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期待と崖っぷち!! Kリーグで活躍する日本人選手たちの評判

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
FCソウルで活躍する高萩洋次郎(写真協力=FA photos)

日本のJリーグに遅れること2週間。3月12日にKリーグ・クラシックが開幕した。1983年に設立された前身のスーパーリーグから数えて34回目、2013年からKリーグ・クラシック(1部リーグ)、Kリーグ・チャレンジ(2部リーグ)の1部・2部昇格制度が導入されてからは4回目のシーズンの開幕だ。Kリーグ・チャレンジは3月26日からスタートするが、韓国にもサッカーシーズンが到来したと言ってもいいだろう。

特にKリーグにとって今季はその存在意義を改めて世に示したい重要なシーズンになる。昨季はシーズン途中にリーグの主軸選手たちが中国や中東に引き抜かれて「Kリーグはセーリング・リーグに成り下がってしまった」と嘆く声が起きた。

(参考記事:「Kリーグはこのまま安売り“セーリング・リーグ”と落ちぶれるのか」)

シーズン終了後に発表された2015年の総観客数は、クラシックとチャレンジと合わせて211万3559人。クラシックの1試合平均観客数は7720人、チャレンジに至っては1626人しかならなかった。

チーム数や年間試合数の違いがあるため単純比較できないが、2008年以降、年間観客動員数500万人を突破し、10球団体制となった2015年は700万人突破。1試合平均1万222人を集める韓国プロ野球の人気とは対照的でもある。それだけにKリーグも人気回復の起爆剤にしようと、2連覇中の全北現代とKリーグ屈指の人気クラブであるFCソウルの対決を開幕カードとして用意するなど、さまざまな策を講じているが、個人的に今季のKリーグで注目したいのは、日本人選手の活躍だ。

そもそもKリーグでした日本人選手としては、海本幸治郎(東京ヴェルディ)が2001~2003年に城南一和(現・城南FC)、前園真聖が2003年に安養LG(現:FCソウル)、2004年に仁川ユナイテッドでプレーしている。アジア枠が導入された2009年には戸田和幸が慶南FC、大橋正博が江原FC、岡山一成が浦項スティーラーズでプレー。2010年には高原直泰が水原三星で活躍した。2011年には馬場優太が大田シチズンで、2012年は家長昭博(蔚山現代)、島田裕介(江原FC)、エスクデロ競飛王・(FCソウル)がKリーグでプレーしている。

そんなKリーグ日本人選手の系譜を引き継ぎ、いつになく目立った活躍を見せているのがFCソウルの高萩洋一郎だ。昨季はFAカップの大会MVPにも輝き、今やFCソウルのサポーターたちから“パス・マスター”として絶大な指示を集めている。

(参考記事:「韓国で日本サッカーの力を轟かす“パス・マスター”」)

FCソウルは過去にも日本人選手がプレーしてきたが、Jリーグでもプレー経験があるチェ・ヨンス監督からの信頼も厚いという。韓国のサッカー専門誌『Four Four Two KOREA』のホン・ジェミン編集長も以前、こんなことを言っていた。

「韓国でボランチもしくは守備的MFというと、まさに守備の汗かき役でフィジカルの強さと激しさで存在感を示す選手が多く、ビルドアップ能力は二の次と捉えられる傾向が強い。ただ、高萩はボールコントロールがうまくテクニックがあり、視野も広くパス・センスがある。チェ・ヨンス監督も“高萩は試合や練習中でも見る側をハッとさせるパスを出す。韓国人選手にはない独特のタイミング、多様でときに意外性に富んだパス・ルートを持っている”と評価していた」

この高萩と“日本人MF対決”が注目を集める蔚山現代の増田誓志も今季は活躍が期待されている。昨季はチームも苦しい戦いを余儀なくされ、増田自身も満足できる結果を残せなかったが、今季はKリーグ4年目のシーズン。ユン・ジョンファン監督の信頼にも応えたいと意気込んでいる。

(参考記事:「Kリーグ4年目の増田誓志、正念場のシーズン」)

著名なサッカージャーナリストであるソ・ホジョン記者も増田にこんな期待を寄せている。

「彼は再契約を交わして蔚山に残った。増田は試合全体を作っていく蔚山の司令官だ。俊秀な守備力と安定したパス、ときたま放つ強力なミドルなど、チームに必要なすべてのことを遂行する彼を見ていると、静かだかなぜ彼が脅威的かがわかるだろう」

しかも、今季は新たにもうひとり、日本人選手がKリーグに参戦している。京都サンガ、大宮アルディージャなどで活躍した渡邊大剛だ。所属する釜山アイパークは昨季降格し、今季はKリーグ・チャレンジを戦うことになるが、クラブ関係者は渡邊にかなりの期待を寄せているらしい。

(参考記事:「釜山が渡邊大剛に名門復活の舵取りを託した理由」)

このほかにも、光州(クァンジュ)ユナイテッドにはヴィッセル神戸ジュニアユース出身の和田倫季が加入。ヴィッセル神戸や京都サンガを指揮した和田昌裕監督の三男である和田倫季は、昨季夏から仁川ユナイテッドに籍を置き、今季は光州FCでKリーグ2年目のシーズンを迎える。

いよいよ開幕したKリーグで、活躍が期待される日本人選手たち。日本人選手の活躍がKリーグの盛り上げに一役買えば、それほど痛快なこともないだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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