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韓国人メジャーリーガーの先駆者パク・チャンホは今、どこで何をしているのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
オリックスでもプレーしたパク・チャンホ。日米韓の野球界を知る人物でもある(写真:ロイター/アフロ)

パク・チャンホのことを覚えているだろうか。かつて“コリアン特急”の愛称でその名を轟かせた韓国人のメジャーリーガーのことだ。日本のメジャーリーガーのパイオニア的な存在である野茂英雄と同じ時期にロサンゼルス・ドジャースで活躍したのを皮切りに、テキサス・レンジャーズ、サンディエゴ・パドレス、ニューヨーク・メッツ、フィラデルフィア・フィリーズ、ニューヨーク・ヤンキース、ピッツバーグ・パイレーツなどを渡り歩き、MLB16年間で124勝98敗の成績を残した“韓国球界の生きたレジェンド”である。今日、韓国人選手のメジャー進出は急増し今季も8名がアメリカでプレーしているが、韓国ではその礎を築いたのはパク・チャンホだとされている。

(参考記事:韓国人メジャーリーガーの系譜と近年著しい野手増加の理由

2011年にはオリックス・バファローズにも所属。日本では1勝5敗の成績しか残せなかったが、その名を覚えている日本の野球ファンたちも多いだろう。また、WBCでは韓国代表として日本代表の前に立ちはだかった男でもある。かつてAP通信は、日韓の野球関係を「日本と韓国の戦いはアジア版“ニューヨーク・ヤンキース対ボストン・レッドソックス”だ」]と評したが、そんな宿命と因縁の日韓野球激動史を語る上でも、パク・チャンホの存在は外せない。

(参考記事:アジア版ヤンキース対レッドソックス!? 宿命と因縁の日韓野球激闘史

そのパク・チャンホは今、何をしているのか。オリックスを1年で退団した彼は、2012年に韓国プロ野球のハンファ・イーグルスでプレー。5勝10敗の成績を残し、2012年11月に現役を引退。39歳でユニフォームを脱ぎ、現在は第二の人生を送っている。

力投を続けてきた彼の新たな活躍の場となっているのは、マウンドではなくブラウン管だ。現役時代からおしゃべり上手で軽妙なトークに定評があったが、引退後間もない2013年3月には民放テレビ局SBSのトーク番組『サンキュー』のホスト役を務めたり、2013年WBCのテレビ解説者として活躍。昨年2015年は『プレミア12』のグローバルアンバザターを務めており、開幕戦となった日韓戦では始球式にも登場した。

最近は韓国の人気バラエティ番組『チンチャ・サナイ(「男の中の男」という意味)』に出演して人気者にもなっている。

同番組は芸能人や元スポーツ選手などが実際に軍隊に飛び見込んで、過酷な訓練生活を送るリアル軍隊バラエティ。2013年の放送開始以来の人気番組で、パク・チャンホは今年5月から番組に合流。パク・チャンホは1998年バンコク・アジア大会の野球競技で金メダルを獲得したため兵役免除の恩恵を受けているが、分隊長になってリーダーシップを発揮する姿は、視聴者たちの笑いと好感を呼び、その人気がさらに拍車がかかっている。

そんなパク・チャンホが久々に来日して東京で講演をするという。『アジアスポーツマネージメントセミナー』なるもので、ラグビー元日本代表監督のエディ・ジョーンズらと講演を行なうらしい。そのユニークな組み合わせもさることながら、韓国でもシンポジウムに出席することが少ない人物だけにどんな発表をするのか、個人的に興味がある。

というのも、以前、パク・チャンホはこんなことを言っていたのだ。

「韓国の野球人気はWBC効果もある。特に何度も対決した日本との試合が野球ファンだけではなく、韓国人全体にWBCの存在を知らしめるキッカケになった。韓国人にとって、韓日戦はいつも特別で魅力的なカードであるが、その日本と互角の勝負を演じたことで、“韓国野球は強くて面白い”というイメージを植えつけることに成功したのではないか」

(参考記事:Kリーグvs韓国プロ野球/第6回 W杯に泣いたKリーグ、WBCに沸いたプロ野球

メジャーリーグでの経験もさることながら、日米韓の3カ国の球界事情を知る数少ない人物だけに、昨今の韓国プロ野球の隆盛や韓国人メジャーリーガーの急増、さらには日韓の野球交流についてどんな見解を持っているか、非常に気になるところだ。

“コリアン特急”パク・チャンホ。久々に日本にやって来る“韓国球界屈指の生きたレジェンド”の来日が、今から楽しみだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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