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世界最大級のメダルゲームコーナーがオープン プライズゲーム全盛のいま、なぜ?狙いは

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
ラウンドワン市川鬼高店の「ギガメダルゲームスタジアム」(※筆者撮影。以下同)

ラウンドワンは、千葉県市川市にある同社の直営店「ラウンドワン市川鬼高店」に「世界最大級」を標榜したメダルゲームコーナー、その名も「ギガメダルゲームスタジアム」を6月22日にオープンした。

以前から拙稿「5年連続で市場拡大もビデオゲームは人気低迷 アーケードゲーム市場の実態は」などでも解説しているが、近年のアーケードゲーム市場のオペレーション(店舗)売上高は、プライズ(景品)ゲームが半分以上を占めている。ラウンドワンでもこのトレンドに乗り、300台以上のクレーンゲームを設置した「ギガクレーンゲームスタジアム」を多くの店舗で展開中だ。

そんなご時世にあってオープンした「世界最大級」のメダルゲームコーナーとは、いったいどんな内容なのか? 興味を大いに引かれた筆者は、早速現地に足を運んでみた。

ラウンドワン市川鬼高店の外観
ラウンドワン市川鬼高店の外観

マスメダルゲームを大量設置、なおかつ低価格でメダルを提供

「ギガメダルゲームスタジアム」は、元々はボウリングのレーンがあった同店の4階フロアをまるごと改装して作られた。

フロア内には「フォーチュントリニティ 精霊の至宝祭」や「海物語 ラッキーマリンツアーズ」など、大人数で遊べる巨大なマスメダルゲームがズラリと並び、しかもタイトルによっては同じものを3台も4台も置いている。普通のゲームセンターであれば、同じマスメダルゲームを複数置くことはほとんどないこともあり、その豊富な品揃えには圧倒される。

「ギガメダルゲームスタジアム」のある4階フロア
「ギガメダルゲームスタジアム」のある4階フロア

同店の支配人、山北心水氏によると「『ギガメダルゲームスタジアム』だけで、300以上の口数(席数)があります」という。「『フォーチュントリニティ』などのマスメダルゲームが人気ですね。『釣りスピリッツ』なども、土日になるとお子様連れのお客様でずっと満席になります」(山北氏)

さらに驚きなのがメダルの貸出価格だ。ラウンドワンでは、通常は1000円でメダル180枚なのに対し、「ギガメダルスタジアム」では1000円で何と2倍以上の400枚に設定している。

「メダルをお安くしたことで、ほかのお店よりも遊べる時間が1.5~2倍に増え、大当たりが出るかどうかのドキドキ感もよりお楽しみいただけると思います。小中学生のお客様には、1000円分のメダルをご購入いただくと無料で400枚のメダルを差し上げる、かなりお得なクーポンが付いたアプリもご用意しています」(山北氏)

フロア内に所狭しと並んだメダルゲームを導入するにあたり、相当な額の投資をしたと思われるが、こんなにメダルの価格を下げても同店の経営は大丈夫なのだろうか? 山北氏によれば新規の客も順調に増え、メダルの貸出(売上)も伸びているそうだ。

「当店は元々メダルゲームの人気が高く、また複合型の店でもありますので、メダルゲームを遊び来られたお客様がプライズゲームやカラオケ、ボウリングも『いっしょに遊ぼうかな?』と思われることでも売上が上がっていくんですね」(山北氏)

あらゆるマスメダルゲームを複数稼働させているボリューム感には圧倒される
あらゆるマスメダルゲームを複数稼働させているボリューム感には圧倒される

スケールメリットを生かした差別化を実現。今後も実施店舗を拡大予定

「アミューズメント産業界の実態調査報告書」の数字を見ると、実はメダルゲームのオペレーション売上高は、2006年の1997億円をピークに下がり続け、2019年には半分以下の876億円まで落ち込んでいる。ここ数年、右肩上がりが続くプライズゲーム(※2019年の売上高は2988億円)とはまさに対照的だ。

市場のトレンドがプライズゲームへと移行して久しいこのタイミングで、なぜラウンドワンはメダルゲームの一大オペレーションを始めたのだろうか?

同社の広報に伺ったところ「最近ではプライズゲームの人気が高く、弊社でも力を入れておりますが、メダルゲームや音楽ゲームなども多くのお客様にご利用いただいており、弊社にとって重要なコンテンツと捉えております。

多数のメダルゲーム機を一部店舗に集約することで、効率化や他ゲームセンター様との差別化を図っております。メダルゲームは長時間プレイされる方が多いため、広いスペースでゆっくりプレイされたり、さまざまなメダルゲームを楽しんでいただければと考えております」とのこと。

全国各地に多くの店舗や資産を持つ、同社のスケールメリットを存分に生かすことで実現した「ギガメダルゲームスタジアム」。しかも市川鬼高店では、4階フロアとは別に2階にも「スターホース4」をはじめとするマスメダルゲームや、シングル(1人プレイ専用)メダルゲームも多数設置している。これほどまでに大規模なメダルゲームコーナーは、確かにおいそれとは真似ができないだろう。

「お得な設定で、いろいろなゲームが遊べるのが一番の自慢です。店内をご覧になっただけでも、きっと衝撃を受けるのではないかと思いますので『ギガメダルゲームスタジアム』にぜひお越し下さい」(山北氏)

2階フロアにも「スターホース4」をはじめとするマスメダルゲームが稼働している
2階フロアにも「スターホース4」をはじめとするマスメダルゲームが稼働している

「ギガメダルゲームスタジアム」は市川鬼高店のほか、さいたま・鴻巣店と大宮店でもすでにオープンしており、今後も「加古川店、鳴海店、わらび店にて順次展開を予定しています」(ラウンドワン広報)という。市川鬼高店での単独実験ではなく、すでに複数の店舗での展開が決定しているということは、どの店舗でも確かな勝算があるのだろう。

「ギガメダルゲームスタジアム」の展開を機に、メダルゲームが往時の人気を取り戻し、ひいてはアーケードゲーム業界全体で再び大きな収益源となるのか、今後も大いに注目したい。

(参考リンク:ラウンドワンのホームページ)

・世界最大級のメダルゲームフロア「ギガメダルゲームスタジアム」が登場!

ラウンドワン市川鬼高店

同じく階フロアより。シングルメダルゲーム機も大量に設置している
同じく階フロアより。シングルメダルゲーム機も大量に設置している

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

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