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安倍マリオやドラには沸いても、キャプテン翼とポケモン不在には違和感抱く韓国の事情

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
リオ五輪の閉会式にサプライズ登場した安倍首相(写真:ロイター/アフロ)

17日間にわたって熱戦が繰り広げられたリオデジャネイロ五輪。韓国は金9、銀3、銅9のメダルを獲得し、総合ランキングは8位を記録した。大会前に掲げていた “10-10”(金メダル10個、ランキング10位以内)という目標には金メダルが1個足りなかったが、総合ランキング10位以内は2004年アテネ五輪から連続4回目となるだけに、「スポーツ強国としての自尊心(=プライド)は守った」(国営放送KBS)と伝えている。

ただ、“孝子(ヒョジャ)種目”として期待されるも金メダルゼロに終わった柔道、卓球、バトミントン、レスリングなど、不振の原因や課題を分析するメディアも多い。

そんな中で目を引くのが「崩れた10-10、そして日本の逆襲」(『スポーツ朝鮮』)、「“基礎をしっかり”日本が韓国スポーツに投げたメッセージ」(『デイリーアン』)など、躍進著しかった日本選手団との比較だ。ネット上ではかなり辛辣な声まで上がった。

(参考記事:「日本の逆襲が始まった」「韓国は情けない」日本のリオ五輪大躍進を羨望する韓国メディアとネチズンたち

言うまでもなく韓国は何かと日本を意識しがちだ。特にスポーツになると、日本との比較は避けられない。以前取材した大韓体育会の幹部も、「80年代までの韓国は、とにかく北朝鮮や日本に対して優位を示すことだけに注力してスポーツを強化していました」と言っていたが、そんな競争意識は今もある。

リオ五輪ではその日本の躍進を見せつけられただけに、少なからずショックも隠せない。「このままだと、2020年東京五輪ではもっと差をつけられるかもしれない」というメディアもあったほどだ。

韓国が驚いたのは、日本のスポーツ力だけではない。リオ五輪の閉会式で披露された2020年東京オリンピックのPRも話題だ。サプライズ登場した安倍首相も話題になっているが、韓国メディアやネット住民たちが感嘆を隠せないのは、PRで流された映像にあったようだ。

スーパーマリオ、ハローキティ、パックマン。いずれも韓国でも人気のキャラクターばかりだったのだからそれも当然かもしれない。

特にドラえもんは最近、韓国でもブームにあり、プロ野球のロッテ・ジャイアンツがドラえもんバージョン・ユニホームを着用しているほど。これら日本発祥のキャラクターたちは、韓国スポーツ界でも活躍しているので、馴染みがあって親近感もある。

ただ、日本が生んだ名作サッカー漫画『キャプテン翼』の登場に関してはあまり話題にならなかった。それは韓国で『キャプテン翼』の認知度がかなり低いせいとも無関係ではないだろう。

(参考記事:『スラムダンク』は今でも人気で『キャプテン翼』は拒絶されたワケ

日本では世界的にも知られている『キャプテン翼』の登場に違和感を感じる人は少なかったと思うが、韓国では『キャプテン翼』が何かもわからない人が意外と多いのだ。

むしろ韓国のメディアやネット住民たちが疑問を抱いたのは、『ポケットモンスター』が登場しなかったことだ。今や世界的なヒットを記録している『ポケモンGO』の大成功を考えれば、『ポケモン』の起用は当然ではないかという意見である。

韓国ではいまだに『ポケモンGO』が未配信だが、オドックやキダルト族の間では熱狂的な『ポケモン』信者が多い。『ポケモンGO』の成功を目の当たりにしたメディアの中には、「ウリナラ(我が国)が死んで蘇っても『ポケモンGO』を作れない理由」と題した自虐的な記事したところもあったほどなのだ。

そんな韓国からすると2020年東京オリンピックのPRに『ポケモン』の姿がなかったことは残念だったかもしれないが、筆者の旧知の記者はこう語って日本への賛辞を惜しまなかった。

「今回のリオ五輪ではいろんな意味で日本がもっとも印象的だった。あらゆる競技種目で日本のスポーツのチカラを見せ付けられたし、閉会式では日本の文化コンテンツのチカラを見せ付けられた。韓国が学ばなければいけないことは多いよ」

そして、2年後に韓国の平昌(ピョンチャン)で行われる冬季五輪について予想してみた。

メダル数はともかく、韓国発の世界に通用する文化コンテンツは……。浮かび上がった候補は、『江南スタイル』のPSY、オペラ歌手のスミ・ジョー、韓流ドラマにK-POPぐらいだった。聖火点灯ではフィギュアスケートのキム・ヨナという大本命がすぐに出たが、全世界に知られ愛されているコンテンツの候補は限られてくる。競技面でもコンテンツ面でも、韓国はまだまだ開発が必要かもしれない。

(参考記事:「悔しいけど認めざるを得ない。日本コンテンツ力」と韓国も絶賛し嫉妬する東京五輪プレゼンテーション

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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