皐月賞を制し、GⅠ馬シュネルマイスターで自身3度目のマイラーズCに挑む調教師の話
調教師自身がサラブレッド
皐月賞(GⅠ)はソールオリエンスが目の覚めるような末脚を炸裂して優勝。デビューから3連勝で一冠馬となった。
同馬を管理するのは美浦で開業する手塚貴久調教師。1964年9月生まれで現在58歳。父は足利競馬場(廃止)で調教師会の会長をするなどした伯楽・佳彦氏(引退)。いわばサラブレッドであるが、今回の皐月賞制覇で3歳クラシック完全制覇まであと日本ダービー(GⅠ)としたのは立派の一語。今年のダービーでソールオリエンスが二冠制覇となれば、同時に手塚にとっても偉業達成となるわけだ。
SSの血を引く大型馬
1998年に開業した手塚が、ヤングマンパワーに出合ったのが2013年の事だった。
「最初に見たのはセレクトセールで当時まだ1歳でした」
星野壽市オーナーから「サンデーサイレンスの血の入った大型馬を買いたい」と言われていた手塚は、父スニッツェル、母スナップショット、母の父がサンデーサイレンスという大きな牡馬をピックアップ。これが後のヤングマンパワーだった。
14年12月に新馬勝ちしたヤングマンパワーは、翌15年にはアーリントンC(GⅢ)を優勝。デビュー3戦目での重賞制覇に、将来有望と目された。
「厩舎の先輩でGⅠの朝日杯フューチュリティSを勝ったアルフレードを彷彿とさせるような大物感がありました」
手塚は当時をそう述懐した。
行きたがる面があったため、クラシック戦線には目もくれずマイル路線を歩ませた。結果、16年には関屋記念(GⅢ)と富士S(GⅢ)を連勝。今週末、行われるマイラーズカップ(GⅡ)は17年に3着、18年は12着と残念ながら先頭でゴールする事はかなわなかった。それどころか、このマイラーズカップの成績だけを見てもらっても分かるが、晩年は惨敗も多く、なかなか結果を出せなくなった。
「元から少しノドが鳴るところがあったのですが、最後の方はそれがひどくなってしまいました」
今週末、巻き返しに懸ける馬
ヤングマンパワーとはかなえられなかったマイラーズカップ制覇だが、今年はこのレースにシュネルマイスターを送り込む。同馬は一昨年のNHKマイルC(GⅠ)の勝ち馬で、安田記念(GⅠ)やマイルチャンピオンシップ(GⅠ)でも2着があるような快速馬。近走こそ今一つの競馬が続いているが、3歳の身で名マイラーのグランアレグリアに迫った脚は忘れられない。皐月賞を制した厩舎の勢いで、巻き返せるだろうか……。注目したい。
(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)