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新春!コロナ禍だからこそ、オンラインで労働・生活の悩みを聞かせて欲しい

嶋崎量弁護士(日本労働弁護団常任幹事)
(提供:アフロ)

コロナ禍で迎える新年

本来はおめでたい新年なのに、コロナ禍ではそうもいかないというのが率直な感想だ。

全国的に新型コロナの感染が拡がり、緊急事態宣言がだされるのではと報じられ、2020年の新型コロナに由来する解雇等は7万9千人超との報道もなされている。

しかも、既に日本で生活する多くの方の雇用・生活に大きな被害が生じている。そんな被害の状況を可視化したのは、「年越し支援コロナ被害相談村」など、全国で取り組まれた年末年始の生活支援の相談会などの活動に関する報道だろう。年末年始の年越しに向けて、住居と食事をつなぐ緊急的な対応が必要な方が多数いる深刻な被害が大きく報道された。

とはいえ、まだまだ、こういった相談会などに繋がれない、多くの相談機関につながれていない、困窮者などがいるはずだ。

その一例として、大学生など若者世代への被害を中心に少し考察したい。

大内裕和教授(中京大学)のメッセージ

 「ブラック企業」「ブラックバイト」被害など若者の労働問題に長年取り組み(筆者も一緒に活動をさせていただいている)、学費・奨学金問題にも取り組んでいる大内裕和教授(中京大学)も、現在の大学生の困窮した状態に強い危機感をもち「リーマン・ショックと比較した新型コロナ禍の特徴として、女性の被害、若者・学生の被害の比率が高い」ことを指摘している。

大内裕和教授(2020年1月4日開催・オンライン記者向け説明会の様子)
大内裕和教授(2020年1月4日開催・オンライン記者向け説明会の様子)

 新型コロナ感染拡大が拡がる以前から、近年は、仕送り額の減少により学費・生活費を稼ぐために大学生がアルバイトをしなければならないケースが多かった(大学生アルバイトが「遊ぶため」目的ばかりだったのは、はるか昔のお話である)。これが、辞めたくても大学生活を続けるために辞められないという、「ブラックバイト」被害問題の根底にあったのである。

 そんな中、大学生アルバイトの集中する産業(飲食、教育、観光、イベント、小売等)は、いずれも新型コロナの影響を大きく受けている。そこで働いていた大学生は「アルバイト」扱いの弱い立場であり、休業手当等の補償も受けられないまま一方的にシフトを外されたり、解雇・雇止め仕送りなど親の援助が無くなるという被害が続出している。

 さらには、大学生自体のアルバイトにとどまらず、学費を拠出する両親などの収入状況がコロナ禍で減少することで、仕送りや学費負担の継続が困難になる等の影響もでている。

 また、昨年秋以降、多くの大学で対面授業を復活している影響も指摘されている。オンライン授業だけだったときには実家で生活費が節約できたが、対面授業も復活し授業に出席するため一人暮らしになると、そのための生活費もかかるので、より困窮が進んでいるという。

 これから先、学費の延納・分納でも対応しきれず、来年の学費が支払えない学生が増加して、進学を断念せざるを得ない、経済的な理由で中退せざるを得ないケースが増えるのではと、大内教授は危惧している。

 そして、こういった大学生の困窮状態は、大学生が「持続化給付金」の不正受給等の闇バイトへと引き込まれてしまう社会的背景にもなっている(先のリンク先・NHKクローズアップ現代でも、大内教授が「コロナ禍で親の失業などによって、学費を学生自身が急きょ支払うことになってしまったという相談が続いている」とコメントされている)。

食費をも削らねばならぬ大学生の実態

 大学生の困窮認定NPO法人フードバンク山梨(南アルプス市)が山梨大と都留文科大の学生に新型コロナウイルスの影響を尋ねたアンケートで、新型コロナの影響でアルバイト代などが減り、食費を切り詰めている学生の実態も報道された。

 このアンケートは2020年10~11月に食料支援を実施した山梨大と都留文科大の学生計約110人を対象に実施されたもので「食事回数は1日2回」と回答したのは37人(47%)。理由として10人が「節約のため、1日の食事回数を減らしている」を挙げた。「1日3食」と回答した41人の約3割も「1回の食事量を減らしている」と答えたという。

 食費をも削らねば学業が続けられない大学生の状況は、適切な支援がさしのべられねばならないはずだ。

若者が相談機関には繋がりにくい現状

 とはいえ、残念ながら、大学生が自力で生活相談・労働相談に対応する相談機関にたどり着くのはハードルが高いのだろうとも思う。

社会経験の乏しい大学生が、学費・奨学金や生活費について適切な相談先を探すことも難しいし、アルバイト先などでの法的トラブルの解決方法などを自力で解決する知識・ノウハウもないのが通常だろう。

 これは、大学生に限らず、若者の抱える法的トラブル全般に言えることでもある。

オンライン相談のメリット

 そういった状況を克服する一つの手段として、オンラインを活用したイベント(「新春 オンラインできいてみよう!労働・生活のお悩み」)が企画されている(筆者もイベント主題側のメンバーである)。

 主催は、若者の労働問題として「ブラック企業」被害に取り組んできたブラック企業被害対策弁護団と、弁護士だけでなく労働組合や研究者のメンバーも加わって取り組むブラック企業被害対策プロジェクトだ。回答は、地域・相談内容を踏まえて、弁護士や労働組合の相談担当者が担う。女性担当者も配置しているので、その希望に応じられる。

 ■受付期間 2021年1月1日~5日18時迄

 ■回答   2021年1月5日13時以降 随時回答

 ■受付方法 こちらからLINE登録 OR 専用Twitterアカウントへダイレクトメッセージ

 ■相談無料・秘密厳守

開設された専用Twitterアカウント
開設された専用Twitterアカウント

 若者世代は、日頃から電話よりもSNSでのコミュニケーションを利用する傾向もあり、若者世代が使い慣れたオンライン上での相談体制構築が、気軽に相談をしてもらうためにも有効と考えた。

 このイベントでは、LINEやTwitterのダイレクトメッセージ機能を利用して、オンライン上で気軽に声を届けて貰おうというのが狙いだ。回答は、全国の弁護士・労働組合の相談員が担当する。

 生活困窮や労働トラブルについて、誰かに相談するのはとても勇気がいることだ。オンライン相談は、匿名でも可能なので相談への心理的なハードルを下げ、多くの方に参加して欲しいという思いで企画されている。

コロナ禍での相談体制の問題

 オンライン相談は、コロナへの感染リスクを避けて相談ができるというメリットもある。

 コロナの感染拡大場面での相談時には、人が移動し対面で会話をする相談活動に支障が出るという課題がある。これは、若者に限らずだが、支援を必要とする方の中にも、基礎疾患などから感染に対する不安を強く感じている方、子育て(特にシングル家庭など)・介護などで相談のため移動が難しかったり、自分を媒介にした子ども等感染への恐怖を強く感じている方もいる(なお、現在数多く開催されている相談会は、筆者の把握する限りは、その点にできる限りの配慮がなされているように思うが)。

 こういった方々への相談の入口としても、オンライン相談は有用だろうと感じている。

日本語を母語としない方への相談

 また、オンライン相談は、外国人など日本語を母語としない方の対応でも強みがある。電話相談などは、日本語が不慣れな相談者にはハードルが高いことがあるが、テキストベースのオンライン上でのやり取りでは、それが克服できる。

 日本語でのメッセージが難し方についても、相談担当者側も、時間をかければ翻訳機能などを使い対応が可能だ。日本語が得意では無い方も、気軽に利用して欲しい。

「相談」と気負わず声を寄せて欲しい

 相談・とりわけ弁護士への相談というのは、多くの方にとって敷居が高いのは紛れもない事実だろう。

 ともあれ、今回のイベント(「新春 オンラインできいてみよう!労働・生活のお悩み」)は、まずはオンラインで皆さんの悩みを聞かせていただくもの。「相談!」と肩肘をはらずに、参加してまずは皆さんの声をきかせて欲しい。

弁護士(日本労働弁護団常任幹事)

1975年生まれ。神奈川総合法律事務所所属、ブラック企業対策プロジェクト事務局長、ブラック企業被害対策弁護団副事務局長、反貧困ネットワーク神奈川幹事など。主に働く人や労働組合の権利を守るために活動している。著書に「5年たったら正社員!?-無期転換のためのワークルール」(旬報社)、共著に「#教師のバトン とはなんだったのか-教師の発信と学校の未来」「迷走する教員の働き方改革」「裁量労働制はなぜ危険か-『働き方改革』の闇」「ブラック企業のない社会へ」(いずれも岩波ブックレット)、「ドキュメント ブラック企業」(ちくま文庫)など。

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