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グーグル「ホロコーストのユダヤ人を救ったチフスのワクチン研究者」138回目の誕生日をDoodleに

佐藤仁学術研究員・著述家
(Googleより)

チフスのワクチン開発を命じられて5000人以上のユダヤ人を救った生物学者

Googleでは検索サイトのロゴを祝日や記念日、有名人の生誕などを祝うために独自のデザインでアレンジしている、いわゆるDoodle(ドゥードゥル)が日本でもお馴染みだ。9月2日にはポーランドの生物学者のルドルフ・ヴァイグル氏の138回目の誕生日を祝したDoodleが掲載されていた。

ルドルフ・ヴァイグル氏は1883年9月2日に現在のチェコで生まれて1907年にポーランド(現在のウクライナ)のリヴィウ大学を卒業し、チフス菌対策と撲滅に向けた研究をしていて、チフスに効果的なワクチンを最初に作った生物学者だった。

GoogleのDoodleではルドルフ・ヴァイグル氏がチフス菌のワクチンを研究している姿を現している。だが、ルドルフ・ヴァイグル氏は生物学者だけでなく、ナチスドイツに支配されていたポーランドで迫害されていたユダヤ人を救ったことでも有名だ。当時、チフスは死に至る病で欧州でも多くの人がチフスで死んでいた。ユダヤ人が集められたゲットーも不衛生な環境で多くの人がチフスで死んだ。

ナチスドイツはルドルフ・ヴァイグル氏にナチスドイツのためにチフスのワクチンの開発をさせた。その際にルドルフ・ヴァイグル氏は多くのユダヤ人を彼の助手として雇った。彼に雇われたユダヤ人らが強制収容所などに移送されることなく、生き延びることができた。その数は約5000人と言われている。また彼はユダヤ人が収容されていた収容所にも、開発したワクチンを届けることにも成功して、収容所に収容されていたユダヤ人の命も救った。

戦後、ルドルフ・ヴァイグル氏の業績を称えて2回ほどノーベル平和賞の候補者にノミネートされたが授賞されなかった。だが2003年にイスラエルセフは、彼のユダヤ人を救った功績をたたえて「諸国民の中の正義の人」を授けた。

(Googleより)
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学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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