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「秀吉が好き」発言で猛批判。歴史認識問われるアイドルたちを窮地に追い込む韓国SNSの恐ろしさ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
窮地に立たされているチェ・シウォン(写真:ロイター/アフロ)

韓国はもちろん、日本でも人気の男性アイドルグループ“SUPER JUNIOR”のメンバーであるチェ・シウォンが、窮地に立たされている。

中央日報などによると、チェ・シウォンが日本ファンクラブと行った過去のインタビューで、「徳川家康、豊臣秀吉、織田信長が好き」だと答えていたことが韓国のネット上で拡散。韓国での報道は昨日のヤフトピでも取り上げられていたので、そのニュースを目にした方々も多いことだろう。

歴史認識を問われる韓国のアイドルたち

日本では立身出世の象徴として愛され尊敬される豊臣秀吉も、韓国では文禄・慶長の役(韓国では「壬辰倭乱(イムジンウェラン)」で朝鮮出兵を指示した侵略者もしくは敵役とされているだけに、チェ・シウォンはその歴史認識を疑われ、猛バッシングを受けているのだ。

ただ、韓国のアイドルたちがこういった“歴史問題”でバッシングを浴びる例は今回が初めてではない。

例えばガールズグループ“AOA”のメンバーはその発言やミュージックビデオに日本企業のロゴが映り込んでいただけで問題視され、事務所が釈明に追われたこともあった。

(参考記事:安重根や李舜臣を知らない!? 「歴史を忘れたアイドルグループ」AOAが大炎上)

着ていた衣装の模様やインスタグラムにアップした写真が、旭日旗を連想させるとして問題になり、猛烈なバッシングを受けたガールズグループやボーイズグループのメインボーカルもいる。

韓国が旭日旗に敏感で何かと神経質になることは有名だが、ファンサービスのつもりでSNSにアップした写真まで「イラストの模様が旭日旗に似ている」として非難にさらされたこともあるほどだ。

(参考記事:人気グループにもレッテルが… 実は旭日旗にオープンすぎる韓国アイドルたち)

“愛犬かみつき事件”から過去発言に飛び火

こうした前例があることを考えれば今回のバッシングも韓国では致し方ないところなのだろうが、「なぜ、今、このタイミングなのか」ということだ。

チェ・ジウォンのくだんの発言があった日本ファンクラブのインタビューは少なくとも最近ではない。というのも、チェ・シウォンは2015年11月から兵役に。兵役の代替え制度である義務警察で活動し、芸能生活を中断していた。今年8月に兵役を無事に務め上げて除隊。まだ芸能活動を再開して日が浅いのだ。

にもかかわらず、過去発言が突如として問題視され波紋を呼んでいるのは、最近、明らかになった“フレンチブルドッグ事件”のせいだろう。

飼い犬がかんでしまった女性が亡くなってしまったこの事故が発覚したことで、チェ・シウォンは飼い主としての責任を問われ、猛バッシングを受けている。

それが引き金となってネット上ではチェ・シウォンの“過去の粗探し”が一斉に始まり、とあるオンラインコミュティで過去インタビューのキャプチャー画像が掲載され、それが瞬く間に拡散したことでメディア各社も大きく取り上げている状況だ。

ニュースメディア『マイデイリー』などは、「チェ・シウォン、このまま沈黙するのか?ブルドッグに過去発言まで“四面楚歌”」と、出口の見えない窮地に立たれているスーパーアイドルの現状を厳しく指摘している。

アイドルも積極活用するSNSで拡散される“皮肉”

意図せぬ事故とはいえ死者が出ている以上、チェ・シウォンは飼い主としての責任が問われるのは当然だが、過去発言まで引っ張り出して人格攻撃にも近いバッシングの刃を向けるのは少々やり過ぎではないかという感も否めない。

まして“ブルドッグ事件”も“過去発言”も世に拡散されるキッカケとなったのは、SNSだという。

日本同様に韓国ではフェイスブックやインスタグラムなどのSNSが盛んで、アイドルやタレントたちが積極的に活用している。撮影現場でのメイキングカットや、プライベートでの水着ショットを公開し、ファンを喜ばせるアイドルも少なくないほどだ。

(参考記事:キーワードは「健康美」!! 日本とはひと味違う韓国アイドルたちの水着姿をご紹介!)

そんな中でもチェ・シウォンは早くからSNSをフル活用してきた。2013年には韓国人として初めてツイッターのフォロワーが300万人を超え、インスタグラムのフォロワーに至っては4500万人を超えていたほどだが、そんなチェ・シウォンがSNSの拡散パワーで窮地に立たされているのだから皮肉だろう。

チェ・シウォンだけではない。前出したアイドルたちの歴史認識問題も、元はと言えば彼ら・彼女らがSNSにアップした写真やコメントが発端になるケースが多く、SNSなどで拡散されて問題となっている。ファンとのコミュニケーションを楽しむために始めたSNSが、結果的には彼ら彼女たちの首を絞めているのだ。

果たしてチェ・シウォンはこの窮地をいかに突破するだろうか。

“ブルドッグ事件”の謝罪はSNSで、“豊臣秀吉好き発言”に関しては所属するSMエンターテインメントが釈明。「ほかの意図はなく、“日本と聞いて連想するのは何か”と質問され、当時読んでいた『大望(日本の小説『徳川家康』の韓国版)』の登場人物について話しただけ」としているが、チェ・シウォン本人はまだ公の場に姿を現していない。

SUPER JUNIORは10月24日と25日に横浜アリーナでファンミーティングを開催したが、チェ・シウォンはドラマ撮影を理由に参加しなかった。韓国と日本の両方で、彼の肉声が待たれていることは、間違いなさそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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