法務省の委託による『未成年時に親の別居・離婚を経験した子に対する調査』の結果が公表された。Webモニター1000人が答えたアンケートである。ランダムサンプリングがなされていないので、サンプルの偏りは存在するだろうが、web調査という特質上、それは避けられないだろう。この調査は、今後の法改正の基礎となる資料である。そこから見えてきた離婚・別居後の子どもたちの姿は、意外で興味深いものであった。やはり議論する際には、エビデンスが必要だと感じさせられた。数回に分けて、紹介しようと思う。

1) 少なからぬひとたちが、自分の子どもを育てるにあたって、両親の離婚から「良い影響」を受けたと感じている

離婚(以後、別居を含んで「離婚」と記述する)は、子どもたちのその後の人生にどのような影響をもたらすのだろうか。アンケートでは、「自分の恋愛や結婚への影響があったと思いますか」という質問に、悪い影響があったと答えたひとは、2割強(240人)である。良い影響と答えたひとも2割程度(212人)である。過半数のひとが「どちらともいえない」「わからない」と答えている。

その上で、アンケートに答えた1000人のうち、子どものいるひと375人に対し「父母の離婚・別居はあなたの子とあなたの親子関係に対して影響があったと思いますか」とたずねると、悪い影響があったと考えるひとの割合は12.5パーセント(47人)に下がり、良い影響があったと答えたかつての子どもたちの割合は、約3割(114人、有効回答数の30.4パーセント)にあがる。つまり、離婚が自分の子育てに良くない影響を与えたと感じている人は1割強に過ぎず、「どちらともいえない」と「わからない」を含めれば、約9割はそうは思っていない。さらに3割はむしろ、自分の子育てに離婚が良い影響があったと感じているのだ

これはとても意外な結果だった。一般に離婚はつらい経験だととらえられがちであるが、子どもたちはそこから多くのものを学んでもいることに、安堵を覚える。ひょっとしたら自分も親の立場になることによって、離婚経験をポジティヴに感じるようになったのかもしれない。

2) 離婚は「父母にも自分にとっても良かった」

それでは、子どもは離婚そのものをどのように評価しているのだろうか。父母の離婚・別居について振り返ってもらうと、半数近く(447人)が「特になし」と答えているが、ここでも、約3割の子ども(283人)が、離婚のことを「父母にも自分にも良かった」と答えている。さらには「父母にとっては良くなかったが、自分には良かった」という、まさに「子どものための離婚」とでもいうべき人もいて、3.7パーセント(37人)である。

「父母にとっては良かったが、自分にとっては良くなかった」は、14パーセント(140人)、「双方に良くなかった」は9.3パーセント(93人)である。

つまり、3割強の子どもは、離婚を良かった、その大部分が「父母も自分にも良かった」と結論でづけている。ここに「特になし」を含めると、8割弱を占める。もちろん、離婚経験を良くなかったと考えている子どもも2割強いるが、「離婚したことを子どもに詫びろ」などと言われることがある日本において、離婚は子どもに必ずしも否定的にとらえられているとはかぎらないのも事実である。

3)離婚はショックで悲しいけれども、ホッとした、状況が変わることが嬉しい子どももいる

 調査に協力した3割ほどのひとが、小学校の就学前に別離を経験している。それでも別居の際に、404人(有効回答数の66.3パーセント)は、「意味がわかっていた」と答えている。「父母が別居した当時、どのような気持ちでしたか」という設問に対し、12種類の選択肢からその時の気持ちを複数選んでもらうと、上位から「悲しかった」(228人)、「ショックだった」(182人)、「将来に不安を感じた」(98人)と続くのは当然としても、その後、87人が「ホッとした」と答えている。さらに「経済的な不安を感じた」(68人)とほぼ同数、「状況が変わることが嬉しかった」(67人)と回答した。悲しいしショックでもあるのは当然だが、離婚によって安心する子どもがいることもわかる。当たり前であるが、離婚にまつわる子どもの気持ちも、状況や子ども本人のあり方によってさまざまである。

その際に親に伝えたこととしては、「親の考え、気持ちを聞きたい」(71人)ということが最も多く、「自分の考えを聞いてほしい」(43人)を上まわる。「別居しないでほしいと言った」が56人、「早く別居するように言った」が51人、このあたりは、家族によって事情が違うことがうかがえる。それに、「子どもを巻き込まないでほしいと言った」(37人)が続く。このとき、気持ちを親に伝えられなかった子どもは、131人(有効回答数の21.5パーセント)いる。

4) 誰と住みたいかという希望は、必ずしもかなえられるとは限らない

離婚後、母親と住んでいる子どもたちは約8割(786人)、父親が2割(214人)である。どちらの親と住みたいかに対して、本心でないことを伝えた子どもは60人いる。そのうち父母双方に配慮した人が22人、同居親に配慮した人は、36人である。全体からすれば数は少ないが、父親と母親どちらと住みたいという本心がなぜ言い出しにくいのか、公表された単純集計からでは読み取れない。どちらの場合に多いのか、また、他にどのような変数が効いているのかを分析する必要があるかもしれない。

どちらの親と住みたいかが意見通りになった子は171人であるが、ならなかった子どもも、111人もいる。離婚の際に子どもがどちらの親と住むのかについては、子どもの意思よりも、さまざまな事情が優先されるようである

ただし、その決定についてのちに「他方の親と住んだほうが良かった」と振り返るひとは8.1パーセント(81人)にとどまっており、育ててくれた「そちらの親と住んで良かった」(385人)と「特になし」(393人)を合わせて、約8割を占めている。質問に「父母双方に育てられたかった」という項目があり、13.4パーセント(134人)がそれを選んでいるが、以前のように同居したかったという意味なのか、父母の家を行き来する生活がよかったと考えられているのかは、不明である。

5) 別居親との関係は、もともと3割が「良くなかった」

両親の仲が悪くなる前から、別居親(離婚後に一緒に住んでいる親ではない方の親)との関係は、良くない子どもが3割ほどいる(193人、有効回答数の28.8パーセント)。ただし半数弱(319人、有効回答数の47.5パーセント)は良い関係をもっていたと答えている。

一方、同居親との関係が悪かった子どもは、12.8パーセント(86人)で比較すればかなり少ない。約7割(438人、有効回答数の65.2パーセント)は同居親と仲が良かったと答えており、ここに「普通」を加えると約9割を占める。

別居・離婚の直後でも、仲が悪かったと答えた割合は、別居親との関係では3割強(321人)、同居親との関係では13.2パーセント(132人)と、両親が不仲になる前とほぼ変わらない割合である。こういった関係をもとにして、離婚後の親子にどのような制度を構築すべきなのかは、難しい問題であろう。

次回では、養育費や面会交流などについて言及したい。