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韓国時代劇『オクニョ』の“朝鮮王朝のCIA”とされる体探人(チェタミン)は実在したのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
『オクニョ』韓国制作記者会見(写真提供=SPORTS KOREA)

NHK総合テレビで放映されている韓国時代劇ドラマ『オクニョ 運命の女(ひと)』。先週の5話から女優チン・セヨンが主演として本格的に物語を牽引するようなり、彼女のことに興味を持つようになった視聴者たちも多いのではないだろうか。

チン・セヨンは1994年2月15日生まれ。チン・セヨンという名は芸名で、本名はキム・ユンジョンという。中学3年のときにスカウトされ、韓国ヤクルトのCMモデルで芸能界デビューした。

一時はとある音楽事務所でK-POPアイドルを目指し練習生生活を送ったこともあるが、2011年にドラマと映画に出演。以降、役者一本でキャリアを重ね、数多くのドラマで主人公の相手役となるヒロインを務めたあと、2016年に韓国で放映された『オクニョ』の主役に抜擢されて、一躍、スターダムに躍り出た。

(参考記事:【韓国現地情報と秘蔵写真も入手】時代劇『オクニョ』主役チン・セヨンとはどんな人物なのか)

言わば『オクニョ』はチン・セヨンの出世作なのだ。

先週の第5話では、そのチン・セヨン演じるオクニョが、捕盗庁(ポドチョン)の武官カン・ソノから“体探人(チェタミン)”になるよう誘われることが主に描かれていたが、この“体深人”についてもう少し知りたいところではないだろうか。

というのも、劇中で“体探人”はカン・ソノのセリフでこう説明されていた。

「身分を隠し、国に仕える。ときには明(ミン)など諸国に行き、己の命をかけて国の命令を遂行する。我々のようなものを体探人と呼ぶ」

日本風に言うと密偵で、その任務は諜報活動や暗殺などだったため、韓国ではドラマ放送時、「体探人は朝鮮王朝時代のCIA」と紹介するメディアもあったが、実際に“体探人”は存在したと言われている。

韓国の国家記録院のチェ・チュンギ広報チーム長によると、歴史書『朝鮮王朝実録』に朝鮮王朝・第4代王・世宗(セジョン)の統治時代だった1433年に初めて“体探人”の文字が確認されており、その後もわずかだが何度がその存在が確認されているというのだ。

『オクニョ』を手掛けたイ・ビョンフン監督は、過去にも『朝鮮王朝実録』にわずか10カ所くらいしか記述がない医女のチャングム(長今)に目を付けて、この謎めいた女性を主人公にした『宮廷女官チャングムの誓い』を制作しているだけに、おそらく“体探人”もこの『朝鮮王朝実録』からヒントを得たのだろう。

(参考記事:スクープ!! 歴史書『朝鮮王朝実録』でチャングムが実在していたかどうか確認してみた

ただ、実際に“体探人”が諜報活動や暗殺といった裏の仕事でどれだけ暗躍していたかは定かではない。韓国の史料によると、“体探人”は朝鮮王朝・第9代王・成宗(ソンジョン)の時代に解体を命じられているという説もある。

成宗の時代は15世紀中頃から後半。『オクニョ』の時代背景は第13代王・明宗(ミョンジョン)の時代で16世紀半ばである。ときの流れのつじつまが合わなくなるが、密かに暗躍していた集団だけに謎も多い。

ただ、そういった要素も逆手にとって独創的な時代劇ドラマを作るのがイ・ビョンフン監督の制作スタイルでもあるので、ご愛嬌か。

いずれにしても、第5話では“体探人”になるべくさまざまな訓練(テストでもあった)を受けたオクニョ。

演じるチン・セヨンは過去にも役作りのためにアクションスクールに通ったり、出演した映画で水着姿でのダンス・シーンを披露するなど、体当たりの演技を見せてきたが、『オクニョ』でも走って跳ぶだけではなく、剣術シーンも披露するなど大活躍だった。

(参考記事:時代劇ドラマ『オクニョ』主演女優チン・セヨンの知られざる“ドッキリ伝説8番勝負”)

そんな努力もあって第5話のラストでは晴れて“体探人”になったオクニョ。本日放映される第6話では“体探人”として最初の任務に臨むことになるが、果たしてその任務とは。そして、何が待ち受けているのか。

第6話も見逃せない展開となりそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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