立とうとしているチアリーダー本田景子さん。その果て無きチャレンジ精神に拍手を送りたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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