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「日本の“働き方改革”が羨ましい」韓国サラリーマンたちの過酷な職場環境とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:アフロ)

「人手不足」がバブル期を上回る水準に達しているという。失業率も2.8%と低く、人材確保が企業側の大きな課題になっているそうだが、今こそ長時間労働の是正などの「働き方改革」を推し進めるチャンスとの声も見られる。

そんな日本をうらやんでいるのが、お隣・韓国だ。

「雇用が溢れる日本…求職者1人当たり雇用は1.48」と見出しを打った『中央日報』は、「求職者が有利な就業市場が作られながら、就業市場の質も上がっている」と伝えた。

また、関連記事を読んだ韓国ネット民たちも「見習うべきところは見習うべき」「日本の友人は良い会社を選んで転職している、うらやましい」などと書き込んでいる。

理由は単純明快だろう。韓国は日本以上に「働き方改革」が急務な状態とされているためだ。

日本以上の労働時間に「出勤休暇」「職場暮らし」の声

韓国労働社会研究所によると、2015年基準の韓国ビジネスパーソンの年間労働時間は2273時間になる。日本の労働時間が1719時間(OECDの統計)という点を踏まえると、いかに韓国の労働時間が長いかがわかるだろう。

「出勤休暇」「職場暮らし」「メッセンジャー監獄」といった新語が韓国サラリーマンたちの間で流行するのも仕方がない状況なのだ。

(参考記事:仕事漬けだった!? 韓国サラリーマンが選ぶ2016年の新語・流行語ベスト5

韓国の勤労基準法は、週当たりの最大労働時間を52時間(8時間×5日+延長12時間)と規定している。

しかし、韓国政府は土・日曜を「週」に含まない解釈をしており、各8時間の追加労働時間を許容している。そのため52時間+8時間(土曜)+8時間(日曜)の最大68時間まで勤労が可能ということになる。

日本と同じような韓国版「プレミアムフライデー」もあるが、ほとんど活用できる人がいないのが現状らしい。

労働時間が長いだけではない。韓国の時間当たりの労働生産性は29.9ドル(2013年)で、最高水準のルクセンブルク(69ドル)、ノルウェー(63.8ドル)の半分にも満たない。

つまり韓国のビジネスパーソンは、労働時間が長く、生産性の低い働き方をしていることになるわけだ。

新入社員の4人に1人が1年未満で退職

そんな韓国の労働条件の悪さを嘆いているのは、若い会社員たちだ。

韓国メディア『国民日報』によると、大卒新入社員の27.7%が1年未満で会社を辞めてしまうという。日本の大卒新入社員の1年以内の離職率が11.8%というデータがあるのだが、それと比べると異常な高さであることがわかる。

(参考記事:「薄汚いブタどもの習性だ!!」韓国の新入社員が受けた不条理すぎる“上司エピソード”

韓国の青年失業率はただでさえ11.2%(4月)と高い。就職自体が難しいにもかかわらず、4人に1人以上が1年未満で退職している現実は、翻って言えば仕事を続けられない(続けたくない)悪条件が蔓延っているということでもある。

自殺相談窓口の担当者が自殺

過労自殺の問題も、日本以上に深刻かもしれない。

そもそも韓国の自殺率が異様に高いことは周知の事実だろう。1993年は10万人当たり9.4人だったが、その後の20年間で28.1人まで急増している(韓国統計庁「死亡原因統計2012」)。

最近は「自殺予防相談窓口」の開設業務を行っていた担当者が自殺するという悲劇があったほどだ。

(参考記事:「自殺予防相談窓口」の担当者まで… 実は日本より深刻かもしれない韓国の過労自殺

「人手不足」や「働き方改革」が注目されている日本以上に、厳しい職場環境で働いている韓国のビジネスパーソンたち。新入社員たちが少しでも希望を持てる改革が求められている。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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