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女性が女性を叩くケースも…「江南通り魔事件」から1年で深刻化する韓国の“女性嫌悪”

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
江南通り魔事件の現場周辺(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

今から1年前、韓国はソウル江南駅近くの男女共用トイレで、当時23歳の女性がなんら面識のない男性に突然殺害されるという驚愕の事件があった。「江南通り魔事件」だ。

「江南通り魔事件」は、捕まった犯人が「女性を狙った」といった主旨の発言をしていたことから、“女性嫌悪”による事件と報道直後から韓国社会の注目を集めた。

(参考記事:“女性嫌悪”が招いた最悪の通り魔殺人事件、その残酷すぎる犯行手口とは)

事件から1年、女性団体らの訴え

事件からちょうど1年にあたる5月17日正午、ソウル世宗文化会館では女性団体たちの連帯記者会見が開かれている。

韓国メディアの報道によると、参加した女性たちは自らを「偶然生き残った者」と規定していたという。もし自分が1年前のあの時間、あの場所にいたら殺されていたかもしれないという意味だろう。

連帯記者会見では、同事件は「犯行の本質が女性に対する差別と暴力だった」と指摘。「女性への暴力と殺害は日常に蔓延した女性嫌悪と差別に起因する」と訴えた。

“女性観光客にとって危ない国”とも

そもそも韓国の女性嫌悪はネット上から広がったとの見方が強い。ネット上で韓国人女性を揶揄する「キムチ女」といったキーワードが生まれ、その傾向が現実社会にも流れていったということだ。

最近では、韓国人女性だけでなく観光で訪れた外国人女性たちが嫌悪の対象になっているとの指摘も尽きない。オーストラリアでは、「女性観光客にとって危ない国ランキング」のトップに、インドを追い抜いて韓国の名前が挙がるようになったそうだ。

そんな女性嫌悪の最たる例とされる「江南通り魔事件」がもたらした影響は大きい。

『韓国日報』が「程度の違いはあるが、多くの異性カップルが江南通り魔事件の余波で論争に突入し、一部は破局にまで発展した」と解説しているように、韓国における男女間の葛藤はより深刻化したと考えられる。

ただ最近の傾向として顕著なのは、「女性嫌悪者だ」と叩かれる対象に女性も含まれるようになったことかもしれない。

「男性を性犯罪者にする」と叩かれた女性CEO

自社商品を着用して宣伝する女性CEOに対して、「このような写真が女性を被害者に作っている」「男性を性犯罪者にする」といった非難コメントが相次いだのは、顕著な例だろう。

実際に彼女がSNSに上げる写真は大胆なものが多いのだが、その写真を見た女性たちが激怒するという構図だ。

(参考記事:男性誌のグラビアを飾り、反論コメントも切れ味抜群。“セクシーすぎるCEO”イ・フィウンが話題!!

その女性CEOは「女性嫌悪者だ」との女性からの批判に、「外に出て男性と会ってきなさい」などと切れ味抜群のコメントで反論したが、そうはできない人のほうが多いかもしれない。

日本人女性作家への中傷コメント

また、日本人女性のウェブトゥーン作家が女性コミュニティから叩かれた例もある。

その作家は『寿司女・キムチ男』というタイトルで、韓国人夫との結婚生活をテーマにした作品を発表した。しかし、第2話の「割り勘」が掲載された以降、彼女は誹謗中傷を浴びせられるようになる。

「日本女性の従順さは精神病レベル」「日本の女は奴隷みたい」「男に媚びながら売春婦のように生きている」といった中傷コメントが寄せられたのだ。連載は結局、無期限中止となってしまった。

(参考記事:韓国で広がるフェミニズムに待ったをかけた日本人女性ウェブトゥーン作家の悲劇

「江南通り魔事件」によって“女性嫌悪”がさらにイシュー化し、最近は女性が女性を叩くケースも見られるようになった韓国。今後も女性嫌悪をめぐる問題は複雑化していくのかもしれない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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