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美女コスプレイヤーも多数登場で盛り上がる韓国ゲーム市場は今、どうなっているか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
『G-STAR2017』では多くの美女コスプレイヤーも登場した(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

スマホ向けゲームアプリ『どうぶつの森ポケットキャンプ』が話題だ。11月21日に配信スタートしたが、アクセスが殺到して通信エラーも起きたという。昨年は『ポケモンGO』が大フィーバーしたことが記憶に新しいが、韓国でもゲーム市場はぐんぐん伸びている。

美女コスプレイヤーも殺到した『G-STAR2017』

韓国で業界三大勢力として数えられるNOXON、Netmarble、NCSOFTの今年第三四半期までの収益を見ても、それはわかる。

NOXONは1兆8559億ウォン(約1859億円)、Netmarbleは1兆8090億ウォン(約1809億円)、NCSOFTは1兆2254兆ウォン(約1225億円)と、3社すべてが歴代最高値を更新したのだった。

特にモバイルゲームの成長は著しく、今年上半期の国内の総収益は15億ドル(約1688億円)を突破し、前年同期比66%の大幅増を記録しているらしい。

そうした韓国ゲーム市場の活況を象徴していたのが、11月16~19日に釜山(プサン)で行われた韓国最大級のゲームの祭典『G-STAR2017』だった。

当日は、ゲームキャラクターに扮する美女コスプレイヤーも多数登場し、興奮に包まれた会場の様子は複数のメディアが報じている。

(参考記事:【画像あり】韓国最大級のゲーム祭典を盛り上げる美女コンパニオンたち

今年で13回目を数えた同イベントには、韓国のゲーム会社はもちろん、日本からもバンダイナムコエンターテインメントなどが出店。35カ国から676社が参加し、史上最多となる22万5000人の観客を動員したというのだからすごい。

「G-STAR」の盛り上がりは、韓国ゲーム市場の活況を象徴していると言えるだろう。

企業間の競争も激化…“過激広告”も登場

しかも、最近はゲームが社会現象にまで発展することもある。

例えば今年初め。日本から約半年遅れで韓国で『ポケモンGO』がリリースされたときは、サービス開始から1週間で700万ダウンロードを突破した。

“上位1%の神ボディ”のキャッチフレーズで支持を集めているイェ・ジョンファをはじめ、人気タレントたちも夢中になっているとして話題を呼んでいたし、韓国警察庁が、運転しながらのプレイによる事故防止のために、急きょ“交通安全強化月間”を実施したこともあったほどである。

こうしたゲーム人気を受けて、企業間の宣伝競争も佳熱している。少しでもユーザーの印象に残るようにと、ネット広告にK-POPアイドルなど芸能人を起用することも少なくない。

(参考記事:韓国で盛り上がるモバイルゲーム市場。売上に最も貢献しているK-POPアイドルは?

最近、韓国で写真集を発売し、国内主要オンライン書店で軒並み1位に輝く人気を見せている日本の篠崎愛も、モバイルゲーム『アケロン』の広告モデルに起用されたことがあったほどだ。

ただ、その一方で競争が過熱するあまり、ゲーム会社の広告は少しでも目立とうと過激な方向に進んでいる。

ユーザーの大半が男性ということもあり、レースクイーンなどをモデルに起用した“大胆な露出広告合戦”が繰り広げられているのだ。

中には「ゲームとほとんど関係ないのでは?」と突っ込まれる過激な広告も登場している。

ゲーム市場拡大の背景には30~40代の“ノスタルジー”

されはさておき興味深いのは、韓国ゲーム市場の拡大をけん引する年齢層だろう。韓国では主に、30~40代がゲームに興じていることがあるようだ。

アプリ市場の調査と使用者分析を行っている『WISEAPP』のチャ・ヤンミョン代表が発表したところによれば、30代がスマートフォンでゲームを利用する割合は64%、40代は57%に上るという。10代の88%と比べると少ないが、注目すべきはゲームのプレイ時間だ。

10代は平均で月間23.2時間であるのに対し、30代は32.7時間、40代は24.4時間と、全年齢の中でトップ2を占めている。つまり、30~40代は比較的ヘビーユーザーである傾向があるわけだ。

そこには、彼らがほかのジャンルに比べて2倍以上も利用時間が長いRPG系ゲームを好むことが関係していると、チャ・ヤンミョン代表は分析している。

もっとも、30~40代がプレイしているのはモバイルゲームだけではない。ロッテマートによれば、今年1~5月にはテレビゲームの売上が前年同期比20.2%増加したが、売上全体のうち、80.2%は30~40代の購入したものだったという(30代45.1%、40代35.6%)。

韓国メディア『ソウル経済』は、彼らがゲームにハマる理由は、“ノスタルジー”にあるとして、次のように分析している。

「現在、30~40代に当たる世代が学生時代を送った1980~90年代は、モバイルゲームはもちろん、PCゲームもない時代だった。テレビゲームを楽しむほかになく、経済力がなければそれすら叶わなかった。時が流れ、彼らが経済力を持った購買者となり、趣味としてゲームを求めているのである」

こうした背景もあって韓国ではゲーム市場が伸びているわけだが、それだけに、“ゲーム大国”日本にもただならぬ関心を寄せている。前出の『ポケモンGO』発表時には、韓国のゲーム業界と比較しながら、自国の現状を嘆くメディアもあった。

(参考記事:韓国が「死んで蘇っても我が国では『ポケモンGO』を作れない」と嘆いている理由

実際、韓国産モバイルゲームは“井の中の蛙”と言われており、国外では評価を得られていないのが実情だ。今後は、海外進出を成功させることが課題となるだろう。

いずれにしても、今これからも韓国でゲーム熱が高まっていくことは間違いないだろう。

韓国の政府機関である文化体育産業部も、昨年比55.3%増の約642億ウォン(約64億2000万円)をゲーム産業に投資するなど、支援に力を入れている。成長を続ける韓国のゲーム業界には、これからも注目していきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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