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日本代表の実戦トレーニング。本田圭佑の圧巻プレーと、絶好調・川島クオリティー

清水英斗サッカーライター
マリ戦で後半25分から出場した本田圭佑(写真:ロイター/アフロ)

24日、1-1で引き分けたマリ戦翌日のトレーニングが行われた。

スタメンで出場した選手と、前半34分から出場した山口蛍は、軽いジョギング等でクールダウン。その一方、マリ戦に出場しなかった選手と、出場時間が短かった選手たちは、約2時間のトレーニングでしっかりと汗を流した。このように試合翌日は、試合に出た選手と出ていない選手のコンディションを合わせるために、サブ組は強めの負荷でトレーニングするのが通例だ。

最初のフィジカルメニューの後、5対5+フリーマンでポゼッショントレーニングを行い、次はチームごとにゴールの方向性を付けて行い、さらにボールを運ぶ方向を斜めに変えるなど、いくつかのパターンを交えてポゼッションを行った。

その後は、ペナルティーエリア2つ分の大きさで行うゲーム形式。3対3+フリーマン、2対2+フリーマンと徐々に人数を減らし、1対1+フリーマンを行った後、最後は全員で行った。

やはりA代表の選手が、1対1や2対2でぶつかり合うトレーニングは、かなり迫力がある。この日のトレーニングは、現地の日本人学校の子どもたちも見学していたが、小林悠が左右両足でゴールの天井に突き刺す強烈なシュートを見舞うたび、子どもたちからは大きな歓声が上がった。一方、フリーマンは柴崎岳や三竿健斗などMFが務めることが多く、特に柴崎は派手なことをやるわけではないが、正確で状況判断の早いパスを随所に見せていた。

そのほか1対1では、原口元気と酒井高徳のガチンコバトルなど、見ごたえのあるシーンが多々あったが、特に圧巻だったのは、本田圭佑だ。

1対1の相手に入ったのは車屋紳太郎。本田はスピードや俊敏性があるタイプではないので、この手のメニューは苦手かと思いきや、続けざまにゴールを量産して行く。車屋を身体で押さえつけ、跳ね飛ばし、左足で豪快なシュート。一際大きな歓声が上がった。そうやって東口順昭が守るゴールネットを何度も揺らすと、ハリルホジッチが吹いた終了の笛と同時に、味方ゴールを守っていた川島永嗣と力強くハイタッチ。マリ戦では良いところがなかったが、やはり本田のコンディションは良さそうだ。

そして、本田とハイタッチした川島も、圧巻のセービングを見せ続けた。何より目を引いたのは、前に出るディフェンス。抜け出した選手がいても、ドリブルの角度が悪かったり、少しボールが足から離れたりしたすきに、川島は果敢に飛び出し、ダイビングしてボールをもぎ取る。そんな力強いプレーが何度も続いた。川島も調子は良さそうだ。

川島といえば、リエージュ到着2日目のトレーニングでも、印象的な姿があった。両サイドからクロスを蹴り、GKがキャッチして、反対側のサイドへスローイングを行う。FWもDFも置かない、シンプルな反復練習だ。これを川島、東口、中村航輔が交代で行っていた。

「お”ぉ”っ!」

川島の大きなコーチングが、静かな練習場に響き渡る。DFがいないのだから、わざわざGKが飛び出すボールであることを周囲にアピールする必要はない。しかし、川島はトレーニング中から実戦モード。常に試合を想定した様子がうかがえる。

スローイングも興味深い。たとえば川島は、左サイドからのクロスをキャッチして、右サイドへ投げるとき、ほぼ左手で投げる。川島は右利きなので、右腕のほうが投げやすいが、左サイドからのクロスをキャッチして右で投げようとすると、一度身体を回転させ、身体を開く動作が必要になる。これではクイックスローのタイミングが、わずかに遅れる。

そこで左投げに変えると、左サイドからのクロスをキャッチした姿勢のまま、左手で投げることが可能になる。川島は状況によって、右投げと左投げを使い分けていた。わずかな差だが、より早いリスタートが可能になり、GK起点のカウンターチャンスが増える。

川島といえば、ドヤ顔、豪快なプレーが印象深いはず。しかし、実は川島はテクニック的にも細部にこだわってプレーしており、完成度も非常に高い。それを改めて感じる一コマだった。

A代表ともなると、公開トレーニングを見る機会はさほど多くないし、公開するときはコンディショニングがメインで、戦術的なメニューはほとんどない。それでも、選手個々のいろいろな姿を発見できるのは楽しい。

W杯をどう戦う? マリ戦のレポートはこちら!

サッカーライター

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合を切り取るサッカーライター。新著『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』。既刊は「サッカーDF&GK練習メニュー100」「居酒屋サッカー論」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材に出かけた際には現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが最大の楽しみとなっている。

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