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美容と健康ダイエットで韓国エンタメ界に新風巻き起こす、美しき“モムチャン・スター”たち

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
スポーツトレーナーたちのタレント化が進む韓国。レイヤンもそのひとりだ。(写真:ロイター/アフロ)

過去3回に渡って紹介してきた韓国のダイエット事情やフィットネス・ブーム。そのムーブメントを牽引するのは、クールビューティーを全面に押し出した “マッスル美女”や、美しくセクシーで話術にも長けたフィットネスタレント“たちであることを紹介したが、今回はエンターテインメントの視点で、現在の韓国のダイエット旋風を紹介したいと思う。

そもそも韓国でダイエットを最初にエンターテインメントにしたのは、チョン・ダヨンだった。2児を持つ一般主婦に過ぎなかった彼女は、2002年にインターネットで自身のダイエット経験記を連載してブレイク。今ではすっかり定着した「モムチャン(「ナイスバディ」という意味の造語)”という言葉は彼女をキッカケにして生まれ、チョン・ダヨンは今でも“元祖モムチャン”と言われている。日本でも“モムチャン・アジュンマ”で知られる彼女は現在、中国にも進出しており、幅広くビジネスを展開しているらしい。

(参考記事:“モムチャン・ダイエット”で日本を風靡したチョン・ダヨンは今、何をしているのか)

このチョン・ダヨンの登場で、韓国ではスポーツトレーナーたちがタレント化し、数多くの“ダイエット・マスター”が次々と登場していく。 “韓流ダイエットキング”と呼ばれたショーン・リーなどは、日本のバラエティ番組『Oh!どや顔サミット』にも出演したほどだ。

こうした下地がある中で2015年1月に彗星のこどく登場したのが、「奇跡のDカップ女神」ユ・スンオクだ。ミス・コリア出身という美貌もさることながら、アメリカで行われたマッスルマニア・ユニバース世界大会で東洋人初となるトップ5に入賞したその肉体美が話題になって、韓国では単に「色白で細身」よりも腹筋や背筋などの筋肉の美しさも“美の基準”となる。“マッスル美女”ブームの到来だ。

ユ・スンオクの勢いは凄まじかった。雑誌のグラビアやバラエティ番組に引っ張りダコとなり、瞬く間にスターダムへ。各種式典にも引っ張りダコで、韓国プロ野球のとある記念式典では自慢の肉体だけではなく、優雅なドレス姿を披露したこともある。テレビドラマにも多数出演し、4月には中国映画にもキャスティングされた彼女は、まさに近年最高の“モムチャン・スター”と言っても過言ではないだろう。

(参考記事:写真17連発!!ドレスの上からでもくっきり…ユ・スンオクの“女神ボディ”)

そして、このユ・スンオクの登場以降、韓国は空前の“モムチャン・スター”時代に突入。ユ・スンオクと同じく『マッスルマニア』で受賞歴があるイ・ヨンや、地方の無名トレーナー出身ながら「完璧ホディのナチュラルビューティー」と呼ばれるイェ・ジョンファなど、マッスル美女やフィットネストレーナーたちが人気と注目を集めるようになり、彼女たちは各種メディアやイベントに引っ張りダコになった。健康的な肉体美と艶のある肌、キュートな笑顔とグラマラスなボディラインを誇る彼女たちは、間違いなく“モムチャン・スター”だった。

驚かれされるのは、ブームの始まりからわずか1年しか経っていない状況下でその“モムチャン・スター”の系譜に世代交代が起きていることだ。前回コラムでも紹介したが、ユ・スンオク、イェ・ジョンファらは“モムチャンスター第1世代”と呼ばれており、最近は“モムチャンスター第2世代”が人気を集めている。

その中心にいるのは、ミスコリア出身で「脱アジア級のモムメ(肉体)」レイヤン、名門・延世(ヨンセ)大学院でスポーツ心理学を専攻し、国際ピラテス教育協会のインストラクターの資格を持つヤン・ジョンウォン、「国宝級ヒップラインのビキニ女神」シム・ウトゥクである。彼女ら3人に共通するのは、それぞれ専門的な知識を持ち、今でも現役のフィットネス・トレーナーとして活動していること。人気に火がつき本業よりもタレント業のほうが忙しくなってしまった第1世代とは大きく異なるところがあると、韓国メディアは指摘している。

「ユ・スンオクは昨年11月の『UFC』で特別ラウンドガールを務めたが、完璧ではない肉体にファンの失望を買った。多忙なスケジュールのためトレーニングをできず体型を維持できないことが、モムチャン・スターたちにとっては致命傷になることを示した例だ」

つまり、今や韓国で一世を風靡しているモムチャン・スターたちの生きる道は、一にも二にも体型維持。たゆまぬ努力を続けることが最優先となるが、各種メディアやイベント主催者から次々と出演依頼が殺到する彼女たちにとっては、それは決して簡単ではない。

特に夏を目前に控えた最近は、各テレビ局でダイエット企画が計画されており、バラエティ番組プロデューサーたちは彼女ら“第2世代”や、ユ・スンオク、イェ・ジョンファら第1世代をなんとかキャスティングしようと躍起らしい。韓国では放送倫理上、過度なセクシー・アピールはご法度で、扇動的に肉体をアピールするのではなく、あくまでも健康美にスポットを当てねばならない事情もあるのだが、彼女らモムチャンスターたちをセクシーシンボルとして利用しようという見方があるのも、また事実なのだ。

美容と健康への意識が高く、それがときに度が過ぎてしまう韓国らしい状況であるが、果たしてマッスル美女やフィットネスタレントら“モムチャン・スター”たちは、韓国のエンターテインメント界でひとつのジャンルとして定着することができるだろうか。韓国の“マッスル美女”や“フィットネス・タレント”たちが近い将来、日本にやって来る可能性もあるだけに、その動向には今後も注目しておきたい。

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“女神ボディ”で空前ブームを牽引する美しくセクシーな“マッスル美女”たちヤフーニュース個人 2016/05/02

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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