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数字が示した期待と不安…平昌五輪が「罰ゲーム大会になる」恐れもある韓国のリアル

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
韓国代表の選手団 結団式(写真:ロイター/アフロ)

いよいよ本日から開幕する第23回オリンピック冬季大会。開催国・韓国にとっては1988年ソウル大会以来2度目のオリンピックであり、冬季オリンピックは史上初だけにメダルへの期待も大きい。

韓国が掲げる目標は、金8・銀4・銅8のメダル獲得で総合順位4位へのランクインだ。この目標に基づいて韓国メディアは“メダル候補12人”を選定しているが、金8・銀4・銅8は歴代最高の成績を挙げた2010年のバンクーバー五輪の金6・銀6・銅2を上回るもの。

つまり、過去最高の成績を上げることを目標にしているわけだが、興味深いのは期待されるメダル候補に女性が多いことだろう。

ショートトラック・スピードスケートのシム・ソッキ、チェ・ミンジョン、女子スピードスケートのイ・サンファ、キム・ボルムなどがそうで、彼女らに加えフィギュアスケートの人気選手たちは平昌を盛り上げる“7大美女アスリート”ともされている。

(参考記事:「アイドル顔負けの美貌」の声も!! 平昌五輪を盛り上げる韓国の“7大美女アスリート”)

メダルが期待される種目は、韓国で当然のように“注目種目”にもなっている。

世論調査で有名な韓国ギャラップ社が1月30日から2月1日まで成人1005人に電話調査した結果、「もっとも関心ある種目」は、1位ショートトラック(34%)、2位フィギュアスケート(34%)、3位スピードスケート(23%)だった。

韓国のアルバイト専門ポータルサイト『アルバ天国』も10〜60代の2748名を対象に同様のアンケートを行っているが、1位ショートトラック(36.9%)、2位フィギュアスケート(21.8%)、3位スピードスケート(15%)と、1〜3位は同じだ。

ショートトラックは過去の大会でもメダルを量産していることから、韓国では“孝子(ヒョジャ)種目”と呼ばれてきたが、大会前にエース級選手であるシム・ソッキが専属コーチから暴行を受けていたという事件が発覚。それによって負った汚名を返上するためにも、結果が求められている。

(参考記事:暴行事件に手続きミス、「スキーをやめる」という選手も出ている韓国・平昌五輪の不手際)

ギャラップ社の世論調査で目を引いたのは、アイスホッケーへの関心の高まりだ。

昨年2月に行れた調査ではアイスホッケーへの関心が3%に過ぎなかったが、開幕直前の調査では21%(4位)にまで上がっている。南北合同チーム結成がそのキッカケになったのは言うまでもない。

最近はキャロライン・パクのように、そのキュートなルックスが話題になるアイドル的存在にも注目が集まっている。

「南北合同チームは非人気種目だった悲しみを終らせる良い機会」とした文在寅大統領の言葉通りになったとも言えなくもないが、世論は満場一致で南北合同チームを支持しているわけでもないらしい。

南北合同チームに対する意見を問うたギャラップ社の調査でも、国民の40%が肯定的だが、50%は否定的だったという(10%は回答を留保)。

世代別にみても40代は58%が肯定的だったが、20代は62%が否定的だった。南北合同チームに関しては、まだまだ賛否の両方がある状態なのだ。

何よりも肝心なオリンピックへの関心も、気になるところだ。

前出のギャラップ社の調査では、平昌五輪に「関心が多い」が39%、「ある程度関心がある」が32%と、国民の大会への関心がようやく70%台になった。

『アルバ天国』の調査では「とても関心がある」が35.1%、「ある程度関心がある」が42.5%だったという。

その一方で、ギャラップ社の調査では「別に関心がない」は20%、「まったく関心がない」は8%(1%は意見を留保)。『アルバ天国』では「別に関心がない」が8.1%、「まったく関心がない」が3.8%(「よくわからない」が10.4%)と、まだまだ五輪に対して冷めた見方があることが浮き彫りになった。

韓国が冒頭で紹介したような目標通りの成績を収めていけば、おのずと盛り上がるだろが、開催国だからといって韓国の有利が約束されているわけでもない。

スキーやスノーボードといった雪上競技で韓国は過去に一度もメダルを獲得したことがなく、スピードスケートのイ・サンファもかつてのような勢いがない。

スピードスケートの新種目マススタートの世界ランク1位にして「アイドル並みの美貌」と称されるキム・ボルムのような選手も出てきたが、かつてキム・ヨナが韓国にメダルをもらたしたフィギュアスケートでメダルは期待できそうにもない。

そのため、旧知の韓国スポーツ記者たちの間では、自虐たっぷりにこんな冗談も囁かれている。

「韓国の冬季五輪史上最高成績どころか、日本にメダルを奪われて罰ゲームのような大会になるかもしれない」

スピードスケートの小平奈緒に高木美帆、男子フィギュアの羽生結弦と宇野昌磨、スキージャンプの葛西紀明、高梨沙羅などタレント豊富な日本に、メダル数で後塵を拝すかもしれないという“恐れ”だ。

(参考記事:【数字で日韓比較】冬季オリンピックのメダル獲得数では韓国も、平昌五輪が心配!?)

まさに韓国にとっては期待と不安の17日間になりそうな平昌五輪。これからどんなドラマやハプニングが待ち受けているのだろうか。大会が成功することを期待したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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