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任天堂の新サービス「Nintendo Switch Online+追加パック」の魅力と問題点とは

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
NINTENDO64用ソフトのゲーム選択画面(※筆者撮影。以下同)

任天堂は、Nintendo Switch用の新サービス「Nintendo Switch Online + 追加パック」の配信を10月26日より開始した。

本サービスに加入すると、従来の「Nintendo Switch Online」で利用できる各種コンテンツに加え、かつてNINTENDO64およびメガドライブ用ソフトとして発売されたゲームが遊び放題になり、超人気ソフト「あつまれ どうぶつの森」の追加コンテンツ「あつまれ どうぶつの森 ハッピーホームパラダイス」(※11月5日に配信予定)も追加料金なしで遊べるようになる。

料金は、個人プランの場合は12か月で4,900円(税込)。従来の「Nintendo Switch Online」は12か月で2,400円(税込)なので、新サービスのほぼ2倍の値段となる。

以下、本稿では、筆者が本サービスを実際に遊んだうえで気付いた、良かった点と改善してほしい点を紹介する。

手軽に遊べる、往年の名作タイトルがさらに豊富に

本サービスで利用できるNINTENDO64用ソフトは、「ゼルダの伝説 時のオカリナ」をはじめ「スーパーマリオブラザーズ64」「マリオカート64」など全8タイトルで、近日中に「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面」など5タイトルが追加されることもすでに発表されている。メガドライブ用ソフトは「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」「ぷよぷよ」など、全14タイトルが遊べるようになっている。(※配信タイトルは、いずれも10月26日時点の情報による)

どちらのハードも、発売当時は主にコンポジット(ビデオ端子)や、S端子ケーブルをブラウン管テレビに接続して遊ぶものだったこともあり、昔のテレビよりも高解像度の液晶モニターに映し出された画面はとてもきれいに見える。

「マリオカート64」のゲーム画面
「マリオカート64」のゲーム画面

メガドライブ用ソフト「ベア・ナックルII」のゲーム画面
メガドライブ用ソフト「ベア・ナックルII」のゲーム画面

以前から配信されているファミコンやスーパーファミコン用ソフトと同様に、いつでも好きなタイミングでプレイデータがセーブできる「どこでもセーブ」機能が搭載されているのも実にありがたい。また、NINTENDO64用ソフトは最大4人まで、メガドライブ用ソフトは2人までオンライン同時プレイができるのも嬉しいところだ。

往年の名作、あるいは発売当時に入手が難しかったソフトが、携帯用ハードとしても使えるNintendo Switchで気軽に遊べるようになったのは朗報だ。それにしても、かつては家庭用ゲーム機市場のシェア争いを任天堂と続けていたセガのハードが、任天堂の最新ハード上で動く時代が訪れるとは……。まさに隔世の感がある。

「ゼルダの伝説 時のオカリナ」で「どこでもセーブ」機能を実行したところ
「ゼルダの伝説 時のオカリナ」で「どこでもセーブ」機能を実行したところ

マニュアルの不備、「巻き戻し」の未実装は要改善ポイント

新たにソフトが多数配信された一方で、気になる面も散見された。

まず残念だったのが、2年前に掲載した拙稿「これだけはすぐに対処してほしい! 『Nintendo Switch Online』唯一無二の問題点」でも触れたように、本サービスで配信中のソフトは、いずれもパッケージ版に同梱されていたマニュアルを見る機能が用意されていないことだ。

とりわけNINTENDO64は、ファミコンやスーパーファミコンよりもコントローラーに付いているボタンの数が大幅に増えており、例えば「ゼルダの伝説 時のオカリナ」は、ファミコン版の元祖「ゼルダの伝説」に比べて操作がかなり複雑だ。なので初心者はもちろん、たとえ経験者であっても、最後に遊んだのが10年も20年も前のゲームの操作方法を、マニュアルを読まずにすべて思い出すのはさすがに大変だろう。

各ボタンの割り当てを図で表示する「操作ガイド」メニューは全タイトルに実装されているものの、これだけでは情報が圧倒的に足りない。なぜマニュアルを用意しないのか、正直理解に苦しむ。

メガドライブ用ソフト「ベア・ナックルII」の操作ガイドを開いたところ。ボタンの割り当ての説明だけで、プレイ中の具体的な操作方法はまったく書かれていない
メガドライブ用ソフト「ベア・ナックルII」の操作ガイドを開いたところ。ボタンの割り当ての説明だけで、プレイ中の具体的な操作方法はまったく書かれていない

メガドライブ用ソフトには、従来のファミコン、スーパーファミコン用ソフトと同様に、もしミスをした場合は、その直前の任意のタイミングからゲームを再開できる便利機能、「巻き戻し」が搭載されている。ところがNINTENDO64用ソフトでは、なぜか「巻き戻し」が使えないのも気になった。

もしかしたら、移植にあたって何か技術的な問題が発生しているのかもしれないが、NINTENDO64でも「巻き戻し」を実装したうえでサービスを開始してほしかった。

メガドライブ用ソフト「ゴールデンアックス」より。途中でミスしても直前からやり直せる、便利な「巻き戻し」機能が使える
メガドライブ用ソフト「ゴールデンアックス」より。途中でミスしても直前からやり直せる、便利な「巻き戻し」機能が使える

NINTENDO64用コントローラーと、Nintendo Switch用のJoy-Conとではボタンの配置が大きく異なることもあり、タイトルによっては操作方法にかなり違和感を覚えた。

以下の写真は、「ゼルダの伝説 時のオカリナ」の操作ガイド画面だ。図を見ると、NINTENDO64用コントローラーでは中央の裏側にあったZトリガーボタンが、Nintendo SwitchではJoy-Con(L)、すなわち左手側の裏にあるZLトリガーボタンに割り当てられていることがわかる。

また、A、BボタンはJoy-Con(R)のA、Bボタンにそれぞれ割り当てられているが、ボタンの並びが元のNINTENDO64用コントローラーとは違うので、筆者は慣れるまでに非常に苦労した。

さらに中断メニューを起動するときの操作が、NINTENDO64用ソフトだけ異なっているのも、実にややこしいなと率直に思った。

ほかのハードのソフトでは、ZLとZRを同時に押すと中断メニューが起動するが、NINTENDO64用ソフトをプレイ中は、前述したようにZトリガーボタンがZLに割り当てられているので、中断メニューは「-(マイナス)」ボタンを押すと起動するようになっている。こちらの操作も、筆者は慣れるまでの間に何度も間違えてしまった。

「ゼルダの伝説時のオカリナ」をプレイ中に操作ガイドを開いたところ。Joy-Conへ各種ボタンをどのように割り当てたのかがちょっとわかりにくい
「ゼルダの伝説時のオカリナ」をプレイ中に操作ガイドを開いたところ。Joy-Conへ各種ボタンをどのように割り当てたのかがちょっとわかりにくい

ただ幸いなことに、NINTENDO64、メガドライブともに別売りの「Nintendo Switch Online」専用コントローラーが用意されている(※メガドライブ対応コントローラーの正式名称は「セガ メガドライブ ファイティングパッド 6B」)。出費がかさんでしまうが、NINTENDO64用ソフトを遊ぶ場合は、現時点ではJoy-Conよりも専用コントローラーを使ったほうがより快適に遊べることだろう。

別売りのNintendo Switch Online専用NINTENDO64コントローラー(※任天堂のホームページより筆者撮影)
別売りのNintendo Switch Online専用NINTENDO64コントローラー(※任天堂のホームページより筆者撮影)

新たに多くのハード、ソフトが遊べるようになり、しかも今後も追加タイトルの配信が予定されている新サービスの登場は実に喜ばしいことだ。だが、特にNINTENDO64用ソフトは、このままでは宝の持ち腐れになってしまう気がしてならない。

本サービスで配信している全タイトルのマニュアル公開と、NINTENDO64用ソフトへの「巻き戻し」機能の追加は、早急に実現していただきたい。そして願わくは、NINTENDO64用ソフトで各種ボタンの割り当てをプレイヤーが任意に設定できるコンフィグ機能も、ぜひ追加していただければと思う。

(参考リンク)

・任天堂「Nintendo Switch Online+追加パック」のページ

(C)2020 Nintendo

(C)SEGA

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

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