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「乱闘騒ぎ」に「全滅」。なぜKリーグは見苦しく恥ずかしい「醜態」ばかりを晒すのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
浦和戦では屈辱の逆転負けで乱闘騒ぎまで起こした(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の決勝トーナメント1回戦で対戦したJリーグの浦和レッズとKリーグの済州(チェジュ)ユナイテッド。試合は2試合合計3-2とした浦和に軍配が上がり、浦和が準々決勝に駒を進めることになったが、試合後の乱闘騒ぎのほうが波紋を呼んでいる。

「国際的な恥だった」と韓国メディア

試合中の乱闘騒ぎもさることながら、試合後も済州ユナイテッドの一部選手たちが浦和の選手を追い回すシーンがそれだ。韓国メディアもこのことには触れており、一部のメディアには「済州、見苦しい敗北」(『ソウル新聞』)、「国際的恥」(『SPORTSQ』)とも報じているが、改めて映像を確認すると後味が悪かったどころか、猛烈に恥ずかしく、虚しさと憤りがこみ上げてきたほどである。

(参考記事:「前代未聞の暴挙」「国際的な恥」ACL浦和対済州の乱闘劇を韓国はどう報じたのか)

今回の試合に対する韓国側の状況を説明すると、済州には大きな期待が寄せられていた。今季ACLでグループリーグ突破を果たしたのは済州だけであったし、5月24日に行われた第1戦では大方の予想に反して済州が2-0で勝利した。

韓国でACLは『JTBC3 FOX SPORT』で独占中継されており、その局内の看板アナウンサーで別名“サッカー女神”と呼ばれる人気女子アナのイ・ユギョンも、『ACL通信』という連載コラムで第1戦の様子をこんなふうにリポートしていた。

「すっきりした攻撃サッカーを見せてくれることを期待しましょう。Kリーグの新しい希望となった済州ユナイテッド、ファイティング!」

ただ、済州が見せたのは“すっきりした攻撃サッカー”ならぬ“後味の悪い乱闘騒ぎ”だったのだから幻滅してしまう。済州ユナイテッドのチョ・ソンファン監督は韓国メディアの取材に対して「勝者にもマナーを」と強調したが、弁明どころか厚顔無恥のように思えて残念で仕方がない。

(参考記事:“エルボー乱闘”済州ユナイテッドのチョ・ソンファン監督は韓国メディアに何を語ったか)

過去には“テーピング放り投げ行為”も起こし…

同じような蛮行が昨年にもあった。昨年のACLで浦和レッズと対戦した浦項スティーラーズのキャプテンであるキム・グァンソクが“テーピング投げ捨て事件”を起こしている。

キム・グァンソクは「浦和を挑発する意図はなく、むしろ自分のチームメイトに見せつけるための行動だった」と語って挑発行為ではなかったと否定し、韓国メディアも「文化の違い」としてあまり問題視しなかったが、今回の騒動は到底見過ごすことができない。

ピッチに乱入して浦和の選手にエルボーを見舞ったり、試合終了したにもかかわらず浦和の選手たちにペットボトルを投げつけたり、槙野智章を執拗に追いかけ回した済州の選手たちには、しかるべきて適切な処罰が下されるべきだと思う。

Kリーグも怒りを調節できない!?

それにしてもなぜKリーグ勢は、ACLでこうも醜態ばかりを晒すことになってしまったのだろうか。韓国では最近、“怒り調節障害”という病の深刻さがしばし話題になるが、それも関係しているのだろうか。

韓国精神健康学会の調査によると、成人男女の半数以上が感情をうまくコントロールできない“怒り調節障害”を患っており、10人に1人は専門的な治療が必要な状態というが、そうした韓国人のメンタルヘルスの悪化がKリーグにも悪影響を及ぼしているわけではあるまい。

(参考記事:韓国成人の半数以上がかかる“怒り調節障害”が起こしてきた事件の数々)

結果がすべてを物語っている。蔚山現代、FCソウル、水原三星が早々とグループリーグで姿を消し、唯一の望みだった済州ユナイテッドさえも屈辱的な逆転負けに加え恥ずべき行為で今季ACLから姿を消すことになったのだ。現実をしっかり見つめ、猛省することが、Kリーグに今、何よりも求められていることでもあるだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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