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いよいよ今晩発走! フランス・ジャックルマロワ賞(G1)の直前情報!!

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
ジャックルマロワ賞で1番人気が予想されるアルファセントーリとオドノヒュー騎手

虎視眈々と一発狙う伏兵勢

 8月12日、日本時間23時20分発走のジャックルマロワ賞(フランス・ドーヴィル競馬場、G1、直線芝1600メートル)。ヨーロッパ伝統のマイルのG1に今年は11頭が出走を予定。私はフランスだけでなくアイルランドやイギリスにも飛び、9頭の出走馬の調教師や騎手、厩務員などを取材してきた。

 まずはフランスが誇る重鎮A・ファーブル調教師が送り込む2頭。カスカディアン(牡3歳)とトレスフリュオース(牡4歳)。調教師は「共に良い馬だし、良い状態」と語るが、「正直、強い相手が揃っているのも事実で、そんなに強気にはなれない」と続ける。

 そんな中、チャンスがあるとすれば前者か。前走は今回と同じドーヴィル競馬場の直線芝1600メートルのジャンプラ賞(G1)でゴール前、猛然と追い上げて2着。尾を振って走るなど幼い面はあるし、キャリアの少なさは否めないが潜在能力は高そうだ。

フランスの大調教師A・ファーブル師。今回はカスカディアンとトレスフリュオースの2頭出しで挑む
フランスの大調教師A・ファーブル師。今回はカスカディアンとトレスフリュオースの2頭出しで挑む

 同じく地元馬のレコレトス(牡4歳、C・ラフォンパリアス厩舎)は日本でもお馴染みのO・ペリエ騎手騎乗。終始舌を出して走るなど難しい面のある馬だが前々走ではイスパーン賞(G1)を優勝。前走のクイーンアンS(G1)は7着に敗れたがペリエ騎手が言うには「レース直前に血液検査があってイレ込んでしまった」との事。実際、掛かりながらも大きくは負けておらず、精神的な難しさを出さなければ今回も一発あるかもしれない。

気性の難しさがどう出るか?というレコレトス
気性の難しさがどう出るか?というレコレトス

 イギリスからの遠征馬アクシデンタルエージェント(牡4歳、E・J・ホートン厩舎)は陸送で土曜には競馬場に入ったとの事。前走はクイーンアンS(G1、アスコット競馬場、直線芝1600メートル)を快勝。人気薄での激走でアッと言わせたが、ホートン師は「直線コースは得意な馬なのでチャンスがあると思っていた」との事。今回も同じ直線の1600メートル。2匹目のドジョウを狙う。

人気薄での快勝だった前走でも「自信はあった」と語るホートン師とアクシデンタルエージェント
人気薄での快勝だった前走でも「自信はあった」と語るホートン師とアクシデンタルエージェント

 アイルランドからの遠征馬がローマナイズド(牡3歳、K・コンドン厩舎)。スタートが下手で毎度、出遅れる。騎乗するS・フォーリー騎手も「追い込みの利く速い流れになって欲しい」と語る。今回は同厩舎のサクセスデイズ(牡6歳)が出走。ペースメーカー代わりに使い速い流れを作る可能性大だ。

アイルランドから2頭出しで乗り込むコンドン師(左)と出走馬のうちの1頭ローマナイズド
アイルランドから2頭出しで乗り込むコンドン師(左)と出走馬のうちの1頭ローマナイズド

現地に滞在してじっくり調整されるウィズユー

 ウィズユー(牝3歳、F・ヘッド厩舎)は前々走のフランス版オークス・ディアヌ賞で勝ち馬と横並びでゴールする5着。その後、ロートシルト賞で初G1勝ちを飾った。手綱をとるA・ルメートル騎手もそれが初めてのG1勝利。思い入れのある馬について、次のように語る。

 「スタートが上手な馬なのでここでもうまく立ち回ってくれるでしょう」

 管理するヘッド師は「前走後、引き続きドーヴィル競馬場に滞在して調整されています。良い状態を維持しています」と笑みをみせて語る。

歴史的マイラー・ゴルディコヴァなどを育てたF・ヘッド師(右)が滞在競馬で臨むウィズユー
歴史的マイラー・ゴルディコヴァなどを育てたF・ヘッド師(右)が滞在競馬で臨むウィズユー

シャンティイで調整され当日輸送されるインテロジャント

 一方、インテリジャント(牡3歳、F・シャペ厩舎)はシャンティイで調整され、レース当日に決戦の地に入る。前走のジャンプラ賞でカスカディアンの猛追を抑えG1制覇を飾った愛馬について語る。

 「シャンティイからドーヴィルは馬運車でも3時間前後。調教の施設としてはシャンティイの方が優れているので、こちらで仕上げた方が楽」

 リオンと呼ばれる坂コースを2本上がるのが同馬の日課。騎乗するP・C・ブドー騎手は言う。

 「すごく落ち着いている馬なので、輸送だろうと滞在だろうと力は出せるタイプです。コントロールも自由自在なのでチャンスはあると思います」

競馬ではシャドーロールを装着するインテロジャントだが、「とても落ち着いている馬」(ブドー騎手)との事で、シャンティイでの調教では着けていなかった
競馬ではシャドーロールを装着するインテロジャントだが、「とても落ち着いている馬」(ブドー騎手)との事で、シャンティイでの調教では着けていなかった

アイルランドからG1を3連勝中の名牝が殴り込み!!

 最後に紹介するのはアイルランドからの遠征馬アルファセントーリ(牝3歳、J・ハリントン厩舎)だ。

 今春のアイルランド1000ギニーで自身初のG1勝利を飾ると続くコロネーションSはレコードで快勝し、更にファルマスSもほとんど持ったままぶっち切り。マイルのG1ばかりを3連勝中だ。

 「現在私の厩舎には145頭の競走馬がいるけど、彼女がナンバー1の1頭である事は間違いないわ」

 管理するハリントン女性調教師はそう言う。

 また、騎乗するC・オドノヒュー騎手は中間の調教にも騎乗。手応えを次のように語る。

 「ここに来ての成長力が凄く、前走後も更に20キロ近く増え、現在は530キロあります。それでも調教の動きはシャープだし、時計の速いフランスの馬場も向くタイプ。好勝負は間違いないと信じています!!」

 スタートは間もなく。果たしてどんな結果が待っているのか。楽しみにしたい。

1番人気が予想されるアルファセントーリとオドノヒュー騎手。果たしてG1、4連勝はなるか?!
1番人気が予想されるアルファセントーリとオドノヒュー騎手。果たしてG1、4連勝はなるか?!

(写真提供=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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