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鍵山優真、“勢い”と“荒々しさ”を表現するプログラムで新シーズンに臨む

沢田聡子ライター
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

7月15日にダイドードリンコアイスアリーナで行われた「プリンスアイスワールド東京公演」で、鍵山優真は今季のショートプログラム『Believer』を滑っている。このプログラムを初披露した7月1日の「ドリーム・オン・アイス」で着ていた衣装は全身黒だったが、今回の衣装は基調の黒と、首から胸・手の部分にあしらわれたグレーのコントラストがファッショナブルだ。

『Believer』は、鍵山にとって初めてとなるシェイ=リーン・ボーン氏振付のプログラムだ。重いビートが響くロック調の楽曲に合わせ、めりはりのきいたエモーショナルな所作が展開される『Believer』は、ボーン氏の本領発揮ともいえるプログラムに仕上がっていた。痛みによって信念ある人間になれた経験を歌う『Believer』では、繰り返される“pain”という歌詞がアクセントになっていて、ボーン氏はそこに印象的な振りを配している。踊りに長けた鍵山はそのアクセントが見せ場であることを理解しているだけに力が入るようで、「ドリーム・オン・アイス」では失敗する場面もあったが、二週間後の「プリンスアイスワールド」ではかなり力の配分を心得てきているように見受けられた。

「ドリーム・オン・アイス」の際メディアに対応した鍵山は、新しいショートへの意気込みを語っている。

「初めてのロックな曲調なので、なかなか荒々しさというものが出せないというか、まだ練習中なんですけど…回数を重ねていくごとに勢いとか荒々しさとか、そういう表現ができたらいいなと思います」

ボーン氏について、鍵山は「本当に運動量がすごい」と舌を巻く。

「自分が休憩している間にも振り付けのアイデアをずっと出して、体で動いて考えて。自分よりもたくさん運動していてすごいなと思いましたし、本当にたくさんのアイデアが出て今の振付が完成したので、すごく自信作になったと思います。シェイ=リーン先生の良さと僕の良さが上手くマッチしているプログラムだなと」

北京五輪を終えて迎える今季はスケーターにとって挑戦が可能なシーズンとなるが、鍵山も挑む姿勢をみせている。

「今シーズンはプログラムもジャンプもいろいろな挑戦をして、その経験を成長につなげていけたらいいなと思います」

スケーティングが抜群に上手く踊り心もある19歳の鍵山に、ボーン氏は今までになく骨太なプログラムを提供し、新境地の開拓を期待しているようだ。昨季は北京五輪で銀メダリストとなり、世界選手権でも2年連続で2位に入った鍵山は、“勢い”と“荒々しさ”を兼ね備えて新シーズンに臨もうとしている。

ライター

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(フィギュアスケート、アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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