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「世界記録を更新しても話題にならなかった」東京パラリンピック金メダル候補の佐藤友祈がプロ転向表明会見

瀬長あすか障がい者スポーツライター/健康系編集ライター
プロ転向および所属契約に関するオンライン会見

2月22日、東京パラリンピックで金メダルに最も近い日本選手として期待されている陸上競技の佐藤友祈がプロ転向および所属契約に関するオンライン会見を行った。

今から10年前、21歳のときに車いす生活になり、2012年のロンドンパラリンピックをテレビで見て陸上競技を始めた佐藤は、初出場だった2016年リオパラリンピックで2個の銀メダルを獲得。2018年には400mと1500m(車いす・T52クラス)で世界記録を樹立し、その翌年の世界選手権でも2冠に輝いた。

コロナ禍でのプロ転向について「暗いニュースが多い中、一選手としてスポーツの可能性を伝えられたらと思った」と、真新しいジャージを着て堂々と語った佐藤。

会見には2月1日からメインスポンサーとして佐藤のプロ活動を支える株式会社モリサワの森澤彰彦代表取締役社長も同席し、契約に至った経緯なども説明した。

▼佐藤選手のコメント(抜粋)は以下の通り

――率直な思いは?

今までは会社員であり実業団選手だった。この1年、コロナ禍で多くの人から笑顔が消えてしまったと感じる。テレビをつけてもコロナの話題で持ちきりだったり、オリパラ開催の是非が論じられていたり……そんな中、一選手としてスポーツの可能性を信じているので、そういうことを伝えられたらいいなと思い、プロ転向を決意した。

――モリサワと契約を結んだ決め手になったことは?

担当者の方がSNSにダイレクトメッセージをくださった。そこには「国内トップシェアを誇るフォントメーカーとして世界に挑戦する佐藤選手と一緒にパラリンピック、そしてその先のモリサワフォントの世界進出を一緒に叶えていきたい」という、本当に熱いメッセージが書かれていて。モリサワの名前は知っていたが改めて調べて、視覚障がいや読み書きに障がいのある人にUDフォントを広める取り組みをしているところなどにも惹かれ、今回所属契約のお願いをすることになった。

――プロ転向の一番の理由は?

まず2018年7月に400m、1500mの世界記録を同日に更新したという僕の中で大きな出来事があった。そこで、新聞で小さく取り上げられたり、ネットニュースでも取り上げてもらったりしたが、あまり話題にならなかった。このままでは東京パラリンピックでファンがついたり応援されたりするイメージが湧かないと危機感を持ったのが大きなきっかけ。プロに転向して競技の裾野を広げ、普及活動にも力を入れていかないといけないと思った。

――プロになってから変化したことは?

転向してからトレーニングの時間はほぼ倍になった。ケアに充てる時間も確保できている。

――練習拠点や、新しいチームの陣容は?

拠点はこれまでと同じ岡山のまま。この2月は緊急事態宣言で合宿することができなかったが、1か月のうち1〜2週間は東京に行き、ナショナルトレーニングセンターなども積極的に活用していこうと考えている。

チームの陣容は、まだはっきりと決まっていないが、コーチ、トレーナーを含む4~5人体制。ただ僕自身SNS活動を積極的にしていく中で、ファンの方、興味を持ってくれる方も含めてチームだと思っているので、メンバーの数は今後も増えていくと期待している。

――東京パラリンピック半年前のプロ転向はリスクもあると思うが。

個人的にはリスクだとは思っていない。自分が成長できる大きなきっかけになるんじゃないかと、ワクワク、ドキドキしている。

コロナ禍では多くの人たちが制限を受けて生活していて、テレビでも全くと言っていいほど良いニュースを見ない。プロで活躍していくことでちょっとでもみなさんに笑顔や感動を与えられたら良いなと思ってこのタイミングになった。

――東京パラリンピックの目標は?

目標は、2種目で世界記録を更新して金メダル獲得。そこは目標というか必ず実現していきたい。

――ファンの方に一言。

今、コロナの影響で暗いニュースばかりになってしまって前を向きづらい状況の方もいると思う。僕も障がいを負った当時、そんな心境だった。でも、パラリンピックを映像で見たときに新たな光を見出し、夢に向かってチャレンジをし続けることが可能になった。そして今、東京パラリンピックに向けてしっかり準備を進めることができている。

今日、伝えたかったのは、夢や目標は、諦めなければ道は見えるということ。できないことを数えるよりも、できることを探した方が楽しい人生になると思う。

▼森澤社長のコメント(抜粋)は以下の通り

当社はフォントの会社で、1924年に創業。写真工学技術を使った「写真植字機」を発明したが、昔から障がいのある方にも写真植字機をカスタマイズして利用してもらった。また、日本障がい者スポーツ協会のスポンサーになることでパラアスリートを支援してきた。その中で昨年12月に広告代理店から佐藤選手がプロに転向すること、所属先を探していることを聞いた。なぜこの時期にと驚いたと同時に、所属していた企業も辞めてチャレンジする姿勢に感銘を受けた。佐藤選手はパラアスリートとして大きな可能性を秘めていると感じている。共生社会に向けて、みんなが明るい世の中になるような活躍を期待したい。

パラ陸上では、山本篤、中西麻耶、前川楓らがプロ選手として活躍する。佐藤は3月20日から21日に駒沢オリンピック公園総合運動場で開催される日本パラ陸上選手権大会でプロとしての初のレースに挑む。

▼佐藤友祈選手 オフィシャルウェブサイト

https://www.prierone.info/

障がい者スポーツライター/健康系編集ライター

1980年、東京都江東区生まれ。大学時代に毎日新聞で記事を書き、記者活動を開始。2003年に見たブラインドサッカーに魅了され、2004年のアテネパラリンピックから本格的に障がい者スポーツ取材をスタート。以後、パラリンピックや世界選手権、国内のリーグ戦などに継続的に足を運び、そのスポーツとしての魅力を発信している。一方で、健康関連情報のエディター&ライターとして、フィットネスクラブの会報誌、健康雑誌などに携わる活動も。現場主義をモットーに、国内外の現場を駆け回っている。

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