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美少女から大人の女性へと成長した韓国新体操界の“妖精”ソン・ヨンジェ最後の挑戦

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
リオ五輪を最後のオリンピックと位置づけ挑むソン・ヨンジェ(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

リオデジャネイロ五輪に吹き荒れる“なでしこ旋風”が目覚しい。競泳、柔道、卓球、バドミントンにレスリングと、いつになく女性アスリートたちの活躍が目立つが、韓国のほうは期待された女子アスリートの活躍が今ひとつ盛り上がらない。

“美女剣客”キム・ジャヨンや“ママさん騎士”ナム・ヒョニら美女フェンサーを擁した女子フェンシング、“卓球美女”ソ・ヒョウォンが引っ張った女子卓球はノーメダルに終わった。韓国柔道初の金メダルを期待されたキム・ジャンディも準々決勝で姿を消している。女子バレーボールはもちろん、伝統的に強かった女子ハンドボールや女子ホッケーもメダルには届かなかった。

(参考記事:リオ五輪開幕! 韓国にもいた!! 美女アスリート厳選ベストイレブンは誰だ!?

もちろん、期待通りの活躍を見せた選手もいる。アーチェリー女子個人で金メダルに輝いた“美人弓士”チャン・ヘジン、そのチャン・ヘジンに連覇を阻まれたものの個人・銀と団体連覇に貢献した色白美肌“神の弓”、テコンドー女子49級で優勝した “美脚の足蹴りクイーン”キム・ソイなどがそうだ。

ただ、大会前は“太極娘子(テグッナンジャ)”と期待されていた韓国女性アスリートたちだけに、リオで続く苦戦に落胆を隠せない。

そんな中で最後の望みとなっている美女アスリートが、新体操のソン・ヨンジェだ。その美しさから韓国では“妖精”と呼ばれ、愛くるしいルックスから“国民の妹”とも言われる人気者は、8月16日のリオデジャネイロ入りから各種メディアで大きく取り上げられている。

『スポーツ・ソウル』などは選手村での様子まで、グラビア特集にしていた。過去にも多くのメディアがソン・ヨンジェのさまざまな表情を捉えようと特集を組んできたが、リオでもその流れは変わらないようだ。

(参考記事:“新体操の妖精”ソン・ヨンジェの名場面・珍場面・胸キュン場面ベスト32

ただ、それも無理はないかもしれない。というのも昨年末、ソン・ヨンジェはこんなことを言って韓国メディアを騒然とさせいる。

「最後になるオリンピックだけに後悔なく最善を尽くして準備して大会を迎えたい」

ソン・ヨンジェは今回のリオ五輪をも、自身最後のオリンピックと位置づけているのだ。

思えばソン・ヨンジェの登場は、韓国スポーツ界にとって画期的だった。それまで“新体操不毛の地”と言われていた韓国に、彼女が突如として登場したのが2010年広州アジア大会。その前のモスクワ・グランプリでシニア・デビューし、アジア大会ではいきなり個人3位に輝いて一躍、スターとなった。

多くの企業のイメージモデルに起用されテレビCMにも多数出演。また、フィギュアスケートのアイスショーのように自身の名を冠した新体操の有料ショーを定期的に開催するなど、新体操をエンターテインメントにしてしまったのだ。

彼女の成長過程とともに、韓国では新体操への認知と理解が広く深く浸透したと言われているほどで、ソン・ヨンジェ自身も少女から大人の女性へと変貌を遂げてきただけに、リオ五輪が最後のオリンピックになることを惜しむ声も多い。

(参考記事:少女から妖艶な美女へ!! 韓国カメラマンが追い続けた新体操ソン・ヨンジェの成長の記録

と同時に、最後のオリンピックだけに待望のメダルを期待する声も多い。前回2012年ロンドン五輪では新体操・個人では韓国人初の決勝進出を果たし5位入賞したが、メダルには届かなかった。リオ五輪でメダル獲得できれば、何かと因縁多きフィギュアスケートの女王キム・ヨナとの比較もなくなるだろうし、何よりも韓国初はもちろん、新体操・個人ではアジア初となるだけに大快挙になるはずだ。

『聯合ニュース』などは「ソン・ヨンジェ、リオでメダルを獲ればアジアの金字塔」とまで期待を寄せている。

はたして、ソン・ヨンジェはその期待に応え、最後のオリンピックと位置づけているリオでどんな演技を披露するだろうか。伝統的に新体操が強いロシアや東欧勢のライバルたちに一歩も引けをとらない、美しくしなやかな東洋の “美”を表現して、アジアの快挙を期待したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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