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AKB“結婚宣言”に動揺する日本のアイドル界と、すでに現役アイドルの結婚事例がある韓国との違い

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
AKB選抜総選挙開票イベントで結婚を発表した須藤凜々花(ペイレスイメージズ/アフロ)

先日行われた「第9回AKB選抜総選挙」の開票イベントで、NMB48のメンバー須藤凜々花が結婚を発表した。突然の結婚発表に対して、大きな波紋が広がっている。

関連報道によると、須藤は事実上の「解雇」が濃厚とのこと。周知の通り同グループには「恋愛禁止」というルールがあり、これまで恋愛スキャンダルで複数のメンバーが“ペナルティ”を科せられている。

その流れでいえば、解雇は当然のことかもしれない。ただ、一般の会社で結婚したからと解雇にすれば、大問題だろう。アイドルならではの特殊性や難しさが議論をさらに白熱化していると感じる。

韓国も注視する“結婚宣言”

日本を代表するアイドルグループの前代未聞の結婚発表だけに、お隣・韓国でも注目は高い。

(参考記事:「日本のファンは異常」AKB48総選挙での”結婚宣言”を見る韓国メディアとファンの視点

日本ではアイドルの恋愛に厳しい意見が飛ぶのが常だが、それは韓国でも同じ。少なくない韓国のアイドルが恋愛スキャンダルでバッシングや批判を浴びてきた。

日本でも知名度の高い少女時代は数年前、立て続けに熱愛が発覚して“恋愛時代”などと揶揄された。

テヨンとEXOベッキョン、ティファニーと2PMニックン、スヨンと俳優チャン・ギョンホ、ユナと俳優イ・スンギと、相手もビッグネームだったため記憶に新しい方もいるかもしれない。

少女時代だけでなく、今はなきKARAの元メンバー、ク・ハラもBEASTヨン・ジュンヒョンとの熱愛が発覚したことがあった。

韓国でもアイドルの恋愛はご法度。しかし…

熱愛が発覚した彼女たちに対して、ファンからは厳しい声が出るし、大きな話題になる。

韓国メディアもそれを承知の上でスクープ合戦を繰り広げており、毎年1月1日に熱愛スクープを連発する『ディスパッチ』は有名だ。

(参考記事:毎年元日に放たれる!! 韓国の“文春砲”ならぬ“ディスパッチ砲”の歴史

だが、熱愛が発覚して事務所から“ペナルティ”を受けたという話はとんと聞かない。それどころか、事務所が認めてしまうことが多い気がする。

前出の少女時代テヨンとEXOベッキョンは、SMエンターテインメントの先輩・後輩関係であったが、事務所も素直に交際を認めていた。

またKARAク・ハラのときも、所属事務所DSPメディアは交際を認めており、破局の際には公式報道資料を通じて、「2人はこれまで音楽業界の“公認カップル”として、多くのファンや大衆の関心のなか、美しい交際を続けてきた」などと振り返っていた。

韓国メディアによると、AKBグループに「恋愛禁止」というルールがあるように、韓国で絶大な存在感を誇る芸能事務所の“3大パワーカンパニー”にも恋愛に関するさまざまなルールがあるという。

例えば、BLACKPINKなどが所属するYGエンターテインメントでは「飲酒・喫煙・クラブ・運転・整形・恋愛」が6大禁止事項となっているが、同会長はとあるインタビューで「歌手の恋愛は個人的な選択であるため、所属事務所が介入できない部分」と話したことも。

最大手のSMエンターテインメントにいたっては、スキャンダルに対応するために「恋愛をするのであればむしろ社内恋愛をしたほうがいい」という立場とされている。

韓国にも現役アイドルが結婚したケースが!!

また、ワンダーガールズやMiss Aなどが所属するJYPエンターテインメントは、「デビューして3年間は恋愛禁止」だという。しかし、その後の恋愛は自由なのだとか。

事実、ワンダーガールズのとあるメンバーは、現役アイドルでありながら結婚している。当然ファンの動揺は大きく、またメンバー間では相当な葛藤や喧嘩があったらしい。

(参考記事:【画像あり】韓国にはすでにいた!! 現役でありながら電撃結婚したK-POP女性アイドルは?

芸能事務所としては、できるだけ恋愛はやめてほしいが「どうしようもない」というのが正直なところだろう。

それは、芸能事務所とアイドルがいくら「恋愛禁止」という契約を交わしても、現実的に法的な拘束力がないからと考えられる。

裁判所が「恋愛禁止」は無効と判決

韓国では実際に判決が下されたことがあった。

2012年8月、とある芸能事務所に所属していたデビュー前の練習生が「恋愛禁止」というルールを破って、恋愛していたことが発覚した。

事務所側は契約違反として練習生との契約の解消と損害賠償を要求する裁判を起こしたが、裁判所は恋愛禁止について、「該当条項は善良な風俗やその他社会秩序に違反した内容のため無効」という判決を下している。

韓国のアイドル練習生たちには10年経ってもデビューできない厳しい現実と“守らねばならない不文律”があるため、彼女がその後、デビューできたとは思えないが、法律的には恋愛禁止を強要することはできないのだ。

いずれにせよ、日本では珍しいケースだけに須藤凜々花の結婚発表は、今後も議論を巻き起こしていきそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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