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華麗なレッドカーペットにも注目。史上初めて「女たちが開き閉じる」今年の釜山国際映画祭

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(ペイレスイメージズ/アフロ)

本日10月12日から韓国で『第22回釜山(プサン)国際映画祭』(BIFF)が開幕する。1996年から行われているBIFFは、映画の出品数や訪れる映画関係者数などがアジア最多とも言われており、今や世界でも有名な映画祭のひとつだ。

今年も世界75か国から約300作品が招待上映される。そのうち、世界初上映となるワールドプレミアが99作品、自国以外の国で初公開されるインターナショナル・プレミアは31作品となるが、「今年のBIFFは女たちが開けて閉じる」(『韓国日報』)と言われている。

豪華で大胆なレッドカーペットにも注目

今年はカンヌ映画祭とベルリン映画祭で受賞歴がある韓国の女性監督シン・スウォン監督の新作『ガラスの庭園』が映画祭のオープニングを飾り、台湾出身で香港で女優・監督として活躍するシルヴィア・チャンの『ラブ・エデュケーション』で映画祭の幕を閉じるからだ。

映画祭に参加する女優たちの顔ぶれも錚々たるもので、今からレッドカーペット・セレモニーが注目されている。BIFFレッドカーペットは韓国国内で行われる従来の映画祭レッドカーペットと異なり、世界各国から美しき女優たちが集まるからだ。

(参考記事:歴代の釜山国際映画祭レッドカーペットからピックアップ!! 人気女優による垂涎の“露出バトル”)

その注目度の多さを利用して世界にその名を轟かせようと、大胆ドレスで映画祭の話題をさらった女優たちも少なくはない。

2011年のBIFFで胸元がパックリ開いたセクシードレス姿を披露し、韓国の大手ポータルサイトで検索ランキング1位にもなったオ・インヘなどは、その典型だろう。

ちなみに彼女はその後、フローリストの資格を取得したり、人気男性誌『MAXIM KOREA』のグラビアを飾ったりと女優以外の活動が目立つ。最近もインスタグラムで、自身の名を冠した蟹料理レストランをオープンさせたことを知らせている。

その割には出演作品が増えないのが映画ファンにとってはちょっぴり残念なところだろうが、個人的に今年のBIFFで嬉しく思うのは日本映画がたくさん招待上映されることだ。

実は韓国の輸入映画1位は日本。BIFFでも最多

昨年も新海誠監督の『君の名は。』や樋口真嗣監督の『シン・ゴジラ』、李相日監督の『怒り』が上映されるなど、BIFFでは例年のように多くの日本映画が上映されてきたが、今年はいつになく話題作が目白押しなのだ。

例えば「ガラプレゼンテーション部門」では、是枝裕監督の『三度目の殺人』、行定勲監督の『ナラタージュ』が招待作品として上映される。

「アジア映画の窓部門」では黒沢清監督の『散歩する侵略者』、河瀬直美監督の『光』といった有名監督の作品はもちろん、『枝葉のこと』の二ノ宮隆太郎監督、『あゝ、荒野』の岸義幸監督などの作品も招待されている。北野武監督の『アウトレイジ 最終章』も上映される。

実は韓国では意外なほど大量の日本映画が輸入されているが、その多くは成人映画と言われている。それもほとんどが劇場公開されていない。

(参考記事:韓国映画市場で日本映画がシェアNO.1、でも8割が「R18指定」の成人映画のなぜ!?)

そんな中でこれだけ多くの作品が、しかも成人映画ではない多様なジャンルの日本映画が劇場で公開されることで、韓国人は日本映画のクオリティの高さを再認識するはずだ。

ジブリ作品が人気の韓国に新しいジャパニメーションの風吹くか

もちろん、日本映画の代名詞とされるアニメ映画も多数上映される。

「ワイド・アングル/アニメーション ショウケース」と銘打たれた部門では、9月のオタワ国際アニメーション映画祭で長編部門グランプリに輝いた湯浅政明監督作品を計4作品も公開するというし、スタジオジブリ出身の米林宏昌監督は新作『メアリと魔女の花』とその主人公の声を演じた女優の杉咲花とBIFFに参加するという。

韓国ではいまだジブリ作品が根強い人気を誇るが、今回のBIFFを通じて日本アニメのさらなる可能性を発見する韓国人ファンも多くなるのではないだろうか。

(参考記事:韓国の映画ファンが評価するスタジオジブリ作品のベスト10とワースト1位は?)

このように今年のBIFFでは日本映画がとても多く、合作なども含めるとその数は実に35作品までに及ぶという。それだけに「今年のBIFFは日本映画特別展ではないか」という意地悪なネット住民たちの指摘もあるようだが、「日本映画特別展」大いに結構ではないだろうか。

筆者も過去2回、BIFFの現場に、ときには取材者として、ときには関係者のひとりとして立ち合ったことがあるが、現地の熱気と盛り上がりは相当なもの。そんな中で日本映画が存在感を示すのは痛快であるし、スクリーンを通じた日韓交流が活性化することは望ましいことだ。

実際、韓国で映画化された日本の小説も多く、今回のBIFFには福山雅治、瑛太、菅田将暉、中山美穂、蒼井優、有村架純、浜辺美波など、日本の俳優・女優たちも参加するらしい。

作品交流・人的交流を通じて日韓の理解が深まることを、大いに期待したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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