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東方神起や少女時代を生んだSMエンタがあえて“オーディション番組ブーム”に乗らない理由

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
EXOのメンバーたちもSMが発掘して育てた(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

本日1月24日に韓国でデビューするガールズグループが話題を呼んでいる。

番組の影響で美容整形が急増

彼女たちは、昨年、韓国のケーブルテレビ局Mnetで放送され、絶大な人気を集めたオーディション番組『アイドル学校』から輩出された9人組アイドルグループ。fromis_9である。

同番組は、放送を見て美容整形を行なう女子中高生が急増したほど大人気を集めただけに、fromis_9もデビュー前から多くの関心を集めてきた。

(参考記事:「なんでそんなにかわいいの?」大型新人アイドルグループfromis_9とは

そもそも韓国では現在、“オーディション番組ブーム”が巻き起こっている。

例えば、日本でも人気のガールズグループTWICEもオーディション番組から誕生したアイドルだし、昨年6月までケーブルテレビ局『Mnet』で放送された『プロデュース101・シーズン2』からデビューしたボーイズグループWanna Oneなどは、韓国に新たな流行語を生みだすほど人気を集めている。

つまり、最近はオーディション番組から誕生したアイドルが人気を集める傾向があるわけだ。

それだけに、各芸能事務所もオーディション番組を通じた人材発掘に力を入れているが、以前に本欄で紹介した通り、東方神起や少女時代、EXOなどが所属する韓国最大手の芸能事務所SMエンターテインメントだけは、こうしたオーディション番組に参加していない。

同事務所は1月21日から、10カ国45都市で展開するグローバルオーディションを開始しているが、それも自社独自で実施するものだ。

オーディション番組からアイドルを輩出することが一つの潮流となっているいま、なぜSMエンターテインメントは、オーディション番組に参加していないのか。

SMがオーディション番組に参加しない理由

韓国の芸能関係者は、韓国のスポーツ紙『スポーツ・ソウル』の取材で次のように分析している。

「たしかにオーディション番組から輩出されると注目度は上がりますが、それはあくまで一時的なもの。長期的に見て、その経歴がどれほど人気に影響するかはまだ検証されていません。むしろ、“オーディション番組出身”というイメージが固定化してしまう恐れもあります」

つまり、オーディション番組からデビューすることには、一定のリスクも伴うということだ。

実際、オーディション番組は最近、音楽業界からも「放送メディアの横暴」などと批判を受けており、“オーディション番組出身”という経歴がアイドルのイメージに悪影響を与える可能性も否定できない。

特に『アイドル学校』の場合、前述した通り、その人気の裏側で中高生たちの美容整形が急増し、ちょっとした騒動にもなった。アイドルのイメージだけではなく、一般の視聴者たちにも悪影響を及ぼしていたと指摘する声もある。

(参考記事:オーディション番組『アイドル学校』の影響で、女子中高生の整形が急増しているワケ

一発ヒットを狙う中小事務所ならまだしも、SMエンターテインメントほど大きな芸能事務所であれば、あえてそうしたリスクをとらずとも、新人を売り出すことができるということだろう。

ましてSMエンターテインメントは、新人の発掘・育成システムに定評がある。前出の『スポーツソウル』も、こう評価していた。

「SMエンターテインメントは、キャスティングからトレーニング、プロデュース、マネジメントまで、あらゆるシステムがもっともしっかりしている芸能事務所に挙げられる。新人グループをデビューさせるときに、熱狂的なファンをつかまえるノウハウも他の追随を許していない」

事実、これまでもSMエンターテインメントは、金と労力を惜しまず才能の原石を磨き、確実に“売れる”アイドルに育て上げた後に新人をデビューさせている。同事務所に所属する東方神起などは、デビュー投資額が80億ウォン(8億円)といわれるほどだ。

(参考記事:誕生秘話と苦難を乗り越えて掴んだ栄光…東方神起とSMエンターテインメントの“光と影”

そうした実績があるからこそ、SMエンターテインメントは“オーディション番組ブーム”に乗らず、絶対の自信を持って我が道を進んでいけるのだろう。

もっとも、それでもオーディション番組から誕生したアイドルの人気が急上昇しているのも事実だ。SMエンターテインメントといえども、この時代を勝ち抜くアイドルを生み出すのは簡単なことではないはずだ。

“オーディション番組ブーム”をあえてスルーするSMエンターテインメントから、今後どのようなアイドルが誕生するか、注目したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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