今季は代表GKが続々参戦!! Jリーグ韓国人選手のトレンドと問題点とは?
2月27日から開幕するJリーグ。そのJリーグで今や欠かせぬ存在となっているのが、韓国人選手だろう。Jリーグの外国人選手最多輸出国といえば毎年ブラジルがダントツのナンバーワンだったが、近年の韓国勢の多さは今やそのブラジル勢に肉薄するほどだ。
今季も多くの韓国人選手がJリーグにやって来る。
韓国代表級GK、Jリーグに大移動
今季、新たにJリーグにやって来た韓国人選手の特長としては、チョン・ソンリョン(川崎フロンターレ)、キム・スンギュ(ヴィッセル神戸)、イ・ボムヨン(アビスパ福岡)など、GKが多いことだろう。チョン・ソンリョンは2度のワールドカップ出場と3回のアジアカップ出場、さらには2012年ロンドン五輪銅メダルにも輝くなど長らく韓国代表の守護神として活躍してきたベテランであり、キム・スンギュはそのチョン・ソンリョンからポジションを奪ってウリ・シュティーリケ監督率いる現在の韓国代表の正GKとして活躍。2014年仁川アジア大会では金メダルにも貢献した。イ・ボムヨンは2012年ロンドン五輪本番ではオーバーエイジとして加わったチョン・ソンリョンにその座を譲ったが、それまでは当時のU-23韓国代表の頼れる守護神で、現在も韓国代表候補にかならず名が上がる。
つまり、3人は韓国代表で正位置争いを展開する間柄。それだけに韓国メディアも、「ライバルのGKトリオ、Jリーグでも競争」(『MKスポーツ』)と報じている。
ACL絡みではなくJリーグ開幕に合わせて韓国でJリーグにスポットが当るのは、久しぶりのような気もする。かつては韓国でもJリーグの試合結果などが報じれていたが、近年はかなり少なくなり、韓国におけるJリーグへの関心は低下していたのだ。
(参考記事:韓国が見たJリーグ「選手の立場からするとJの魅力は10年前に比べて半減した)
ただ、今季はどうやらふたたびJリーグに目が向けられそうだ。『スポーツ・トゥデイ』も、「国家代表級GK、Jリーグに大移動」と報じて、彼らの動向に注目している。
今や第4世代まで続く韓国人Jリーガーの系譜
それにしても改めて実感するのは、韓国人Jリーガーたちの系譜とそのトレンドの変化だ。Jリーグも今年で24年目。そのスタート時から日本にやって来た韓国人選手を取材してきたが、時代の変化によって韓国人Jリーガーの傾向も変わってきた。
例えば世代によって異なる日本観である。これまで多くの選手を取材し、「イルボン(日本)はライバルか」と訊ねてみたが、世代によって「サッカーでは絶対日本に負けなかった」という選手もいれば、「日本から学ぶべき点は多い」という選手もいた。
(参考記事:「イルボン(日本)はライバルか」を韓国人選手に問う)
そもそもJリーグに初めてやって来た韓国人選手は、1993年のJリーグ元年から活躍するノ・ジョンユンだった。高麗(コリョ)大学在学中に韓国代表入りを果たし、Kリーグを経ずに日本にやって来た彼は、一部の韓国の人々が「裏切り者」と罵られ、同じ外国人であっても同時期にやって来たジーコ、リネカー、リトバルスキーに比べると年俸も安かった。専門の通訳や車、高級アパートなどが用意されたわけでもなく、年俸の多くを貯金して韓国の両親に仕送りしていたという。節約のために広島市内のスーパーマーケットに閉店間際に行って、割引商品を買ったりもした苦労人だった。
このノ・ジョンヨンが韓国人Jリーガー第一世代とすれば、97年からやって来たコ・ジョンウン、ホン・ミョンボ、ファン・ソンホン、ハ・ソッチュ、ユ・サンチョルらは第2世代である。Kリーグで実績を積み、韓国代表の主力でもあった彼は、韓国よりも高い年俸や専任通訳の帯同など、その待遇も良かった。韓国のメディアが「Jリーグは韓国人選手のエル・ドラド(黄金郷)だ」と書き立てたほど。こうした第二世代の流れはチェ・ヨンス、アン・ジョンファンまで続くことになり、パク・チソンが第3世代の時代を切り開くことになる。
明知(ミョンチ)大学を中退してJリーグにやって来たパク・チソンは、Jリーグで成長し、韓国代表にも定着。2002年ワールドカップで活躍し、オランダPSV移籍を経てマンチェスター・ユナイテッドに進出する。彼の成功もあって、Jリーグは韓国人有望株の青田買いに乗り出し、韓国の選手たちも大学やKリーグを経ずに日本にやって来るようになった。その多くがパク・チソンのように、「韓国発、日本経由、ヨーロッパ行き」を目標に掲げたものだ。
だが、それを実現できた選手は限られている。私の記憶が正しければ、水戸ホーリーホック、鹿島アントラーズ、ジュビロ磐田を経てスイス・バーゼル入りしたパク・チュホ(現在はドルトムント所属)と、セレッソ大阪からウェールズのカーディフに移籍したキム・ボギョン(現在は全北現代所属)くらいではないだろうか。そのほかは韓国に戻ったり、Kリーグでも然したる成績を残せずに終わった選手もいる。
それでも韓国人選手のJリーグ進出が絶えなかったのは、Kリーグのドラフト制度などもあるのだろうが、ここ数年は高卒や大学を卒業してそのまま日本に来てJリーグでプロ・デビューする韓国人選手が多い。いわゆる韓国人Jリーガー第4世代の登場だ。
「相当な覚悟がなければ日本では成功しない」
オ・ジェソク(ガンバ大阪)や今季からFC東京入りしたハ・デソンのようにKリーグで活躍し、韓国代表としても国際大会に出場した選手もいるが、最近の韓国人Jリーガー第4世代は、旧知の韓国人記者に聞いても名前が知られていない選手が実に多い。低年齢化と無実績化が顕著なのだ。
しかも、日本にやって来たすべての韓国人選手たちが各所属クラブでバリバリのレギュラーとして活躍しているわけでもない。特にJ2では日本にやって来たものの、気がつくと翌シーズンには韓国に戻ってしまったという選手も少なくない。
それは彼らにも原因がある。かつて私がホン・ミョンボやユ・サンチョルが感じた強い責任感とプロ意識、チームメイトの発奮を促す勝負根性を持った韓国人選手が、最近は少なくなったように思う。
「それは時代の変化。韓国人選手もスマートになった」と言い切るのは簡単だ。だが、日本に来る以上、若かろうが実績がなかろうが、外国人選手=傭兵であることに変わりはなく、韓国人選手がJリーグで生き残るには、日本人選手にはない強さを発揮してチームに貢献しなければならない。昨今の韓国人選手の一部には、その意識が薄らいでいるのではないかと感じることもある。
韓国人選手にとってJリーグは身近な海外進出だろう。それこそ、駅前の日本語学学校に通うような“駅前留学”ではないが、近くて手ごろかもしれない。まして過去に成功した選手も多い。日本に来る気持ちがわからないわけでもない。
ただ、そんな軽い気持ちでは日本で絶対成功しない。まして昨今は日本サッカーのレベルアップは著しく、日韓は完全なライバル関係になった。その日本で、「自分の力を試したい」と乗り込んできても、相当な覚悟がなければ日本では成功しない。
それは、ほかならぬ韓国人記者も認めている。
「“脱アジア”を追求するJリーグは、その目標に限りなく接近しているというのが私の印象だ」という韓国人記者は、Jリーグの総合力を“アジア最高峰”にあるとして、「下手なユーロッパリーグよりもJのほうが水準が高い」とまで言い切っている。
(参考記事:韓国人記者も評価!!「総合力ではJリーグがアジアNo.1だ!!」)
そんなJリーグで韓国人選手が存在感を示すためには、かつてノ・ジョンユンやホン・ミョンボ、パク・チソンがそうだったように、何か強烈な輝きを放たなければならないだろう。
果たして、今季日本でプレーするすべての韓国人選手が大活躍できるだろうか。期待と希望とシビアな目で、彼らのプレーを追い続けたい。