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イ・ボミ、キム・ハヌルら韓国美女ゴルファーたちはなぜ“日本”で強いのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
今季は2年目キム・ハヌルの躍進も目立った(写真提供:KLPGA)

女子ゴルフツアーは2016年も韓国旋風に沸いた一年だった。

5勝を挙げたイ・ボミが2年連続の賞金女王に輝いただけではなく、シン・ジエが3勝で賞金ランク2位、キム・ハヌル、チョン・ミジョン、アン・ソンジュ、李知姫がそれぞれ2勝を挙げ、カン・スヨンも1勝をマーク。女子ツアーは今季37試合が行われたが、そのうち17勝が韓国人選手によるもので、賞金ランキング上位10位内も6人が韓国人選手となった。

こうした状況に韓国メディアも注目。「日本女子ゴルフ、今年も韓国選手たちのお祭りに」(『スポーツ朝鮮』)、「日本の舞台を制圧したテグッナンジャ軍団、17勝+各種タイトル席巻」(『newsis』)と報じている。

ちなみにテグッナンジャを漢字で書くと「太極娘子」となる。日本でいう「大和撫子」ような位置付けの言葉だが、今季の韓国勢の特長として注目したいのは “韓国女子ゴルフ界の黄金世代”の躍進が目立ったことだろう。韓国のゴルフメディア『マニア・リポート』も、「イ・ボミ-シン・ジエ-キム・ハヌル、2016年日本を接収した“88年生まれトリオ”」として、彼女たちの特集記事を組んでいる。

3人に関しては今週12月15日に発売される拙著『イ・ボミはなぜ強い? 知られざる女王たちの素顔』(光文社新書)でも取り上げているが、かつて韓国でしのぎを削り合った同級生たちは、日本で切磋琢磨する日々を楽しんでいる。本の取材でシン・ジエも言っていた。

「学生時代とはまた違った感覚があります。学生時代はそれこそゴルフの勝ち負けだけを競っていましたが、今では互いに成人し、さまざまな経験も重ねた。ときたま会って食事しながら、ゴルフはもちろん、ゴルフ以外のことも話し合う仲です」

(参考記事:韓国美女ゴルファーたちに聞いた!! 日本から離れられないワケ

それにしても、なぜ3人は揃って日本でも強いのか。その理由はいろいろ考えられるが、韓国メディア『韓国日報』は、「女子ゴルフの“機会の場”となっているJLPGA、一体なぜ?」という特集記事の中でこう分析している。

「飛距離が出る長打者はアメリカLPGAで頭角を現すが、ショートゲームに長所がある選手はJPGAでこそ有利な面がある。これは、精巧さを要求される日本女子ゴルフとは無関係ではないだろう」(『韓国日報』記事の要約翻訳)

つまり、ボールの飛距離やパワーで勝負するよりも、正確な技術と多彩な技があるからこそ韓国人選手は日本でも強いと分析しているのだ。3人をよく知るゴルフ記者も言っている。

「韓国の選手はショートゲームが上手い。ショートゲームが上手いということは、アプローチやパッティングが上手いということ。アメリカの選手に比べると、日本と韓国の選手は飛距離が出せません。そこは同じでしょう。それでも日韓の選手で差が出ているのであれば、それはパッティングの差だといえます」

(参考記事:女子ゴルファーたちが見て、感じて、語った!! 日韓女子ゴルフ比較

注目すべきは、こうした強さを備えた韓国人選手が今後も続々と日本にやってくる可能性が高いことだ。

韓国で“元祖美女ゴルファーの代名詞”とされるユン・チェヨンや、“韓国女子ゴルフ界のセクシークイーン”と呼ばれるアン・シネなどは日本ツアーのファイナルQTを受験し、ユン・チェヨンは5位、アン・シネは45位に入った。“韓国美女ゴルファー神セブン”にも名を連ねる2人とも、来季の日本ツアー参戦がほぼ濃厚な状況なのだ。

もっとも、そんな韓国勢の躍進にそろそろ日本勢もストップをかけたいところだろう。実際、日本人選手たちの中には「日本のツアーなので韓国選手の優勝は止めないといけない」と危機感を抱いている者もいるという。

(参考記事:日本の女子ゴルファーたちが明かした、韓国人選手たちとの“違い”

個人競技であるゴルフを日韓と国で区別する必要はないが、日本ツアー全体が盛り上がるためには、やはり日本人選手の優勝が不可欠だし、強い日本人選手がいてこそ盛り上がる。

来季は韓国勢の活躍だけでなく、日本勢の巻き返しと躍進を大いに期待したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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