ホロコーストに加担したノルウェー最大の罪を描く実話をもとにしたノルウェー映画「Betrayed」(英語タイトル)が8月27日から新宿武蔵野館(東京)ほか全国で順次公開される。日本語でのタイトルは「ホロコーストの罪人」(配給:STAR CHANNEL MOVIES)。日本語版の予告編に次いで、本編映像も公開された。

第二次大戦中、ユダヤ人一家のブラウデ家はボクサーの息子チャールズが結婚し、幸せな日々を送っていたが、ナチス・ドイツがノルウェーに侵攻すると状況は一変する。チャールズらユダヤ人男性はベルグ収容所へと連れて行かれ、厳しい監視のもと強制労働を強いられていた。一方、母とチャールズの妻は彼らの帰りを待ちながら、スウェーデンへの逃亡も準備していた。しかし、1942年11月、ノルウェー秘密国家警察とタクシー運転手によって、ユダヤ人全員がオスロ埠頭へと強制移送された。そこで待ち構えていたのはアウシュヴィッツへと向かう船だったという話だ。公開された本編映像は収容所でユダヤ人に対してナチスの親衛隊が虐待を加えている様子が描かれているシーンだ。見ていても気分が悪くなる人も多いかもしれない。

▼「ホロコーストの罪人」(本編映像)

▼「ホロコーストの罪人」(予告動画)

当時のノルウェーのユダヤ人は全人口の0.1%未満

ノルウェーは1940年4月にドイツ軍によって占領された。ユダヤ人は差別と迫害の対象として、職業の差別などがされた。だが当時のノルウェーのユダヤ人は人口の0.1%にも満たない1600人程度しか住んでいなかった。1940年5月にはノルウェー警察はユダヤ人に外国の放送を聞かせないようにするためにユダヤ人世帯が所有するラジオを押収したが、この措置がノルウェー人に与えていた法的権利をユダヤ人から奪う最初の政策だった。このような差別的措置がとられていき、1942年6月にはユダヤ人の強制登録が行われ、1942年10月にはユダヤ人の資産が全て没収された。そしてユダヤ人狩りが行われ、まずは16歳以上の男子209人が捕まって、船でシュティティンへ輸送され、そこからアウシュビッツに移送された。ノルウェーではナチスと主義を同じくするクヴィスリング党(国民連合)がナチ占領軍を積極的に支援してユダヤ人の強制輸送が行われた。

クヴィスリングはノルウェーをナチス化するにあたって最適な人物だった。クヴィスリングは反ユダヤ主義を広め、ユダヤ人の迫害を支援した。ナチスの突撃隊にならって「ヒルド」という古代ノルウェーの伝説的な戦士たちにちなんで名づけられた私設の準軍事的組織も創設した。ドイツ軍の侵攻後、クヴィスリングは占領下政権を樹立し、のちに首相に任命された。

毎年制作されるホロコースト映画と記憶のデジタル化

ホロコーストを題材にした映画やドラマはほぼ毎年制作されている。今でも欧米では多くの人に観られているテーマで、多くの賞にノミネートもしている。日本では馴染みのないテーマなので収益にならないことや、残虐なシーンも多いことから配信されない映画やドラマも多い。今回の本編映像のようにたしかに見ていて気持ちよいものではない。

ホロコースト映画は史実を元にしたドキュメンタリーやノンフィクションなども多い。実在の人物でユダヤ人を工場で雇って結果としてユダヤ人を救ったシンドラー氏の話を元に1994年に公開された『シンドラーのリスト』やユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマン氏の体験を元に2002年に公開された『戦場のピアニスト』などが有名だ。実話を元にしている『ホロコーストの罪人』もこちらだ。史実を元にした映画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の授業で視聴することも多い。

一方で、フィクションで明らかに「作り話」といったホロコーストを題材にしたドラマや映画も多い。1997年に公開された『ライフ・イズ・ビューティフル』や2008年に公開された『縞模様のパジャマの少年』などはホロコースト時代の収容所が舞台になっているが、明らかにフィクションであることがわかり、実話ではない。

戦後75年が経ち、ホロコースト生存者らの高齢化が進み、記憶も体力も衰退しており、当時の様子や真実を伝えられる人は近い将来にゼロになる。当時の記憶や経験を後世に伝えようとしてホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化は積極的に進められている。デジタル化された証言や動画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の教材としても活用されている。ホロコースト映画をクラスで視聴して議論やディベートなどを行ったり、レポートを書いている。そのためホロコースト映画の視聴には慣れてる人も多く、成人になってからもホロコースト映画を観に行くという人も多い。またホロコースト時代の差別や迫害から懸命に生きようとするユダヤ人から生きる勇気をもらえるという理由でホロコースト映画をよく見るという大人も多い。

そして世界中の多くの人にとってホロコーストは本や映画、ドラマの世界であり、当時の様子を再現してイメージ形成をしているのは映画やドラマである。その映画やドラマがノンフィクションかフィクションかに関係なく、人々は映像とストーリーの中からホロコーストの記憶を印象付けることになる。

▼「Betrayed」オフィシャルトレーラー

(C)2020 FANTEFILM FIKSJON AS. ALL RIGHTS RESERVED.
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