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復活した東方神起、彼らはなぜ長く愛されるのか。そして、これから待ち受けるものは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
いよいよ東方神起が活動を再開する。(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

韓国はもちろん、日本でも絶大な人気を誇るスーパーグループ“東方神起”がついに完全復活した。

最後の制服姿見ようとファン数千人!!

東方神起は、2015年7月にリーダーのユンホが兵役のため軍隊に。同年11月にはチャンミンも義務警察での兵役生活に入っていた。そのため、芸能活動を中断していたが、今年4月20日にユンホが無事に兵役を務め上げ、8月18日にはチャンミンも終了した。

その除隊式には、最後の制服姿を見守ろうと数千人のファンが駆け付けた(日本からも!!)というのだから、東方神起の人気の高さを感じずにはいられない。

(参考記事:東方神起の除隊現場に密着!! 集まった数千人のファンに思ったこととは?)

韓国メディアも東方神起の変わらぬ人気ぶりに舌を巻く。「東方神起、変わらぬ人気」(『ファイナルシャルニュース』)と経済紙でも、その復活のニュースが取り上げられたほどで、中には「東方神起、否定することができない“王の帰還”」(『スポーツトゥデイ』)と、その存在感の大きさを改めて論じるメディアもあるほどだ。

結成14年目で長寿アイドルの代表格に

実際、東方神起はK-POPアイドルグループの中でも群を抜いていると言えるだろう。

例えばその活動年数だ。韓国でのデビューは2004年。つまり、今年で活動14年目となるのだ。

昨年でデビュー35周年を迎えた少年隊や、デビュー18年目の嵐など、活動期間が長い日本のアイドルたちと比べると際立っているわけではないが、“魔の5年ジンクス”と呼ばれる暗黙の鉄則がある韓国芸能界においては突出している。今や“長寿アイドル”の代表格とも言えるだろう。

ただ、その過程ではさまざまな試練があった。例えばユンホはかつて接着剤入りドリンクを飲まされ病院に搬送されたことがあるし、チャンミンは金浦空港でカバンで殴打され暴言を浴びたこともある。

いずれも“サセン(私生)”と呼ばれる悪質ファンたちの暴挙だが、注目を浴びるスターがゆえにさまざまな逆風にもさらされてきたのが東方神起である。

そんな逆風の中でももっとも有名なのが、2009年〜2010年に起きた脱退・分裂騒動だろう。

人気絶頂の中、キム・ジェジュン、パク・ユチョン、キム・ジュンスの3人がグループから脱退。3人は新たにJYJという名で活動するようになり、グループは分裂。東方神起は現在のユンホ&チャンミンのデュオグループとして再スタートを切った。

危機説を乗り越えたスーパーデュオ

この脱退・分裂騒動は韓国はもちろん、日本でもさまざまな余波を生み、東方神起と彼らを生み出した韓国最大手芸能事務所SMエンターテインメントにもさまざまな危機説が浮上したが、ふたりになっても東方神起の勢いは衰えなかった。

(参考記事:誕生秘話と苦難と栄光…東方神起とSMエンターテインメントの“光と影”)

それは日本での全国ツアー観客動員数を見てもわかる。

現在のユンホ&チャンミンのデュオになってから東方神起は、12年の初全国ツアーで55万人、5大ドームツアーと日産スタジアムでのライブもあった13年は85万人、全国9都市で29公演を開催した14年の全国ツアーの観客動員数は計60万人、入隊前の最後の日本5大ドームツアーで75万人の動員しており、合算すると4年間の日本単独ツアーで計275万人以上のファン動員したのだ。

東方神起がデュオになっても絶大な人気を誇っていることの証明になっていると言えるだろう。

では、なぜ、東方神起は今なお絶大な人気を誇っているのか。

「パフォーマンスが素晴らしい」「楽曲が良い」「マネージメントがしっかりしている」と、理由はいろいろあるだろうが、個人的に感じるのは、東方神起とファンたちの“確かな絆”にもあるのでないかと思う。

愛される秘密は、ファンとの絆にある

例えばファンたちがふたりの誕生日に贈るプレゼントだ。通常のファンはお気に入りのメンバーの誕生日にはモノや手紙をプレゼントするのだろうが、東方神起のファンはプレゼントではなく、「寄付」を贈るのだ。

それは、地元の光州に奨学金を贈ったり、児童養護施設で子供たちと触れ合ったりと、社会貢献活動を積極的に行っているユンホが一番喜ぶものをと、考えてのことだという。

韓国が生んだハリウッド俳優イ・ビョンホンも、日本のファンたちと“強くて美しい絆”で結ばれていることで有名だが、東方神起はまさにアイドルとファンという関係を超越し、互いに一人の人間として尊重し合い、その志や考えを共有しあっているのだ。

かつてとある男性K-POPグループのマネージメントを間近で手伝ったことがあるが、彼らは口では「東方神起のように日本でも頑張りたい」と語るものの、ファンはおろか日本スタッフたちともなかなか協調しようとはせず、結局は消えていった。

そういった残念な場面を何度も見てきただけに、東方神起の成熟ぶりが眩しく見える。年を重ねるごとにその表情も豊かなになり、クールな姿だけでなく意外な一面も見せるなど、人間的な魅力と味わいが深まっているように見えるくらいだ。

(参考記事:韓国カメラが撮った!!追い続けた!!スーパーデュオ「東方神起」成長の記録)

アラサーに突入。30代の壁を打ち破れるか

ただ、その東方神起もアラサーに突入。ユンホは31歳、チャンミンは29歳になった。 “アイドル”と呼ぶには少々年を取り過ぎていることは否めないし、そもそも韓国で30代を迎えたアイドルグループが大成功を収めている前例もない。

同じく長寿アイドルとされる“SHINHWA(神話)”や“SECHSKIES(ジェクスキス)”など活動を再開したグループもあるものの、全盛期のようなムーブメントは起こせていないというのが実情だ。「30代の壁」が韓国エンタメ界には存在するのだ。

そんな中で東方神起は今後、どんな活動を展開していくのだろうか。アーティストとしてはもちろん、役者としても一定の評価を得ているふたりだけに、今後はライブステージだけではなく、テレビや映画でも活動の場を広げていくに違いない。

兵役も無事に務め上げ、韓国では「K-POPアイドルたちのイジョンピョ(道しるべ)」(『スポーツ朝鮮』)、「カムバック東方神起にK-POPの至誠としての責任感、新しい30代に期待」(『ブリッジ経済』)ともされている。

新しいスタートを切るスーパ―デュオには、これまで以上に大きな関心が注がれることは間違いなさそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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