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半年遅れの『ポケモンGO』でも日本コンテンツに熱狂せざるを得ない韓国の事情

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

遅まきながら、韓国で『ポケモンGO』が正式リリースされた。

アプリ分析会社のワイズアプリが1月25日に発表した調査結果によると、リリース日(1月24日)だけで283万人がダウンロードしたという。

韓国で大ヒットとされるゲームは初日のダウンロード数が100万ほどというだけに、3倍近い数字を叩き出していることになる。“半年遅れ”でもポケモン人気は健在のようだ。

そもそも韓国では、正式にリリースされる前から『ポケモンGO』に対する注目は高かった。

なぜか韓国のごく一部の地域でポケモンが出現し、SNSを通じて「あそこに行けばプレーできる」との噂が拡散。実際にソウルからバスで2時間半の距離にある江原道・束草(ソクチョ)市には、韓国各地から『ポケモンGO』プレーヤーが殺到し、“ポケモン名所”として脚光を浴びたほど。美女フィットネス・タレントのイェ・ジョンファをはじめ、数多くの芸能人も同地を訪れている。

そんな束草市は長年、観光客の誘致に悩んでいたそうだが、「ポケモンの聖地にようこそ」というプラカードを掲げるなど積極的にゲームを宣伝。市長がポケモンのキャラクターに扮するなどして盛り上げた。

同市に限らず、多くの地域や企業が“『ポケモンGO』マーケティング”を展開。あまりに過熱したため、『朝鮮日報』が「誰でも『ポケモンGO』マーケティング、“著作権爆弾”爆発するか」と警鐘を鳴らすほどだった。

(参考記事:『ポケモンGO』人気に便乗する韓国の“著作権無視”が深刻レベル

今後の動向を見守る必要はあるが、今回の『ポケモンGO』の正式リリースによって、韓国における日本コンテンツの人気の高さが再び証明されたことになったことだけは間違いないだろう。

最近の日韓は慰安婦問題や領土問題で関係が冷え込んでいるように思えるが、韓国人は相も変わらず日本コンテンツに熱狂している。

それはつい先日、映画『君の名は。』が観客動員数300万人を突破し、韓国で公開された日本アニメ映画として過去最高記録を更新中であることを見てもわかるだろう。

もちろん『キャプテン翼』のように意外な日本色が足かせとなり拒絶されたコンテンツもあるが、少なくない韓国人は自国のコンテンツを見限って日本コンテンツに走っている。

(参考記事:『スラムダンク』は今でも人気で『キャプテン翼』は拒絶されたワケ

それは、単純に自国コンテンツの質が低いからだ。

『ポケモンGO』が世界的なヒットとなっていた時期、「なぜ韓国では『ポケモンGO』のようなゲームは作れないのか」が声高に叫ばれていた。

その一方で、韓国の人気アニメ『ポンポン・ポロロ』を活用せよとの声が上がり、『ポロロGO』の開発も噂されたりもした。そういった発想では、『ポケモンGO』のように世界的にヒットして愛されるコンテンツを作ることは不可能ではないだろうか。

(参考記事:韓国が「死んで蘇っても我が国では『ポケモンGO』を作れない」と嘆いている理由

いずれにせよ、半年遅れながら正式リリースされ、韓国で再び大きな注目を集めている『ポケモンGO』。日本コンテンツが再び韓国を熱狂させるのか、注目したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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