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釜山モーターショーで見た韓国の自動車業界とレースクイーンたちの現実

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
釜山国際モーターショーで発表されたKIAの新型K5(写真:KIA自動車)

先週1週間、仕事で韓国に行って来た。その取材成果は追って紹介したいと思うが、取材のために向かった釜山(プサン)で、ちょうど「2016釜山国際モーターショー」が行われていたので、その様子を少し伺ってきた。

「釜山国際モーターショー」は2001年から2年に一度行われきた国際モーターショーで、今年で8回目を数える。主催する釜山国際モーターショー事務局によると、第1回大会の観客動員は72万7000人(2001年)だったが、2003年の第2回大会で100万人を突破し、2014年の第7回大会では115万1000人の観客を集めたという。かなりの人気モーターショーと言ってもいいかもしれない。

ただ、世界が注目する国際的なモーターショーかと言えば、そうとは言い切れない。モーターショーの目玉は、自動車メーカーたちが満を持して発表する新車や時代の先端を先取りするコンセプトカーなどだが、今回の「釜山モーターショー」で世界初お披露目となったのはわずか5台。そのうち4台は、ヒュンダイ自動車(RM16)、KIA自動車(K7ハイブリッド)、ヒュンダイの高級ブランドであるジェネシス(ジェネシスG80、ジェネシスG80スポーツ)という韓国メーカーで、ポルシェ、フェラーリ、アストンマーチン、マセラッティ、クライスラーなどは出展すらしていない。

昨年ソウルで行われた「ソウル国際モーターショー」でもワールドプレミアや海外メーカーの出展数が少なく、「モーターショーではなく高級ホテルの駐車場に来たようだ」と指摘されていたが、「釜山国際モーターショー」もさほど変わらない状況のようだった。

(参考記事:海外メーカーから相手にされないソウル・モーターショーの憂鬱

ただ、モーターショーを彩る“華”と言えるレースクイーンたちは百花繚乱だった。

韓国ではレースクイーンたちのことを“レーシングモデル”と呼ぶのだが、昨年の「韓国レーシングモデル・アウォード2015」で栄える大賞に輝いたハン・ガウンなどが参加し、カーマニアや韓国のカメラ小僧たちから無数のフラッシュを浴びていた。韓国の経済紙『アジア経済』によると、「2016釜山国際モーターショー、レーシングモデル歴代最多」とのことだった。

もっとも、韓国のレーシングモデル事情に詳しいカメラマンによると、そのレーシングモデルたちの顔ぶれでも飛車角が抜け落ちていたらしい。

韓国の新人レーシングモデルの登竜門となっている「レーシングモデル・コンテスト」で大賞に輝いたゴージャスボディの大型新人のソン・ガラムや、上海モーターショーで知り合った中国人実業家と結婚した豊満ホディのムン・セリムなどは不参加。何よりも韓国でもっとも有名なレーシングモデルで、日本にもファンがいると言われるホ・ユンミが釜山モーターショーに参加しなかったことに、マニアたちの間ではため息が出ているという。

(参考記事:「忘れられない日本人ファンがいるんです!!」 Eカップ・レーシングモデルのホ・ユンミの告白

マニアからしてみれば、展示された車もさることながらお目当てのレーシングモデルでも目玉がなかったというわけだが、前出のカメラマンによると、レーシングモデルたちの年俸格差は激しく、生き残りをかけた競争も厳しい。人気がなくなったり年齢を重ねて若さを失ってしまうと、お払い箱になってしまうレーシングモデルも少なくないという。

(参考記事:華やかなのに生存競争がエグい韓国レースクイーンのリアルな現実

前出のカメラマンからそんな話を聞いているうちに、ワールドプレミアが少なく今ひとつ話題性に欠くモーターショーの現実と、一見すると華やかなのに厳しい現実に直面している韓国のレースクイーンの現実が重なった。

韓国の自動車業界はいろんな意味で厳しい競争にさらされているのではないか、と。

ちなみに「釜山国際モーターショー」は6月12日まで行われている。主催者側は過去最大(115万1000人)の観客動員を見込んでいるそうだが、はたして・・・。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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