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「キング(羽生結弦)の帰還」か「飛翔するスーパーマン(宇野昌磨)」か。ふたりに韓国も大注目

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
羽生結弦と宇野昌磨(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

昨日、江陵(カンヌン)アイスアリーナで行われたフィギュアスケート男子ショートプログラム(SP)。羽生結弦は首位、宇野昌磨はハビエル・フェルナンデスに次いで3位に入った。

この結果は、開催地・韓国でも大きく報じられている。

「帰ってきたフィギュアキング羽生、3カ月の空白を感じさせないSP1位」(『中央日報』)、「“キングの帰還”羽生、SP111.68点で1位」(『京郷新聞』)、「羽生結弦、SP111.68点で“1位”…フェルナンデス、宇野が“猛追撃”」(『スポーツ・ソウル』)といった具合だ。

韓国でも人気の羽生、過去に炎上した宇野

とりわけ、首位発進した羽生には多くのメディアが注目している。

「“日本のスケート王者”羽生結弦、調べてみると“くまのプーさん”マニア?」(『スポーツ韓国』)、「羽生結弦、日本国内でも“アンチがいない”スポーツ選手“人柄の良いスポーツ・スターの代名詞”」(『蔚山毎日新聞』)など、演技のみならず、その内面にも関心が集まっている。

もっとも、羽生はもともと韓国で知名度が高い。

昨日の試合の前から現地のテレビを付けるとスポーツニュースで羽生が紹介されていたし、ネット上には現地ファンが立ち上げたファンサイトも存在する。ネットでは羽生に対して“ウセンキョルヒョン”という別名までつけられているほどだ。

(参考記事:韓国でも有名な羽生結弦、別名「ウセンキョルヒョン」とはどんな意味?)

羽生の今季初戦となった昨年9月のオータム・クラシックを2位で終えたときなどは厳しい意見も挙がったが、いずれにせよ韓国でも羽生が有名であることは事実だろう。

一方で、3位に入った宇野は、羽生と比べると扱いが小さい。

「宇野昌磨“スーパーマンのように飛翔”」(『マイデイリー』)のように、演技中の写真を掲載するメディアは少なくないが、宇野の演技やプロフィールについて単独で紹介するメディアは見当たらない。

1位と3位とでは注目度に差があっても無理はないが、宇野は過去に韓国でインタビュー動画が炎上したことがある。しかも、当時は平昌五輪に関する発言が問題になっただけに、こうした“因縁”も関係して、宇野にはあまりスポットライトが当たっていないのかもしれない。

(参考記事:インタビューが韓国で炎上…宇野昌磨と平昌五輪の意外な因縁

「羽生に似ている」韓国選手は20年ぶりの快挙

ちなみに、韓国から唯一出場したチャ・ジュンファンは、15位でSPを終えた。

韓国の男子選手が冬季五輪でフリーに進出するのは、98年長野五輪のイ・ギュヒョン以来、20年ぶりのことである。

チャ・ジュンファンは、羽生やハビエル・フェルナンデスを指導するブライアン・オーサー氏に師事。オーサーコーチも「羽生に似ている」と絶賛する16歳のホープだ。

昨年7月から今年1月まで3度にわたって行われた韓国代表選抜戦では、羽生がわざわざ韓国語であいさつするとして話題を呼んだキム・ジンソをはじめ、先輩スケーターを破って平昌の出場権を獲得。

今回のSPでも自己最高得点となる83.43点を記録しただけに、フリーでは羽生や宇野にどこまで食い下がれるか注目したい。

いずれにしても、羽生や宇野が韓国でも注目されていることは間違いない。

特に羽生は、女王キム・ヨナとの共通点が多いことから性別の違いを越えて何かと比較されてきたが、五輪連覇はそのキム・ヨナも成しえなかった偉業だけに関心は高まるばかりだ。

(参考記事:韓国から見た羽生結弦とキム・ヨナの3つの共通点)

今日、行われるフリーでも、日本選手は現地で熱視線を集めることだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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