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韓国でも五輪候補の違法賭博発覚!!彼らはなぜ違法ギャンブルに手を出すのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
韓国ではショートトラックの代表選手たちの違法賭博が発覚した・・・(写真:アフロ)

男子バトミントンのエースである桃田賢斗選手と田児賢一選手の闇カジノでの違法賭博発覚で揺れる日本だが、奇しくも韓国でも同じ日にまったく同じ問題が起きている。4月7日、韓国ショートトラックスピードスケートの韓国代表選手など男女合わせて計5名が違法賭博に関与した疑いで不拘束立件されたのだ。

しかも、その大半は2年後の平昌(ピョンチャン)冬季五輪での活躍が期待される選手ばかりで、中には代表候補の高校生まで含まれていたこともあって、「ショートトラック国家代表が“スポーツ賭博”、警察捜査へ」(『聯合ニュース』)、「先輩とともに賭博サイトに。高校生も300万ウォン(約30万円)ベッティング」(『中央日報』と、韓国メディアは衝撃を隠せない。

(参考記事:セクハラ、飲酒に続き今度は違法スポーツ賭博が発覚!!それもコーチや未成年まで!!

読売ジャイアンツで起きた野球賭博に続く賭博スキャンダルに、日本では動揺を隠せないスポーツファンも多いと思うが、韓国でもスポーツ選手たちの違法ギャンブル問題があとを絶たない。昨年はプロ野球で有名選手たちが関与した違法賭博スキャンダルが発覚。シーズンのクライマックスに発覚したスキャンダルで、しかも容疑をかけられた選手の中には、韓国球界を代表する投手で日本でも活躍した名ストッパーだっただけに波紋は大きかった。

(参考記事:日本球界でも活躍した名投手たちが違法賭博でイメージ失墜

そんな韓国で特に問題視されているのが、インターネット上に存在する違法スポーツ賭博サイトだ。携帯番号と送入金可能な銀行口座を登録すれば誰でも会員登録できる仕組みの手軽さから誰でも手を出せることもあって、その市場規模は31兆1000億ウォン(約3兆1100億円/韓国刑事政策研究所発表)とも39兆6000億ウォン(3兆9600億円)になるとも言われている。

違法なので当然、刑罰がある。2012年に改定された韓国の国民体育振興法によって、違法スポーツ賭博サイトの運営業者だけでなく、利用者も5年以下の懲役・5000万ウォン(約500万円)以下の罰金が科せられる。にもかかわらず、韓国では違法スポーツ賭博の利用者が減らない。

警察庁が発表した違法スポーツ賭博・摘発額は、2013年=783億ウォン(約78億円)、2014年=4600億ウォン(約460億ウォン)、2015年は7560億ウォン(約756億円)に膨らむ一方であるし、一説によると、年間147万6700名を超える人々がインターネット上の違法スポーツ賭博に手を染めているという分析結果もあるほどなのだ。

そして、その中には前出したようにスポーツ選手たちも含まれているわけだが、なぜ韓国のスポーツ選手たちは違法賭博に手を出すのか。

いろいろあるが、集団生活が多いことも原因のひとつとされている。韓国では競技者志向の選手たちは学生時代から合宿所などでの集団生活を送り、プロになっても合宿生活が多い。大事な試合前になると既婚者も合宿所入りする。そうした集団生活の中で違法スポーツ賭博が自然に広がっていくという。以前取材したとあるKリーガーも言っていた。

「同僚や先輩に面白いゲームがあると教えられることが多い。合宿所で生活しても、試合のない日はやることがないからハマってしまう」

深刻なのは、そうして手を出した違法スポーツ賭博が引き金となり、やがて八百長に手を染めるまでエスカートしてしまうことだ。プロ野球LGツインズの投手だったパク・ヒョンジュンとキム・ソンヒヨンは違法スポーツ賭博の八百長に加担して有罪判決を受けているし、2011年5月に発覚したKリーグの八百長事件の発端は違法スポーツ賭博がひとつのキッカケとなり、逮捕者どころか関与容疑があった元監督と選手が自殺までしている。違法賭博が八百長加担への引き金になっているどころか、“破滅へのプレリュード”になっているのだ。

(参考記事:逮捕者に自殺者まで!! 不正賭博と八百長が絶えない韓国プロスポーツ界の闇

いずれにしても、日韓スポーツ界は昨年のプロ野球違法賭博問題に続き、またしても共通の問題を抱えることになった。その根絶を図るための善処が両国スポーツ界に今、強く求められている。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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