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韓国のスポーツ参加率を変えてしまったグラマラスな“マッスル美女”たち

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
“感動マッスル美女”イ・ヨンファ(写真提供=SPORTS KOREA)

平昌五輪の開幕が迫る中、韓国で興味深いデータが明らかになった。韓国の人々が日常的にどれだけスポーツをしているかというデータだ。

韓国の文化観光部(日本の文部科学省に相当)が1月31日に発表した「2017年国民生活体育 参与実態調査」がそれであるが、その調査結果が興味深い。

女性たちのスポーツ実施率を高めた“マッスル・ブーム”

韓国では国民の59・2%が、週に1度、1回30分以上の割合で何かのスポーツをして汗を流している。日本のスポーツ庁も同じようなデータを発表しているが、日本は平成28年11月の世論調査で成人の週1回以上のスポーツ実施率は42.5%だった。

韓国の調査は満10歳以上の国民9000人を対象に世帯訪問を通じた面接調査なので日本とは単純比較はできないが、韓国のスポーツ実施率が高いことがわかる。2014年の実態調査では55.1%。3年前よりも高まっている。

しかも、注目すべきことは女性のスポーツ実施率が高まっているというのだ。

男性の実質率は60.1%と2016年の62.3%よりも下落したが、女性は56.7%から58.4%に上昇したという。特に30代女性たちの生活体育への実施率は62.5%と高く、2016年の同調査時よりも7.7%も高まっていることがわかったのだ。

2016年と言えば、韓国で“マッスル・ブーム”が盛り上がり始める時期だ。“奇跡のDカップ女神ボディ”ユ・スンオクも、その年の1月にバラエティ番組に出演したことを機に人気がブレイクした。

以降、レイヤン、チェ・ソルファ、イ・ヨンファなど数多くの“マッスル美女”たちがテレビや雑誌に引っ張りダコになった。

(参考記事:韓国メディア選定!! 「2016年に輝いたマッスル・クイーンTOP10」は誰だ!?)

ボディビルが人気スポーツの第3位に

メディアが注目したのは、彼女たちのムダのない筋肉もさることながら、グラマラスな胸元やくびれ、スラリと伸びた脚線美などだ。

つまり、純粋に肉体美を競うというよりも、筋肉美を前提とした“セクシーさ”に注目が集っているわけだが、前出した実態調査のさらに詳細な数字を知ると、それを不純とは言い切れなくなる。

というのも、「もっとも行っているスポーツは?」という問いの回答が、1位ウォーキング(31.8%)、2位登山(17%)、3位がボディビル(14.7%)だったのである。

韓国では“マッスル・ブーム”以降、『マッスル・マニア』『NABAA WFFコリアグランプリ』『Top Of Muscles』など大小さまざまなボディビル・コンテストが全国各地で行われるようになったが、その熱気がそのまま数字に表れた格好だ。

(参考記事:写真20連発!! 今年のマッスル美女は誰だ? 韓国で行われたマッスル大会の熱い現場を見よ!)

特に20代では28・7%、30代では24.1%が日常的に行っているスポーツとして、ボディビルを挙げたというのだから、男女を問わず体を鍛え筋肉を身につけることを好む傾向にあると言えるのだろう。

スポテイナー人気に完売ビキニカレンダーまで

韓国はもともと健康志向が強く、肉体美への憧憬心が強いところがあった。

数年前にはルックスも抜群な芸能人たちが鍛えた筋肉美を自慢する“モムチャン(「ナイスバディ」という意味の造語)”ブームが起き、食事や運動で理想の健康美を目指す“ウェルビーイング”ブームもあった。

素敵なルックスと美しいボディラインを代名詞にする芸能人が登場すると、そのトレーニングを担当したコーチが話題になり、そのノウハウが詰まった書籍やトレーニング器具が人気を集めることも多い。

イェ・ジョンファ、シム・ウトゥム、ヤン・ジョンウォンなどが“スポテイナー”と呼ばれる新たなジャンルを確立し、テレビや雑誌などに引っ張りダコになっている。

(参考記事:美人トレーナーAYAが登場した日本でも“スポテイナー”がジャンル化されるか)

しかも、最近はイ・ヨンファのような“感動マッスル美女”も出てきた。

その美しい顔立ちとボリューム感あふれるボディラインもさることながら、彼女を一躍、有名にしたのは、聴覚障がいというハンディキャップを抱えながら体を鍛え、美しい肉体を作り上げたことに尽きる。

そのサクセスストーリーは涙と感動の“人生劇場”として多くのメディアに取り上げられた。

このイ・ヨンファを含め、多くのマッスル美女たちが登場するヘルス専門誌『MAX Q』は、新年号で“マッスル美女ビキニカレンダー”を付録につけたことを以前紹介したと思うが、1月10日には完売となり、それが複数の大手メディアで取り上げられたりもした。

『スポーツ・トゥデイ』や『トップスター・ニュース』といったスポーツ・エンタメ専門ニュースサイトなどでは「マッスル女神たちがやり遂げた!! ヘルス雑誌が異例の売り切れ」と題したタイトルで、その快挙を大々的に伝えていたほどである。

まさに韓国の“マッスル・ブーム”は、単なる健康志向や筋肉自慢の範疇では収まらなくなりつつあるのだ。

国民が日常的に行っているスポーツの第3位に「ボディビル」がランクインしているのだから、そのブームはどうやら今年も続きそうな気配だ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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