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誤報に終わったBIGBANGの兵役一斉入隊説。その背景になったものとは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
絶大な人気を誇るBIGBANG。彼らの入隊時期はファンの関心事になっている(写真:ロイター/アフロ)

韓国はもちろん、日本でも絶大な人気を誇るスーパーグループ“BIG BANG”の兵役問題を巡ってちょっとした騒動が起きた。

キッカケは韓国のスポーツ新聞『スポーツ東亜』が6月1日付けで報じた記事だ。同紙は音楽業界関係者の証言として、「メンバーたちがグループの空白期間を最小化する方向で共感帯を形成した」として、メンバー全員が兵役のために一斉入隊する可能性があることを示唆したのだ。

「単独報道」と銘打たれたこともあって、韓国のメディアやファンは騒然としたが、同日午後には各メディアがBIG BANGの所属事務所関係者のコメントを添えて“一斉入隊”を完全否定。「BIG BANGのメンバーたちと10年をともにしてきたが同伴入隊に関しては一度も論議したことがない。まったくの流言飛語。継続的に続く間違った報道に関しては法的に強硬に対応する予定だ」とした。

事務所が完全否定したことでスーパーグループの一斉入隊説は誤報に終わったが、BIG BANGメンバーたちの兵役問題は今後も大きな関心事になるだろう。というのも、メンバー最年長のT.O.Pは1987年11月4日生まれ。つまり、今年は “入隊リミット年齢”とされる29歳なのだ。

(参考記事:【まるっとわかる韓国の兵役】入隊時期を延期できる2つの制度と服務期間

『スポーツ東亜』が報じた“一斉入隊”はこのT.O.Pにはじまりメンバー最年少V.I(1990年12月12日)までそれぞれ入隊時期が異なれば、メンバー全員が揃う空白期間が最長5年になってしまう恐れもあるだけに、「T.O.Pの入隊に合わせてほかのメンバー全員も入隊し、空白期間を最小限にしようということにメンバーたちが肯定的な意志を表した」(『スポーツ東亜』)としたが、誤報だったとはいえそれなりに説得力もある。

最近では東方神起のユンホとチャンミンが参考になるだろう。1986年生まれのユンホは昨年7月、現役陸軍兵士として軍隊服務をスタートさせたが、その4ヶ月後の11月には1988年生まれのチャンミンが義務警察に入隊して兵役生活に入った。これについて以前した取材した韓国スポーツ新聞『スポーツワールド』芸能部のチェ・ジョンア記者もこんなことを言っていた。

「ユンホに続いて1988年生まれのチャンミンが入隊リミットまで待たず早期入隊を決めたのは、グループとしての活動休止期間を最小限にするためでしょう。メンバーの入隊除隊時期にギャップを作らず、できるだけ近くすることで除隊後の芸能活動を揃って再開させたい狙いがあるはずです。ファンにとっては寂しい期間ですが、兵役後にふたたび揃って活動を再開するための次善策と思えば、歓迎すべきことではないでしょうか」

(参考記事:入隊から1年。東方神起ユンホは軍隊でどんな生活を送っているのか

(参考記事:【動画】兵役で“ソウル警察の顔”になったチャンミンの近況とは?

実際、誤報に終わったとはいえ今回のBIGBANG一斉入隊に関する韓国ファンの反応も概ね肯定的だった。『スポーツ東亜』の報道が出た直後には、「どの道、軍隊に行かなければならないのだから、みんなで同伴入隊して転役したほうがいい。空白期間を最小限にしてまたふたたび全員で活動すれば、チームとして利得になるはず」「同伴入隊はメンバーにとってもファンにとっても所属事務所にとっても良いはず。メンバーたちも年を取ると、軍隊で苦労して空白期間も長くなるので早く解決したほうがいい」という反応もあったし、所属事務所が否定したあとも、「それでも同伴入隊は賢明な選択なのでは」という意見もあった。

ただ、その一方で否定的な意見もある。BIGBANGはグループとしてだけではなく、各自のソロ活動やユニット活動を展開していることでも有名だけに、「ソロで活動しても大丈夫。グループとしての完全体にこだわる必要なし」「軍隊は個人の問題。メンバーそれぞれがしたいようにさせたほうがいい」という意見があるのも事実なのだ。

いずれにしても、BIGBANGメンバーたちの兵役時期を巡っては今後も関心が集まりそうだが、個人的に気になるのは“入隊リミット”が迫ってきたT.O.Pのことだ。数年前にソウルでロングインダヒューした際、彼はアーティストと俳優業という二束の草鞋を履く心境を語り、華やかなステージの影で抱く孤独についても率直に語ってくれる好青年だった。映画のプロモーション取材だったことあって、珍しく戦争についても語ってくれた。

(参考記事:【回想インタビュー】BIGBANGのT.O.Pが語った情熱と野心

そのときの取材で「価値ある存在になりたい」と語ったT.O.Pの言葉と表情が忘れられない。そこから感じ取れたのは、“時代のアイコン”としての自覚と“アーティスト”としての矜持。BIG BANGとT.O.Pのアイデンティティだったような気がする。兵役入隊時期で騒動が起きるのも、それだけ彼らへの期待と信頼が大きい証拠かもしれない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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