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日本よりも強烈で大胆な韓国サッカー選手たちのタトゥー事情

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
チャ・ドゥリのタトゥーは韓国でも有名だ。(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

サッカー日本代表のジュビロ磐田・小林祐希が何かと話題らしい。キリンカップで日本代表初選出されたこともさることながら、写真週刊誌『フラッシュ』が報じた左腕のタトゥー写真が話題らしいが、韓国サッカー界でもタトゥーを入れる選手が増えている。

最近の韓国サッカー界でタトゥーが有名になったのはFWソク・ヒョンジュンだ。高校卒業後にアヤックスに渡り、2010年に19歳で韓国代表デビュー。その後、ポルトガル・リーグを渡り歩き、今年から名門FCポルトでプレー。韓国代表にも復帰し、6月5日のチェコ戦では値千金の決勝ゴールを決めて一躍、注目株になったが、その活躍以上に脚光を浴びたのが、両腕いっぱいに施されたタトゥーだった。かなり強烈で、日本ならほぼNGだろうなというほどである。

このソク・ヒョンジュンを筆頭に最近の韓国サッカー界では男子選手だけではなく、女子選手の中にもタトゥーマニアがいる。当時は気付かなかったが、かつてJリーグで活躍した選手もタトゥーを入れていたのは意外だ。

(参考記事:一挙公開!! 韓国サッカー界の“文身=タトゥー”ベストイレブンはこの11人!!

もっとも、サッカー界のタトゥーキングと言えば、真っ先に上げられるのはチャ・ドゥリだろう。父は1970年代にドイツ・ブンデスリーガで大活躍し、韓国の国民的英雄とされるチャ・ボムグン。チャ・ドゥリも2002年ワールドカップでその名を轟かし、ドイツやスコットランドでプレー。2010年ワールドカップにも出場し、KリーグのFCソウルで活躍。昨年、現役を引退したが、今でも人気者だ。

そのチャ・ドゥリの身体にはさまざまなタトゥーが刻まれているが、両腕いっぱいに刻まれたタトゥーを発見したとき、父チャ・ボムグンは愕然として「目の前に現れるな!!」と叱りつけたらしい。「試合では半袖を着ずに長袖を着るように」と指示したそうだが、息子がそれを聞き入れたのも最初だけだったという。

このエピソードでもわかる通り、韓国でも日本同様にタトゥーに否定的だ。韓国では入れ墨のことを「文身(ムンシン)」と呼び、儒教が生活宗教して社会全体に深く浸透しているだけに今でも「親からもらった身体を傷つけてはならない」という認識があり、タブー視する者も多い。テレビのドラマやバラエティ番組などで“文身規制”、すなわち“タトゥー規制”があることは、以前に本欄でも紹介した通りだ。

日本ならどうする?強打者に美女ゴルファー、チアドルまで!韓国スポーツ界、タトゥーに賛否両論!! ヤフーニュース個人 2016/05/04

ただ、近年は派手な髪色や突飛な言動で注目を集める選手が多くなり、個性がスター選手になるための条件にもなりつつある。大衆たちも自由奔放に個性を発散・披露する選手を歓迎するところがある。

そうした流れの延長上にタトゥーがあるわけだが、タトゥーが流行っているのはサッカー界だけではない。プロ野球や女子ゴルフ界でも、タトゥーを入れるアスリートが出現している。韓国女子ゴルフ界屈指の美女ゴルファーとして知られるアン・シネも、よくよく見ると左足首に星印のタトゥーを入れているほどである。

(参考記事:激撮15連発!! ゴルフ界のセクシークイーン、アン・シネの魅力

そんな昨今の流行を目にすると、韓国のスポーツ界も変わったものだとつくづく実感する。ひと昔前の韓国国民がスポーツ選手に求めていたのは、真面目さやハングリー精神であり、選手たちも自分を律して品行方正であろうと努めていた。個性は反逆。そう見る向きもあったと思う。それはスポーツ界だけではなく、韓国社会全体が同一の色に染まることを美徳としていた部分とも無関係ではないだろう。個性を押し殺し、古くからの固定観念に従うことが良しとされてきたわけだ。

(参考記事:韓国で変わりつつあるスポーツ選手に対するイメージ。昔はどうだった?

だが、今は違う。選手たちは流行に敏感になり、プレーや結果だけではなく、さまざまな形で自己表現するようになった。そのひとつがタトゥーでもあるわけだが、サッカー選手たちにこうもタトゥーを入れている選手が多い理由はどこにあるのだろうか。

その動機は「傷跡を隠すため」「自己表現のひとつ」「願いや想いを込めて」などさまざまなようだが、『日刊ゲンダイ』の「日本のサッカー選手たちの仰天タトゥー事情」という記事にもあったように、おそらくベッカムやメッシ、ネイマールといったスーパースターたちの影響が大きいと思う。タトゥーを入れている彼らに憧れ感化されたのだろう。キッカケは日本の選手たちとあまり変わらないのかもしれない。

ただ、韓国のサッカー選手たちのタトゥーのほうがドきついくらいに強烈で大胆。そこに彼らの自己主張の強さを感じずにはいられない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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