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ロシア キラーロボットの利用を主張「自律型兵器は人間の軍人と同じように配置されるべき」国連会合にて

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

AI(人工知能)技術の発展にともなって、AIの軍事での活用も進められ、AIを搭載したロボット兵器(自律型殺傷兵器)の開発が進められようとしている。AI技術を搭載することによって、兵器の無人化も進んでいる。兵器の無人化が進むとともに「キラーロボット」と称される人間の判断を介さないで攻撃を行う自律型殺傷兵器が開発されようとしている。

一方で、人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国の政府、AI技術者らが自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。

しかしロシア政府は自律型殺傷兵器の開発と使用には反対していない。現在、国連で自律型殺傷兵器の開発と使用の中止を求める会合が開催されており、国際人道法によって、そのような自律型殺傷兵器の開発や使用を禁止しようとする動きがある。だが、ロシアの代表団は、国際人道法による自律型殺傷兵器の開発や使用への禁止に対して拒否したと英国のメディア・テレグラフは報じていた。

そしてロボットが判断して人の生死を決定することが非人道的で、非倫理的であるという、国際社会の主張に対しては「技術開発が進み、かなり高いレベルで自律型兵器が、人間なのか攻撃対象物なのかといった標的の選定をできるようになった。国際人道法上にも則った兵器である」と主張。また英国メディア・エクスプレスによると、ロシア代表団は「自律型兵器は人間の軍人と同じように配置されるべきだ」と語っていると報じていた。

プーチン大統領もロシアにおいて軍事だけでなくあらゆる分野でのAI技術開発を積極的に推進しようとしている。

また自律型殺傷兵器(キラーロボット)による攻防が行われるようになると、人間の軍人が戦場で命を落とすリスクは低減されるので、攻撃側の軍人の"人間の安全保障"は確保されるようになる。戦場と戦争の在り方が変わってくる。

ロシアだけでなくアメリカ、イスラエル、中国、インドなどでもAI技術の軍事への活用は積極的に進められている。中国政府は自律型殺傷兵器の使用には反対しているが、開発には反対していない。中国とロシアの共通の敵はアメリカと西側諸国であるため、このような中露の協力関係は欧米諸国にとっては脅威であり、抑止にもなる。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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