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韓国発!大逆転のリオ五輪出場目指すイ・ボミの前に立ちはだかるライバルたち

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
韓国のスポーツ新聞でも全米女子オープンが特集されていた。

ソウルに来ている。取材で韓国女子プロゴルフ協会を訪ねてきたが、関係者たちとの雑談で話題になるのは現地時間で7月7日から開幕する米ツアーのメジャー第3戦『全米女子オープン』のことばかり。会議室に置いてあった無数の新聞に目を通しても、「リオ行きへの最後の試験…韓国女子たちの“背水の陣”」(『世界日報』、「リオ五輪に向けた最後の関門、US女子オープンで誰が笑うか」(『スポーツ京郷』など、女子ゴルフの話題が大きく取り上げられていた。「リオのグリーンに誰が立つか…最後のショット対決」の大見出しをつけた『スポーツ・ソウル』は1面を使って女子ゴルフの特集を組んでいるほどだ。

ここにきて目を引くのはイ・ボミの特集記事である。著名なコラムニストも「ボミの父の夢、娘の約束」というコラムを掲載。イ・ボミが五輪にこだわるワケを彼女と亡き父とのエピソードで綴っている。ジカ熱などで出場辞退者が相次ぐ中で、それでも五輪出場にこだわるイ・ボミの心境を見事に代弁していて泣けた。

(参考記事:イ・ボミがリオ五輪出場に強くこだわる、たった1つの理由

もっとも、イ・ボミが夢を実現させるためには、追い抜かなければならないライバルたちは多い。というのも、これまでも何度か紹介してきたが、韓国のリオ五輪・女子ゴルフの出場枠は4枚。世界ランク上位4名に与えられることになり、7月4日に発表された最新の世界ランキングによると、3位パク・インビ、5位キム・セヨン、6位チョン・インジ、9位ヤン・ヒヨンがその当該選手となる(イ・ボミは14位)。

ただ、可能性はゼロではない。メジャー大会優勝となれば一気にランキングが上昇するのは確実で、11位ユ・ソヨン、10位ジャン・ハナと現時点で先を行くライバルたちを追い抜くことも可能だろう。しかも、ここにきて大本命のパク・インビが左手のケガでリオ五輪辞退を示唆。絶対強者の出場が不透明になったことで、ギリギリ4枠に滑り込める可能性も出てきたのだ。

とはいえ、先を行くライバルたちは手強い。例えばチョン・インジだ。昨年の優勝者で今大会にはディフェンディングチャンピオンとして出場する彼女は、「“タイトル防衛戦”となるチョン・インジ、“好奇心を刺激にするには十分”」(『マニアリポート』)と題された記事の中で、「やり甲斐があるコース」と語って自信を覗かせている。さすが肝っ玉が据わった現役女子大生プロゴルファーである。

(参考記事:日米韓のメジャー大会を制した“若き女王”は現役女子大生だった!!) 

昨年の米国ツアー新人王で今年の「JTBCファウンダーズ・カップ」を制したキム・セヨンの別名は“逆転の女王”。韓国メディアも「長打者だけに優勝のチャンスもある」としている。

(参考記事:米国女子ツアー新人王のキム・セヨンが“逆転の女王”と呼ばれる理由

ちなみに逆転を狙っている位置にいるのは、イ・ボミだけじゃない。“勝率10割の新星”パク・ソンヒョン(世界ランク18位)、“ゴルフ神童”キム・ヒョージュ(19位)、23歳でLPGA賞金女王に輝き、2012年には全米女子オープンも制してしているチェ・ナヨン(20位)も一発大逆転のチャンスがある。まさに韓国女子プロゴルフ界にとって今年の全米女子オープンは、メジャー大会以上の意味合いを持つ大一番でもあるのだ。

それだけに冒頭でも紹介したとおり、KLPGA関係者の間でも全米女子オープンの話題で持ち切りだった。2枠しかない日本からすると4枠もある韓国が羨ましく思えたが、「6枠でも足りない」と語る関係者もいたほどである。

振り返れば、韓国の女子ゴルフ五輪代表争いはさまざまなことがあった。今季開幕前、イ・ボミの可能性はかなり低いと見られていたし、場外騒動も辞さなかった“カバン事件”も起きた。

果たして、最後に笑う4人は誰か。願わくば“スマイルキャンディ”がそのなかの一人になってくれればと思っている日本人ファンも多いことだろう。隣国の五輪代表争いがここまで気になるのも珍しい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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