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英国政府、ウクライナ軍に物資輸送ドローン「T150」提供:上空から兵器や医療品を戦場の軍人へ

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

英国のジョンソン首相はウクライナ軍に英国Malloy Aeronautics社が開発している物資輸送ドローン「T150」を提供することを発表した。ラップトップでも簡単に操作できるドローンで、68キログラムまでの物資を空から輸送することができる。36分間70キロメートルまでの飛行が可能。英国海軍でも物資輸送にT150を利用している。利用シーンの動画も公開している。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンが監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして戦場での戦略物資の輸送にもドローンは最適である。兵器や医療品など戦場で必要な物資を上空から届けることができる。

今回のウクライナの紛争ではロシア軍もウクライナ軍も監視・偵察用、攻撃用にドローンを多く活用している。ドローンは戦闘機や戦車よりもコストも安く開発や製造も簡単だ。そして上空からの敵陣の正確な監視・偵察に向いている。また上空からの攻撃は敵に甚大なダメージを与えることができる。物資の輸送ドローンなら車で運べないところまで重たい物でも上空から簡単に運ぶことができる。また小分けにした物資を多くの場所までピンポイントで運べる。

だが上空を飛行するドローンを迎撃するためのシステムも多く、検知されるとすぐに電磁波で機能を停止されたり迎撃銃で撃ち落とされてしまう。特に輸送ドローンは大きな音を立てて飛んでくるのですぐに見つかりやすいし、軍人がいる場所に物資を輸送しているので、どこに敵軍がいるか察知されやすいので攻撃されてしまう恐れもある。また攻撃ドローンは標的に突っ込んでいき自爆する「神風ドローン」とも呼ばれるタイプが主流のため、一度攻撃に利用されると破壊してしまうので再利用はできない。そのため監視・偵察用ドローンも攻撃ドローンも輸送ドローンも何台あっても足りない。ウクライナ政府もSNSで、ウクライナへの武器提供を世界中に呼びかけている。

▼英国海軍も利用している物資輸送ドローン「T150」

▼ウクライナへの武器提供を呼びかけるウクライナ政府のツイッター

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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