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アイドルたちは盛り上がり保護者は困窮する、韓国のハロウィン狂騒曲

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
昨年の韓国でのハロウィン・パレードの様子(写真:ロイター/アフロ)

10月31日のハロウィン・デーを迎えることで、この週末は各地で仮装イベントが行われたり、コスプレ行列などで賑わっているのではないだろうか。

日本同様に韓国でも近年、ハロウィンが季節イベントして定着している。その人気に火をつけたのは、K-POPアイドルや芸能人たちだが、今年も多くの芸能人たちが早くも仮装姿を自身のSNSなどにアップしている。

(参考記事:東方神起に少女時代も!! K-POPアイドルたちのハロウィン仮装一挙紹介)

人気ガールズグループAOAのソリョンなどはキャットウーマン姿をSNSにアップして早速、その写真が多数の韓国メディアで記事になった。ソリョンはそれまで韓国になかった「セクシーなのにかわいい」路線で“2016年最高のCMクイーン”に上り詰めたもっとも旬なアイドルなだけに、韓国メディアも注目していたのだろう。韓国もハロウィン・デー本番前から大盛り上がりだ。

だが、ハロウィンが盛り上がれば盛り上がるほど、頭を抱えている人たちもいるという。

例えば幼い子を育てる保護者たちだ。韓国ではハロウィン熱が子供たちの間にも広がり、幼稚園やちびっこ英会話教室などでも仮装イベントを行なうところが増えているが、子供たちの仮装欲求が年々エスカレートしていて、その出費が膨らんでいるというのだ。

「ハロウィンのせいで全国の幼稚園が騒がしい」と報じた韓国メディア『WIKITREE』によると、最近の韓国の幼稚園児たちはハロウィンになると、それぞれ人とは違ったキャラクターに扮しようと競い合い、親に衣装を強請るらしい。保護者たちもわが子可愛さにかなりの額のお金を使うという。

近年、韓国ではそれまで“オドック(韓国のオタク)たちのものと思われていたコスプレが徐々に一般にも広がっているが、ネット上にアップされているコスプレイヤーを参考にする保護者までいるというのだ。

(参考記事:ルフィや『飢狼伝説』の不知火舞まで!! 韓国の最新コスプレ事情)

韓国の祝日も名節もまだわからない5〜6歳の子供が、海外のお祭りであるハロウィンの意味もわからず、流行だけを追って仮装する。子供可愛さに、年に一度しか着ないどころか、翌年には去年着たという理由だけで袖を通すこともない衣装のために数十万ウォン(数万円)を使う保護者までいる。ハロウィンは子供や保護者たちに、“目に見えない競争”を強いているだけだと指摘するメディアも多いのだ。

また、ハロウィンそのものを否定する意見もある。以前、本欄でも紹介した韓国の就職サイトが大学生180人を対象に実施した「ハロウィンの楽しみ方」アンケート調査だ。10人に3.5人が「ハロウィンを楽しみしている」と答えたことは紹介したが、裏返せば6.5人がハロウィンにさほど関心を示していないことでもある。

実際、このアンケート調査でも64.4%が「ハロウィンを楽しまないだろう」と答えたという。そのうち31%の大学生が「ホワイトデーのような商業性の強いイベントだから」と答え、27.6%が「外国の文化を真似て追随しているだけだから」と答えている。

韓国では昨今、自国を“ヘル朝鮮”と揶揄する若者たちが増えているが、彼らからすると、ハロウィンは“主義も意義もない能天気なバカ騒ぎ”にしか映らないのかもしれない。

(参考記事:自国を“ヘル朝鮮”と揶揄する韓国の若者たち…彼らはなぜ絶望しているのか)

いずれにしてもこの週末は、ソウルの“六本木”とも言える梨泰院(イテウォン)や、大学キャンパスが多く流行発信地とも言われる新村(シンチョン)、弘益(ホンイク)大学周辺などでも、日本と同じような光景が韓国でも見られるだろう。

韓国メディアの報道によると、昨年のハロウィンでは梨泰院の街並みが通常よりも30%多い18万人以上(警察発表)の人々で埋め尽くされたほどの熱気で盛り上がったが、その陰で喧嘩や泥酔、騒音苦情やゴミの不法投棄など、トラブルも絶えなかったという。

ハロウィンが大衆化することで、日本も韓国も同じような問題や指摘が起きているが、誰もが気持ちよく「ハッピーハロウィン!!」と言い合える一日になることを願うばかりだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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