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韓国国会議員の竹島上陸計画がリオ五輪の韓国選手たちに飛び火する危険性

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
4年前は現職のイ・ミョンバク大統領が上陸して日韓がぎくしゃくした(写真:The Blue House/ロイター/アフロ)

複数の韓国メディアの情報によると、韓国の国会議員たちが8月15日に独島=竹島への上陸を計画しているらしい。8月15日は韓国では光復節と呼ばれているが、それを記念して社団法人『独島サラン運動本部』が主催するイベントに参加するというのだ。

参加者は与党と野党の垣根を超えた議員たちで、団長を務めるのは与党セヌリ党のナ・ギョンウォン議員だという。ナ・ギョンウォン議員と言えば、韓国では「選挙の恋人」「韓国政界のマドンナ」と言われる女性議員だが、そんな人気議員が「わざわざなぜこのタイミングで」と勘繰りたくなる。

(参考記事:黒木瞳にそっくり!? 韓国で“選挙の恋人”と呼ばれる美しすぎる議員ナ・ギョンウォン)

思い出すのはちょうど4年前。ロンドン五輪のときだ。イ・ミョンバク大統領が突如、あの島への上陸を敢行し、日韓の間で大きな葛藤が生まれただけではなく、オリンピックにまで飛び火した。

日本と韓国か対決することになった男子サッカーの3位決定戦で、勝利した韓国のパク・ジョンウが歓喜に任せて「独島は我々の領土」と韓国語で書かれたメッセージボードを掲げたのだ。

オリンピックは政治的事項に関わる広報活動を一切禁じており、パク・ジョンウの行動は当然のごとく世界的に波紋を呼んだ。韓国にとっては、“サッカー史上初のオリンピック銅メダル”の快挙よりも、彼の問題行動のほうが浮き彫りにされた残念な結果となってしまった。それだけに韓国の国会議員たちの上陸計画のニュースを聞いて、あの当時の複雑な気持ちが蘇ってきたのは私だけではないと思う。

(参考記事:2012ロンドン五輪をプレイバック!! 韓国選手たちの事件簿~不正・問題編)

誤解を恐れずに言えば、韓国の一部の選手たちはときに、愛国心を履き違えてしまうことが多々ある。パク・ジョンウのメッセージボード・パフォーマンスだけではなく、第1回WBCでマウンドに太極旗を立てたこともあった。

その度が過ぎたパフォーマンスは世界に向けたものというよりも、国内に向けたアピールという側面が強い。国民に支持されたいと思うがゆえに軽率な行動に走ってしまうときがあるし、その行動をよしとする韓国の風潮にも責任の一端があると思うが、一部の政治家たちの愛国パフォーマンスがいたずらに彼らを扇動してしまうこともまた、事実だ。

あの島からはるか遠く離れたブラジル・リオデジャネイロでは、日本と韓国の選手たちがそれぞれの青春や人生をかけてそれこそ必死で戦っている。オリンピックの舞台で日韓はさまざまな名勝負を演じてきただけに、リオ五輪でも今後予定されているさまざまな種目で、日韓対決もあるかもしれない。

(参考記事:柔道、マラソン、サッカー、バレー。死闘と遺恨と因縁の日韓オリンピック激闘史)

日韓を問わず、政治家たちのパフォーマンスがその挑戦に水を差したり、いたずらに互いの国民感情を刺激して4年前と同じようなぎくしゃくムードを扇動するようなことだけは、どうか勘弁してほしい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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