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研究重ね、髪を伸ばし、ゲン担ぎも…「宝塚音楽学校」不合格から1年後に桜咲く!真彩希帆はロジカル派

島田薫フリーアナウンサー/リポーター
これまでの経験、『ファントム』について語る真彩希帆さん(写真:すべて島田薫)

 「宝塚歌劇団」で、雪組トップ娘役を4年間務め上げた真彩希帆(まあや・きほ)さん。役により変化する歌声と、底抜けに明るい性格が魅力です。「宝塚音楽学校」の受験で1度は不合格になるも、小学生の頃から熱望していた男役ではなく娘役志望に転向し、受かるための研究を重ねて2度目は見事合格!その秘訣には説得力があり、考え抜かれた戦略は他の世界でも活かせそうです。そして今、トップ娘役時代に圧倒的な歌唱力で魅了した『ファントム』のクリスティーヌ役を、退団後再び演じることに注目が集まっています。

―「宝塚歌劇団」では男役志望だったとか?

 今も、生まれ変わったら男役になってみたいです(笑)。小学校4年生で宝塚に出合って、中学校3年生で1回目の受験をするまでは、ずっと男の子みたいに生きていました。髪の毛はベリーショートで、洋服も口調も完全に男の子。わざと足を開いたり、宝塚の男役さんがよくやっているようなポーズで座っていました。きちんとした子というよりは、やんちゃ坊主(笑)。

 当時は、そうすることが男役への近道で、合格する確率が上がると思っていたんですけど…違いますよね(笑)。受験時は、気合を入れて髪型もリーゼントにして行きましたが、私の身長(164cm)くらいだと、男役志望という子は周りに見当たらず、綺麗な娘役志望の子ばかり。「これは絶対受からない」と思ったら、案の定落ちましたね。

 そうしたら、受験スクールの先生から「娘役なら絶対受かる!1年で髪を伸ばしなさい」と言われたんです。

―なぜ「絶対受かる」と言われたんですか?

 先生は「2次試験で歌を聴いてもらえれば受かるよ」と。でも、当時の録音を聞くと全然上手じゃないし、男役の歌を練習していたので、今のように高い音も出ていませんでした。先生の言葉に半信半疑でしたが、方向性を変えてみようと決意しました。

―よく気持ちを切り替えられましたね?

 「宝塚の世界に入りたい」「あの素敵な世界の一員になりたい」という一心だったので、がむしゃらに頑張れました。

―次の受験まで、どういう1年を過ごしましたか?

 ひたすら、白城あやかさんや純名里沙さんの歌を聴くなど、自分の中に全くない娘役さんの雰囲気や声を1年間分析し研究し続けました。そして、受験は一発勝負のところもあるので、どれだけ印象を残せるかも大事だと思い、ものすごく考えて2度目の受験をしました。

―考えてとは?

 まず、どういう子が受かるのかを考えました。1度目の受験会場で、光り輝くほどのオーラをもって合格していった方の雰囲気を思い出し、近づくためにはどうしたらいいのかを研究しました。さらに、体重はどのくらいがいいか、髪型はお団子にするにしても、どんなタイプのお団子が自分に合うのかなど、1年間ずっと考えていました。結果、1年前の自分とは全然違う人になりましたね(笑)。

―受験時の戦略は?

 たくさんの受験生の中で、歌は絶対に試験官の方たちの印象に残せるくらいにまで頑張ろうと思いました。面接は、笑顔が大事だ!と。その頃の私、口角が下がっていたんです。元来よく笑う人間ではあるんですけど、小学校4年生頃から、写真を撮る時もひたすら斜に構えたキメの表情しかしなかったので、“への字口”が標準になってしまっていて。なので1年間、笑顔の練習を鏡の前でしましたね。

―受かるためのゲン担ぎがあると聞きます。

 私が聞いた中では、「受験会場の控室の真ん中で歌ったら受かる」というものがありまして、それを実行しました。たくさん受験生がいる控室で「やるっきゃない!」と思って、課題曲だった『松島音頭』を恥ずかしい気持ちを捨て、大きな声で歌いました。正直、合否には関係ないと思いますけど(笑)、緊張はほぐれました。

―どんな性格だと言われますか?

 気さくで竹を割ったような性格だと(笑)。自分が目立つよりも、支える方が断然好きでもあります。楽しい事や、ときめく事を探すのも大好き。人に対して想像が膨らんで、こうやったら気持ちが楽なんじゃないかな〜とか、こっちの方がもっと素敵に見えるな、この人の音域・声質にこの歌が合いそう!とか考えるのもすごく好きです。

―演出家の資質もありそうですね。

 いやいや〜(笑)。常に自分の姿や置かれている状況を、客観的に見ているタイプではありますが…ミュージカル女優として頑張ります(笑)。

―退団後、変わったことはありますか?

 子供の頃の自分に戻ったような気がします。退団して、改めて心をニュートラルにする意識で日々を過ごすことで、楽しい発見やときめきをさらに感じています。

―今回演じる『ファントム』と宝塚版『ファントム』との違いは?

 雪組でクリスティーヌ役を務めてから数年が経ち、自分自身も変わりました。今回と宝塚版で一番違いを感じるのは、歌詞や台詞が違うということ。やはり、言葉が違うと生まれる感情も変化します。

 宝塚版ではない『ファントム』の歌詞を初めて聴いて、この言葉を使うのか!という発見もあったりして。表現の仕方や心の移り変わりを、どこまで繊細に表現できるかに改めてチャレンジしたいし、クリスティーヌだけではなく、ベラドーヴァというエリックの母親も演じるため、お芝居部分をもっと深め、さらに真心と愛情をこめて大事に務めていきたいと思っています。

―仕事をするうえで、大切にしていること、信じていることはありますか?

 信じていることは、己の気持ちと直感ですね。誰かに言われてから動くのではなく、自らが“どう感じたか”“どう思ったか”で動くということをとても大切にしています。人間関係も同じで、周りから「あの人はこうだよ」と言われても、私は全く気にしません(笑)。自分が直接その人と目を合わせ、会話した中で“どう感じたか”を大切に、常に自然体で人と向き合うことが大事かなと思っています。あとはいつも朗らかに!

 子供の頃、10歳近く上の姉に言われた「悩んだら楽しい方を選びなさい」という言葉も大事にしています。いつどんな人・作品に出合えるか分からない、人生は短いので、素直に感じたままにあったかい気持ちで生きています。

―今やりたいことはありますか?

 自分と向き合う時間が増えたので、自然に触れたり、心を動かされるものを見に行ったりしたいです。具体的に言うと、行ったことがないので沖縄に行ってみたいのと、海外へも未知なる世界を知る旅に行きたいです。

■編集後記

インタビューの最初に「聞きたいことがたくさんありまして…」と伝えたところ、「どうぞ!どうぞ!どうぞ!何でも聞いてください!」とテンションMAXから始まりました。改めて内容をまとめていて、とても気持ちが明るくなっていくのを感じます。インタビューを終えて時間が経っても、文字からでも、なおパワーを与えられる強さは天性のものであり、また欲してしまいます。

■真彩希帆(まあや・きほ)

7月7日生まれ、埼玉県出身。2012年、宝塚歌劇団に98期生として入団、2017年、望海風斗の相手役として雪組トップ娘役に就任。確かな歌唱力と繊細な演技力で、往年の名作からコメディ作品まで幅広く役をこなす。2021年4月をもって歌劇団を退団後は、舞台『ドン・ジュアン』『笑う男』『流星の音色』『ジキル&ハイド』等、話題作でのヒロイン役に於いて、ミュージカル女優として着実な活躍をみせている。舞台出演の他、NHKラジオドラマ、歌番組、エッセイ連載、単独ディナーショー、ビルボードLIVE公演など、活動は多岐に渡る。ミュージカル『ファントム』(クリスティーヌ役)は、大阪・梅田芸術劇場メインホール(7/22~8/6)、東京国際フォーラム(8/14~9/10)にて公演予定。

フリーアナウンサー/リポーター

東京都出身。渋谷でエンタメに囲まれて育つ。大学卒業後、舞台芸術学院でミュージカルを学び、ジャズバレエ団、声優事務所の研究生などを経て情報番組のリポーターを始める。事件から芸能まで、走り続けて四半世紀以上。国内だけでなく、NYのブロードウェイや北朝鮮の芸能学校まで幅広く取材。TBS「モーニングEye」、テレビ朝日「スーパーモーニング」「ワイド!スクランブル」で専属リポーターを務めた後、現在はABC「newsおかえり」、中京テレビ「キャッチ!」などの番組で芸能情報を伝えている。

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