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昭和の風情漂うテーブル型ゲーム筐体 新技術を取り入れ「新発売」した思いとは

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
徳力精工製のテーブル型筐体「TaKuYa(タクヤ)」(※筆者撮影。以下同)

東京都府中市にあるデパート「ミッテン府中」では、現在「Let's play with a Retro Game machine ~レトロゲームで遊ぶ春休み2023~」と題した展示イベントが開催されている。

会場には、昭和生まれの世代には懐かしいアーケード(ゲームセンター)用のテーブル型筐体(きょうたい)が展示され、誰でも無料で遊ぶことができる。これらの筐体は、実は来月に発売予定のれっきとした新製品で、その名も「TAKUYA(タクヤ)」と言う。しかも本機はゲームセンターではなく、個人ユーザー向けに販売するというのだから、驚き以外の何物でもない。

「TAKUYA」を開発したのは、昭和の時代から約半世紀にわたり、ナムコ(現:バンダイナムコアミューズメント)をはじめとする、大手メーカーのアーケードゲーム筐体製造を手掛ける老舗、徳力精工だ。

同社の本社は府中市にあり、「ミッテン府中」のイベント担当者がレトロゲームの展示を通じて、店舗が地元の企業とつながっている姿を発信したいとの思いがあったことから、春休みコラボイベントという形で本展の開催が実現した。

テーブル型筐体「TAKUYA」の体験コーナー
テーブル型筐体「TAKUYA」の体験コーナー

家庭でも遊びやすくするために現代の技術で改良

なぜ徳力精工は、令和になって久しいこのタイミングで古い時代の筐体を再現し、あえて新製品として発売しようと決めたのだろうか?

同社マーケティング部の小林明広部長によると「最初は趣味の延長として弊社で作った筐体を、実際に稼働させて販売もしてはどうかと考えたのがきっかけです」という。

「ビデオゲームの原点である、テーブル型筐体をもう一度作って皆様にお見せすることは、ゲーム文化そのものを見せる意味もあるのではないかと思いました。ただ、今のゲームセンターの客層には合わないので、個人の方に販売できるように開発しました。特に、アップライトよりもテーブル型のほうがお好きな、コアなファンの方々に興味を持っていただけたら嬉しいですね」(小林氏)

見た目は昔のものと変わらないが、中身は現在の技術をもちろん取り入れており、モニターの縦、横向きの変更やコントロールパネル(※レバー、ボタンの付いた操作部分)の取り外しなどは、工具を使わなくても簡単にできるように設計されている。さらにオプション機能のHDMI入力端子を追加すれば、家庭用のゲーム機を接続して遊ぶことも可能だ。

昔の筐体と同様に、コントロールパネルを前後に分けて取り付けることも可能だ
昔の筐体と同様に、コントロールパネルを前後に分けて取り付けることも可能だ

小林氏によると、30代前後の来場者は「スーパーストリートファイターIIX」を、ご年配の方々は「スペースインベーダー」が動いているところを見ると、懐かしさのあまりよく足を止めてくれるそうだ。

「デパートでの展示を通じて、お子様からご年配の方まで3世代の皆様に、テーブル型筐体の楽しさをお伝えしたいですね。昔からテーブル型筐体を知っている方には、ビデオゲームの原点がここにあったことをもう一度思い出していただき、まだ遊んだことがない方々にも、これが今につながっていることを知っていただければと思っております。

 古くから工場で筐体を製造をしている、弊社だからこそ再現できた『TAKUYA』には、懐かしい思い出に浸りながらも、これからの未来に向けた体験をするためのツールにしたい、そんな開発陣の思いが込められております。ぜひイベント会場にお越しいただき、お手に触れてみて下さい」(小林氏)

懐かしのアーケードゲームを収録したタイトーの家庭用復刻ゲーム機「イーグレットツー ミニ」をセットした「TAkUYA」。こちらも会場でプレイ可能だ
懐かしのアーケードゲームを収録したタイトーの家庭用復刻ゲーム機「イーグレットツー ミニ」をセットした「TAkUYA」。こちらも会場でプレイ可能だ

「TAKUYA」が今後どれだけ普及するのかは未知数だが、もしかしたら本機の発売を機に、ゲームセンターから家庭へと場所を変え、テーブル型筐体を家族や友人同士で囲んだうえでゲームに興じる、懐かしくも新しい遊び方が広まるかもしれない。

「Let's play with a Retro Game machine ~レトロゲームで遊ぶ春休み2023~」は3月29日まで、毎日10~18時まで開催されている。なお「TAKUYA」はすべて受注生産方式で、来月上旬からゲームショップ「アキハバラ@BEEP」で販売予約を開始する予定だ。価格などの詳細は徳力精工、またはBEEPの続報を参照していただきたい。

(参考リンク)

「レトロ型ゲーム機の体験イベントをミッテン府中にて開催」(PR TIMES)

会場には、こちらも懐かしさにあふれた「新製品」のアップライト型筐体も展示されている。なお、アップライト筐体は発売未定とのこと
会場には、こちらも懐かしさにあふれた「新製品」のアップライト型筐体も展示されている。なお、アップライト筐体は発売未定とのこと

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

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