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K-POPガールズ大戦に異変あり。アイドルたちの「セクシー・コンセプト」はどこへ?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
4月に韓国でカムバックしたTWICE(写真:Splash/アフロ)

この4月、K-POP界では女性アイドルグループの“カムバック”ラッシュが続いている。

いやいや、昨年12月にSMエンターテイメントを離れた少女時代のスヨン、ティファニー、ソヒョンがSMエンターテインメントに帰ってくるわけではないし、元KARAが復活するわけでもない。

(参考記事:【近況PHOTO】日本を熱狂させたKARA。元メンバーたちは今、一体どこで何をしているか)

韓国の音楽界で“カムバック”とは、新曲(韓国では『タイトル曲』と言う)を引っ提げてその曲をアピールするために歌番組に多数出演するなど、積極的な音楽活動を行なうことを意味する。

一時は性的で扇動的な“セクシー”一色だった

この4月に“カムバック”するのは実に6組のガールズ・グループだ。

4月2日に80年代レトロ・コンセプトのニューシングルを発表したEXIDを皮切りに、4月9日には日本でも不動の人気を誇るTWICEがミニアルバム『What is Love?』をリリース。OH MY GIRLのユニットOH MY GIRL BANHANAも、『BANANA ALLERGY MONKEY』という独特な楽曲を発表し、プロモーションを展開している。

また、4月19日にはApinkがデビュー7周年記念スペシャル・シングルをリリースしているし、4月23日からはLOVELYZ、4月30日からはGFRIENDが新しいアルバムのプロモーションを展開する予定らしい。

このように人気ガールズ・グループのプロモーションが4月に集中する現象について、韓国のメディアも「爽やか、ハツラツ…4月のアイドル界は“ガールズ・グループ大戦”」(『国民日報』)、「4月、春風に乗ってガールズ・グループが帰ってくる」(『スポーツ・ソウル』)と見出しを打って報じている。K-POPのファンにとっては、それこそ“春のお祭り気分”ではないだろうか。

そんな4月の“K-POPガールズ大戦”を見守りながら、ふと気づいたことがある。いわゆる“セクシー・コンセプト”を全面に打ち出すグループが激減しているという事実だ。

K-POP界ではつい最近までも、ガールズ・グループのセクシー合戦を繰り広げていた。

口火を切ったのは、2014年にセクシー路線へ切り替えて大成功を収めたGirl’s Day。それに負けじとSISTAR、AOA、STELLAR、Dal★Shabet、EXIDなど数多くのグループがセクシー路線に走り、人気を集めたものだった。

(参考記事:もはや度を超えている!! 韓国女性アイドルがますますセクシー路線に走っていくワケ

健康的なTWICEのCMは2日で30万PV記録!!

気づけば、ダンス・パフォーマンスの振り付けはセクシー全開。性的な描写がエスカレートしていき、一時は音楽番組が「ラスベガスのセクシーナイトショーのようだ」と言われたほどだった。

“SIX BOMB”というガールズ・グルーブなどは、メンバーが過去に成人映画に主演していたことが発覚したり、扇動的な衣装を着用して放送不可判定を受けたほどだ。

当然のごとく過剰なセクシー路線を非難する声も多かったが、それでも多くのガールズ・グループが肌の露出や扇動的なパフォーマンスをやめなかったのは、需要と供給が一致していたとしか言いようがない。

ところが、最近はそうしたセクシー・コンセプトもすっかり影を潜めるようになった。

むしろセクシー・コンセプトでなくとも成功を収めるグループが増えている。その代表例と言えるのが、TWICEだろう。TWICEは「カラーポップ(Color Pop)」という独自のジャンルを構築し、明るくて可愛いコンセプトで圧倒的な支持を獲得した。

日本では見られないが、韓国で出演しているポカリスエットのCMでは、健康的で爽快なイメージを前面に押し出したCM動画の視聴回数が30万回を突破したほどである。

(参考記事:【画像&動画】TWICEのポカリスエット新CMが2日で視聴回数30万突破!)

日本デビューのGFRIENDは“パワー清純”

先日、北朝鮮の平壌(ピョンヤン)で行われた公演に出演したRed Velvetも、強烈な「Red」と柔らかい「Velvet」という2つのコンセプトを交互に披露しながらユニークなアイデンティティーを構築している。

また、BIGBANGの妹分であるBLACKPINKはヒップホップをベースにした華やかな格好よさを、5月に日本デビューが決まったGFRIENDは、“パワー清純”という独自のコンセプトを掲げて爆発的な人気を博している。

つまり、もはやK-POPガールズ・グループのセクシー・コンセプト全盛時代は終わり、今は「どれだけユニーク(個性的)で、独創的なコンセプトなのか」ということが人気を左右する傾向にあるのかもしれない。

前出のOH MY GIRL BANHANAが「バナナアレルギーのある猿」という一風変わったコンセプトを披露したのも、オリジナリティを徹底的に追求した結果なのだろう。

ただ、春が過ぎ、夏が近づいてくると、その開放感から露出が増え、それがふたたびセクシー・コンセプト再燃への導火線になるかもしれない。

昨年も6月になると、Apink、Nine Muses、STELLARなどが大胆すぎる超ミニスカートやショートパンツを着用した衣装で“カムバック”し、「ガールズ・グループ“脚線美大戦”」(『世界日報』)と騒がれた。

それだけに一抹の不安も過るが、いずれにせよK-POP界で“セクシー”ばかりが強調され風潮が一新されたことは、歓迎すべきことかもしれない。

今年は多くのK-POPガールズ・グループが日本進出を控えているだけに、引き続き4月の“ガールズ・グループ大戦”の行方は見守っていきたいところだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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