新たな世代のボカロPが続々と頭角を現してきている。

昨年から今年にかけてYOASOBI「夜に駆ける」やAdo「うっせぇわ」が一世を風靡、Chinozo「グッバイ宣言」などTikTok経由で広まったボーカロイド楽曲がヒットチャートを賑わすような動きもあり、ネットカルチャー発の楽曲がオーバーグラウンドで注目を集めるようになってきた。J-POP全体におけるボーカロイドの存在感が増加したことに加えて、クリエイターたちが才能を発揮する“場”が盛り上がりを見せてきたことも大きい。

■「ボカコレ」でニコ動投稿数が過去最多に

その象徴となったイベントが、4月24日、25日に開催された「The VOCALOID Collection ~2021 Spring~」(以下、ボカコレ)だ。「一緒につくろう」をコンセプトにドワンゴが主催するイベントで、今回は昨年冬に続く第2回となる。

4月24日から8日間にわたって開催された「ニコニコネット超会議2021」の一部として、生放送配信番組やイベントなど様々な企画を展開した。目玉企画となった幕張メッセでのライブ「The VOCALOID Collection LIVE」には人気ボカロPや歌い手に加え、「ラスボス」の通称で親しまれる小林幸子や、自身もボカロ楽曲を発表した霜降り明星の粗品なども出演。ジャンルの垣根を超えたコラボで喝采を集めた。

新たな「ボカロ文化の祭典」として人気を集めるボカコレだが、ライブ以外にも注目を集める企画が出てきている。ユーザーがニコニコ動画に投稿した動画作品を対象としたランキング企画だ。

ランキングの対象はオリジナル楽曲の「ボカコレTOP30ランキング」やリミックス楽曲の「ボカコレREMIXランキング」に加え、デビュー2年以内の新人ボカロPに焦点を当てた「ボカコレルーキーランキング」、そして「歌ってみた」「踊ってみた」「演奏してみた」の「二次創作ランキング」と多岐にわたる。集計期間内におけるニコニコ動画の再生回数やマイリスト追加数、コメント数を基準にしたランキングを作成。上位入賞者には支援金を提供し、またオリジナル楽曲の上位5位にランクインしたクリエイターには、ソニーミュージックが今年立ち上げたウェブ上の創作プラットフォーム「MECRE(メクル)」を用いて制作した楽曲をソニー・ミュージックレーベルズからリリースする機会も与えられた。

こうしてクリエイターたちに発表と健全な競争の場を与えた結果、開催初日にはニコニコ動画の1日当たりの投稿数が過去最高となる6805本を達成。投稿者の中には10代半ばの中学生、高校生のボカロPも目立った。ボカコレが「新世代の才能の登竜門」として機能しはじめていると言えるだろう。

■注目のクリエイターたち

ここからは、ボカコレランキング上位を中心に注目のクリエイターを紹介していきたい。

まずは、「エウレカ」が今回のオリジナル楽曲ランキング1位となった柊キライ。

柊キライは2019年1月に活動を始めたボカロPで、YouTubeで1千万回以上の再生回数を記録している「ボッカデラベリタ」や、前回「The VOCALOID Collection -2020 winter -」のオリジナル楽曲ランキング2位、Adoが歌ったバージョンも大きな反響を集めた「ラブカ?」など人気曲も多いクリエイター。スウィング・ジャズとエレクトロミュージックを融合した「エレクトロ・スウィング」を取り入れた独創的な音楽性が特徴だ。

柊マグネタイトも注目の存在だ。

2020年9月に活動を開始し、「終焉逃避行」が前回のルーキーランキング1位。「凹面黙示録」が今回のオリジナル楽曲ランキング6位となった。EDMをベースにプログレッシヴ・ハウスやダブステップなど多彩なダンス・ミュージックのサウンドに、一作目の「或世界消失」から全ての楽曲の歌詞に関連性をもたせた壮大な世界観が魅力だ。

そして、今回のルーキーランキング1位となったのが卯花ロク。

卯花ロクは2020年6月にボカロPとしての活動を始めたばかりのクリエイターで、疾走感あふれるギターロックの曲調に皮肉めいた辛辣な歌詞が乗る、ダークな作風を得意としている。「自称、音楽愛好家」はルーキーランキング1位、オリジナル楽曲ランキング2位となっている。

ボカコレランキングには参加していないが、新世代のボカロP代表としてはKanariaの活躍に触れないわけにはいかないだろう。2020年5月に活動を始め、8月に発表した2作目の「KING」でブレイク。Billboard JAPAMのUGCランキングで1位、5月7日放送の『ミュージックステーション』でネクストブレイクとして紹介されるなど知名度を高めている。

他にも、きっと、ずっと、ぼっち。、ど〜ぱみん、林田匠、立椅子かんな、皆川溺、晴いちばんなど、2020年に本格的に活動を開始した注目のクリエイターが続々と登場してきている。

音楽シーンの未来を担う存在になりそうだ。